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「風来忍法帖」山田風太郎

小田原征伐、北条氏を豊臣秀吉が降した歴史的事象のことだ。
籠城した小田原城を攻めた戦闘。
この時攻められたのは小田原城だけでなく、北条家の配下である城は同様に秀吉軍に攻められた。
その1つが忍城(おしじょう)だ。
現在の埼玉県行田市にある。
忍城攻略を題材にしたのが、映画化もされた「のぼうの城」だ。
これはきちんとした、というのも変だが、侍達が戦術をつくして戦う歴史エンターテインメント作品だ。
日本人ってのは本当に、少数が大勢と闘うのが大好きだよね。
策が大勢を打ち負かすという美学、俺も嫌いじゃない。

同じように忍城攻略を山田風太郎が書くとこうなっちゃうの?ってのが本作「風来忍法帖」だ。
もちろん風太郎なので忍者に忍術が出てくるぜ。

あらすじをご紹介。
七人のならずもの”香具師”がいる。
彼らは苦労して手にしたわけではない、謎の能力を生まれつき持っている。
くっだらないのもあって、男性のいちもつが非常に大きく、興奮してそこに血が集まると気絶しちゃうから、女といたしたことがない、とか笑。
なんだそりゃだよね。
そんなどうしようもないならずものたち7人が、忍城を守る姫が非常に美しいと聞いて、なんとかものにしようとたくらむ。
ひどいたくらみだよ。
ところがこの清楚な姫の魅力に負けた7人は、彼女を守る為に城を狙う忍者たちと死戦を繰り広げるというストーリー。

非常に不純な動機で姫に近づいたのに、なぜか命をかけて姫を守ることになる7人、一人ずつ命を呈して戦うという男気を見せる。
世の中舐めているようなやつらが、笑いながらあっけらかんと命をかけて戦う様が面白く、悲しく、どうしようもないやつらなのにかっこいい。

風太郎作品にはこんなやつらがよく出てくる。
目標の為に命をあっけなく差し出して、仲間や愛する人を守ろうとする人たち。
自分の命を守るのが一番大事だ。
これは断言できる。
でも命のやりとりが今よりも身近にあった時代では、ひょっとして彼らのように使命の為に命を差し出すことが出来る人たちがいたのかもしれない。
そんな時代が悲しすぎる気もするが、命をかけても守るものがある人達がかっこいいという気もする。
この7人はかっこいいのだ。

正直、忍法帖シリーズ屈指の名作だと思っている。
風太郎先生にはいろいろな歴史的な事象に対して、忍術のスパイスをふりかけた作品を山ほど書いて欲しかった。

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