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「アドルフに告ぐ」手塚治虫

小学5年生ぐらいの時に出来るようになったことがある。
それが、一人で図書館に行くということ。
これが出来るようになったことにより、学校から帰ってきたらすぐに図書館にいく生活になった。
図書館カードの使い方がまだわからなかったので、図書館の中で本を読んでいた。
あまりに通いつめるので、職員さんに顔を覚えられたほど。

当時の図書館としては進歩的で、厳選されてはいたが漫画が置いてあった。
そこではまったのが手塚治虫作品の「火の鳥」だった。

図書館で火の鳥全シリーズを読んだあと、手元に置きたい欲求の為、手塚作品を購入するようになる。
覚えているのは「ジャングル大帝」上下巻、「三つ目が通る」全巻、そして本作「アドルフに告ぐ」だ。
「ブラックジャック」「鉄腕アトム」「奇子」「シュマリ」「陽だまりの樹」など、その他の名作は図書館で借りて読んだ。

手塚治虫はすごい人というのはみんな知っているだろう。
ただ、日本って立派な人は高尚な作品、まっすぐな作品を書くと思われているふしがある。
手塚治虫も鉄腕アトムや火の鳥だけをみると、生命の賛歌、命とは?を題材にしていると思われてしまうだろう。
でもそれだけじゃないのよ。
手塚作品、なかなかドロドロした作品もあって、黒いとこもたくさんある。
「人間ども集まれ!!」なんて、、すごいブラックユーモア作品だ。

そんな中、本作を紹介する。
なぜかというと、個人的には手塚長編作品の中では最高傑作だと思っているからだ。

なんでこんなに惹かれたかというと、導入がものすごくミステリーしていて最高に惹きつけられるのだ。

あらすじ。
早稲田大学で陸上選手として名をはせた選手、峠草平。
彼は新聞社のスポーツ記者として働いている。
時は第二次世界大戦前、ベルリン五輪の取材で峠はドイツを訪れる。
そんな彼にドイツ留学中の弟から、話があるから会いたいと連絡が入る。
女の話でもあるのかな?と軽い気持ちでいた峠は取材の為、弟の元に行くのが遅れてしまう。
弟のアパートに着くのだが部屋は強盗にあったかのようにめちゃくちゃになっており、さらに窓の外にある街路樹の上に滅多刺しにされた弟の死体が、、
死体は警察に引き取られていくのだが、その後警察を訪れてもそんな事件は無いといわれ、弟のアパートに行くと全く別の家族がずっとそこに住んでいると主張する。
事件どころか弟の存在までなかったもののように消されてしまう。
それでもなんとか調査を進めるのだが、峠はゲシュタポ(秘密警察)につかまり拷問を受ける。
どうやら、弟はナチス・ドイツ、ヒトラー政権を覆すような秘密をもっていたらしい。
峠は弟の死の真相と、前述した秘密をめぐる事態に巻き込まれていく。

また、日本の神戸ではドイツ領事の息子である”アドルフ”とその親友で、ユダヤ人でパン屋のせがれ”アドルフ”がいる。
彼らの友情と、日本で起こったこちらも謎の芸者殺人事件がからみあっていく。
不安定な情勢下、ナチス・ドイツの秘密を巡った様々な事件とそれに翻弄される人々が描かれる。
ミステリー要素と正義とはなにか?を突き付けてくる傑作なのだ。

この導入部を読んでしまうと、もう止まらない。
中学生のころ少ないお小遣いをたっかい愛蔵版につぎこんだ。
でも悔いはない。
最高に面白いから。

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