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「ぼくは勉強ができない」山田詠美

パソコンの最適化という作業があった。
今のパソコンは技術が向上したからなのか、あまりやるイメージない。
はじめからそういう動きが組み込まれているのかも。

昔のパソコンは定期的に自分で最適化をしてた。

なんかデータが■であらわされてて、一個ずつ最適化の作業が動いていく。
それをじーっと見てるのがなんか楽しかった。
確かどんどん色がかわるんだと記憶している。

大体のデータは問題なく色がかわる、イコール最適化されるのだが、たまに壊れたデータみたいのがあって、そこは壊れたっていう色に変わった。
で最後に修復だか削除が動く。

そのビジュアルがパッと浮かんだ。

本作は、秀美というイケメン男子高校生の日常、感情をたんたんと描いている短編集。
恋人への嫉妬やクラスメイトとの人間関係、自殺した友人に対しての思いなどなど。
で、この秀美くんは盲目的に誰かの押し付けに従うことはなく、自分の感性で発言し行動する性格。
時に集団の中で異質な存在となり、教師からしたら疎ましい存在に。
番外編では小学生時代の話が描かれているのだが、かれは集団に適合しようという外に向けた修飾がまだ下手な為、教師やまわりとすれちがったり、軋轢を生んだりしてしまう。

なので、先の最適化を思い出した。
他の問題なく最適化されるデータとはちょっと違うデータ、それが秀美くんだと。

ここで小市民だった自分としては違和感を少しだけ感じてしまった。
自分はサッカー部でブイブイ言わせたことも無いし、仲良い教師とラーメン食いに行って語り合ったこともない。
そんなに仲良い女子の友達はいなかったし、同性とつるんでいるのがただただ楽しかった。
もちろんバーで働いている大人の恋人もいないし、放課後にバーに行くこともない。
でも秀美の悩みや焦燥は自分も学生時代に感じていたものだった。

なれば、作者はわざわざキャラたつ彼のような人物を創造し、悩ませなくても、ごくごく一般的な最適化されるデータである人々を主人公として描いてもよかったのでは。。と思った。
でもそれだと物語としてつまらないのだろうか。。

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