ダーツ

ビルに入り、1Fに止まっていたエレベーターに乗り込む。
エレベーターの中には大河一人。いざ乗り込むと目的の6Fのボタンを押す。エレベーターは、3F、4Fと上がっていく。
あっという間に目的の6Fに着く。陳、-という音が鳴り扉が開くと、目の前には薄暗い風景が広がっていた。
「ここ、だな。」
大河は少しビビりながらそう呟いた。
周りの様子を伺いながらエレベーターを降りると、大河は怪訝そうな表情を浮かべながら受付らしい場所に向かった。
「いらっしゃいませ。」
スーツではないが、このお店の制服を着た綺麗な身なりの男性店員が声をかける。
「あ、どうも。」
ぎこちない返事をする大河。
「今日はどちらをご利用なさいますか?」
男性店員は小さいが、しっかり聞こえる声で尋ねてきた。
「えっと……」
慣れない店にあたふたする。
 大河の様子を見て察したのか、男性店員が助け舟を出した。
「ネットをご利用でしたら、こちらのコースになります。」
男性店員は、受付のところに書かれた料金表を手でさしながら尋ねた。
「あ、いやネットじゃないです。」
「それでは、アミューズメントの方をご利用でよろしいですか?」
 手先を先ほどとは別のところに向ける男性店員。
「あ、はい。お願いします。」
「そうしますと、ビリヤード、ダーツ、卓球からお選び出来ます。」
「ああ、はい。」
「料金はすべて同じとなっておりまして、他のお客様がいらっしゃらなければ、移動も可能となっております。」
「ああ、そうなんですね。じゃあ、とりあえずダーツで。」
「かしこまりました。機種はどうなさいますか?」
「機種?」
「はい。こちらのふたつからお選びいただけます。」
 男性店員が指さしたところには、おそらくダーツの機種の名前であろうアルファベットが書かれている。
「ああ、じゃあこっちで。」
 どちらがいいか分からなかった大河は、少しだけ見おぼえがある方を選んだ。
「かしこまりました。」
 何やらパソコンに向かって打ち込む男性店員。
「あの、時間は…」
「当店は自動延長制となっておりますので、今からお渡しさせていただきます伝票をお会計時にお持ちいただきまして、その際にこちらのプランなどが適用されます。」
 男性店員は、3時間いくらなどと書かれた料金表を指さしながら流暢に説明した。
「あ、わかりました。」
「そうしましたら、こちら5番台をご利用ください。真っすぐ進んでいただきまして、突き当りを左手に曲がっていただきますとダーツコーナーとなっております。」
「ありがとうございます。」
「マイダーツはお持ちですか。」
「ああ、ないです。」
「そうしましたら…」
 店員は一旦かがむと、受付台の下からダーツを取り出した。
「こちらをお渡しさせていただきます。会計時に伝票を一緒にお持ちください。」
「はい。」
「それではごゆっくりどうぞ。」
 どうやら説明は終わったらしい。大河はぎこちない動作で言われた場所に向かった。

「よし、ダーツ上手くなってあの娘と行くぞ。」
 どうにも大学生らしい動機だ。

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