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「満願」米澤穂信

このミステリーがすごい2015年版にて1位を獲得した本作。
非常に良質な短編集だった。
満足満足♪
文庫になるのを待ちわびており、ブックオフに行った時に発見して古本を購入、その日のうちに読了。

米澤穂信は、「春季限定いちごタルト事件」からはじまる、高校生たちが活躍する小市民シリーズのみを読んでいた。
軽い感じで読める小説で、こういう中高生向けのストーリーが得意なのかな、と思っていた。
だが本作は、大人の醜悪さも見え隠れするライトさのかけらもない作品集だった。
純粋に謎がテーマになっているものは1作目・2作目ぐらい、他は都市伝説的な話やサスペンス仕立ての作品と、バラエティに富んでいた。
こんな黒いの書くんだぁ、というのが正直な感想、他作品も読もうと思う。

謎を題材とした作品が2作あると書いたが、登場人物が「なぜそのようなことをしたか?」が主題となっている。
先日、紹介した「傍聞き」もそうだったが、昨今のミステリーでは、「誰が殺したのか?」を主題とする作品は少なくなっていると感じる。
子供のころから読んでいた推理小説は、フーダニット(犯人当て)ばかりだった。
学生時代に読み漁った綾辻行人や法月倫太郎、有栖川有栖などもわくわくするフーダニットを提供してくれた。

フーダニットは動機についてはけっこう薄く書かれているが、昨今の作品だと「なぞそのようなことをしたか?」、つまり動機が謎だ。
昔と傾向が真逆!?
これはなんなんだろう?

すごい私見なので、異論は認めますが。。
今の時代、オリンピックの開会式のテーマが「多様性」だったこともあるし、様々な考え方・生き方があふれている混沌とした時代なのでは?
誰かと共通項を見つけるのが難しい時代。
皆が送る人生がフォーマット化されていて、大体同じような人間関係、欲求を持っていた昔と違い、他者がどんな人間関係を築いているか、どんな欲求・欲望をもち、何を嫌だと思っているかが読み取れなくなっているのが現代ではないかと。
その為、日常の中で自分の周りの人間が何を動機として動いているのかが見えない。。そこに衝撃の真実が!!?というミステリーが心をつかむのではないか、と思ったりして。
あくまで私見ですが。

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