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「許されようとは思いません」芦沢央

仕事でやらかした時、それがお客様や他部署に影響する、つまりは自分と仲間内だけで解決しない時、それがわかった瞬間の「ゾワッ」て感覚、あるよね?
あれは本当に怖い。
状況に身体も反応して、死ぬんじゃないかと思うくらい具合が悪くなる。
大なり小なり誰でも経験があるのではないだろうか?
世の中には誰もが共感できる嫌なことがある。
逃げたいけど、最後は覚悟してこれを迎え入れる。
諦めこそが人生かも。
それに下手に向き合うと事件が起こるのかもしれない。

この本はそんな嫌な嫌な話のつまった短編集。
まず最初の短編が、前述した仕事の失敗という状況をなんとかしようとする男の話。
無駄に足掻いた結果。。というミステリー。
序盤からえぐられた。

時折、共感は不可能な作品もあるのだが、全体的に「普段は考えないようにしている嫌なこと」がミステリーの舞台となっている。

ミステリーを乱読した自分としては、展開や結末などミステリー要素はそこまで真新しいものではなかった。
奇抜な珍味というわけではなく、なんというか白飯?みたいな普通にある感じ。
でも作者がそこにかける、誰しもが持つ不安・嫌悪というフリカケが凄まじい味わいとなって襲ってくるんだ。

なんならミステリー要素が皆無でも、怖いもの見たさでこのフリカケをナメナメしてしまいそう。

表題となった「許されようとは思いません」は短編集の中の最後の作品。
犯罪をおかした老婆が、こう言い放つ理由は、犯罪そのものよりも恐ろしい。


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