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「クラインの壺」岡嶋二人

クラインの壺とは何か?
メビウスの輪(メビウスの帯)という言葉がある、表と裏の区別が無い図形、長方形をねじってくっつけると出来る。
表をたどっているはずが裏になり、裏をたどっているはずが表になる。
リサイクルの概念、ループの概念、表裏一体を表すモチーフなどに使われることが多い。
クラインの壺は、簡単に言うとメビウスの輪の3次元版だと認識してる。

本作ではその題の通り、表裏がわからなくなる。
ここでの表と裏はバーチャルリアリティと現実。

バーチャルリアリティゲームのテストプレイヤーに選ばれた主人公、非常にリアルなゲームに感動しつつ、その難易度に苦戦する。
ゲーム内のリアルな死の感覚に戸惑いながらテストプレイを実施しているのだが、同じテストプレイヤーの女性がある日を境にテストをやめ、それどころか連絡がつかなくなる、失踪する。
ゲーム自体に違和感を感じ始めた主人公は、消えたテストプレイヤーの女性の友人とともに彼女の行方を探りながら、このゲームプロジェクトの真実を探していくというストーリー。
ネタバレになるので、細かいところは語れないが、前述の通りバーチャルと現実の境界が徐々にあいまいになる感覚に、主人公たちと読者は強い不安感を抱く、と思う。俺は抱いた。
それがこの小説の魅力なのだろう。

「夢うつつ」という言葉がある。
昔から現実感の消失や、リアルな夢と現実との境界の曖昧さ等がテーマとなりやすいのは、人間の根源的な恐怖だからなのかも。

最近好きでVtuberとかよく見る。
あと、SNSでもアバターってあるよね?あんまり詳しくないけど。。
映画「サマーウォーズ」でもアバターが、メインで活躍するシーンが出てきてた。
アニメ・漫画なイラストとか変なキャラクターとかのイラスト、オタク文化だと毛嫌いする人もいるかもしれないが、バーチャルな世界と現実とを明確に区別する為に、人間の防衛反応が作り上げた文化だったりして。

最後に、岡嶋二人は2名のコンビで、今はコンビ解消しちゃってる。
そのうちの1人、井上夢人という作家が本作と似た現実感の喪失を描いた短編を書いていた記憶がある。
図書館で借りて読んだ、手元にないのであくまで記憶っす。
この短編集も良作ぞろいだったはず。

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