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「青の化石」 冴木忍

以前も書いたが、富士見ファンタジア文庫が好きだ。
どれほど好きだったかというと、月刊ドラゴンマガジンという、一応文芸誌?があった。
富士見ファンタジア文庫で刊行されている人気シリーズの外伝を連載していたのだが、それを定期購入するぐらい好きだった。
今もあるのかな?

富士見ファンタジア文庫の作家の中でも、冴木忍が好きだった。
「卵王子カイルロッドの苦難」「天高く、雲は流れ」「メルヴィ&カシム」などを読んだ。
角川スニーカー文庫でもシリーズものを多数刊行しているのだが、そちらはなぜか読まなかった。
富士見ファンタジア文庫が好きだったんだな。

冴木忍の「道士リジィオ」シリーズの第1作目が本作。
シリーズは4冊ある。

富士見ファンタジア文庫では、本編は長編でギャグ風味の外伝は短編っていう構成が多いのだが、本作はめずらしく本編が短編集というつくり。
どれも物語としてはきれいにまとまっていて、大人になった今読んでも楽しめた。
かつて古本屋にうっぱらっていたのを、もう一度読みたくなって大人買いし、最近読み直したのだ。

強い力を持つが、自身の意志で道士になったわけではないので、あまり力を使いたくないと思っている主人公のリジィオ。
美青年だが、そのせいで幼少のころから変質者に狙われたり、女の子と間違われた為、幼馴染から「俺の初恋を返せ!!」と恨まれたりとけっこうかわいそう。
また、親から莫大な借金を引き継いでしまい、前述の幼馴染(借金取り)に追われ続けるという不幸さ。
なんとか借金を返すために、また幼馴染から逃げるために放浪する先々で事件と出会い、道士として対処していくという話
シリーズを重ねるにつれて、幼馴染、押しかけ弟子、獣人、幽霊と仲間が増えて、ドタバタ劇も繰り広げられる。

ギャグのような生い立ちと陽気な仲間が繰り広げる、コメディテイストなストーリーと思いきや、なかなかそうはいかない。
基本的にリジィオが対する事件は、現在の人々を救うというものではない。
恨みをもった霊的な存在、すでに心が壊れてしまった人間、など過去に誰からも救ってもらえなかった存在が現在に影響を与える事件を解決する。
そこに憐憫や世界に対する諦念がにじみ出て、どこか切ない気持ちになる。
毎回最後に、前述したご陽気軍団がきて、コメディテイストにしてバランスをとるのだが、読後に切ない気持ちがちょっと残るのだ。
これが、魅力となって大人になった今でも読みたくなる要素なんだと思う。

もう古本でしか買えないことも、シリーズ続刊が出ないことも非常に残念。

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