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「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」上間陽子

沖縄に住んだのは1年足らずだった。
会社生活7年目くらいで、当時の仕事を沖縄に移管することになったのだ。
その時に初めて飛行機を経験し、初めて引越を経験し、初めて一人暮らしをした。

東京とは全く違う温度、どこかゆる~く流れる時間、そして親切な人達。
自分が精神的に未熟な人間だったからか、楽しいことしか目に入らなかった。
この本に書いているような現実を聞いたり見たりすることはなかった。
それが、良いとも悪いとも思うことは無いが、世界は多面的だとあらためて思った。

上間陽子は「海をあげる」で初めて出会ったノンフィクション作家だ。
「海をあげる」は沖縄に焦点をあてた作品だった。
沖縄という世界そのものに。

今回の作品は沖縄の少女に焦点をあてている。
それもDVやレイプなど、暴力にさらされている少女たち。
彼女たちの苦しみや少しの幸せが、ノンフィクションゆえの迫力をもって心にぶっささってくる。

何度も筆者は少女たちの苦しみに対して、ひとりで背負わせてしまっている大人のふがいなさを嘆きながらそれを言えずに、彼女達と別れたあとに涙する。

世の中にどうしようもないことがあるのは大人なのでわかる。
でもどうにかしたいと思い、出来ない自分に打ちひしがれる。

世界が良くなっていないとは思わない。
科学の進化によって生活は向上しているし、日本においては餓死なんて縁遠い話。
だからなのか、今ある苦しみはもっとも弱い人たちのところに残っている気がする。
最後まで救われない人達が、いつか救われる世の中になるのかな。。


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