第2感 過去の栄冠、未来は…

 すっかりサブスクっ子の僕は、毎日パソコンやスマホと向かい合っては映画を見ている。
 これも思い返せば、コロナウイルスからのステイホームという流れで色々契約したことが始まりだった気がする。思えば、それまでサブスクを契約したことなどなかった。

 一昔前までは、もっぱらレンタルショップを利用していた。長期休みになると、海外ドラマをレンタルして一気見したものだ。
しかしそんなレンタルショップもサブスクの台頭ですっかり下火になった。それこそ渋谷のTSUTAYAがレンタル事業をやめるというニュースを見たときは、何度かしか行ったことはなかったが、割とショックを受けたりもした。
 サブスクは便利でとてもいいものだが、レンタルショップがなくなってしまうのは本当に惜しい。
だってどんな便利な時代になっても、配信では出会えない作品があるし、お店の中を歩くことで出会える作品もあるからだ。
 でもやはり「便利」なものには勝てないのだ。

 つい先日のこと、用事を済ませた帰り道にふと最寄り駅にあるレンタルショップへ寄った。
 たくさん陳列され、ついにレンタル開始、というポップがついた映画も、少し前に配信サイトで見たものだった。
 そんな映画コーナーを軽く眺め、僕の足は自然と海外ドラマのコーナーへと向かっていった。
 懐かしいタイトルもあれば、聞いたことのないタイトルも。全然知らないけど、シーズン9までやってるから結構人気なんだな、そんなことを思いながら物色する。
 すると、どうにも目を引く文字が。

「ウィンチェスターズ」

 あれ、これってまさか?

 僕の名前は大熊健司。父方の名字が大熊だったから大熊健司。
 でも実は、僕が19歳の時に父親はうちを追い出され、22歳になる前に離婚をした。
 父親とはうちを追い出されて以来会っておらず、正直父親のことは今でも嫌いだけど、それでも大熊という名前だけは気に入っていた。
 なんかよくない?
一回聞けば忘れない苗字だし、ニックネームにもなりやすいし。
何より20年連れ添ってきたこの名字を捨てる気にはなれず、両親は離婚こそしたものの、結局大熊として生きていくことにした。

 正直父親とのいい思い出はない。どうにも僕とは相性が悪かったようだ。
あ、でも一応父親の名誉のために言っておくと、教育にはお金をかけてくれた。
 小学校から私立に通わせてくれたし、塾に行きたいと言えば、お金を出してくれた。その点は感謝している。
 でもやっぱり、父親とのいい思い出はない。

 うちの父親はちょっと稼ぎがいいサラリーマンだった。
 朝から夜まで仕事に行き、休みは暦通り。
だから僕は土日祝日が何より憂鬱だった。
 うちの父親はよくテレビを見ていた。と言ってもいわゆるバラエティ番組ではなく、サッカーの試合やF-1のレース、そしてよくわからない海外の映画はドラマ。
 しかも好んで見ていたのはホラー系やスプラッター系。いや、もしかしたら他にも色々見ていたのかもしれないが。当時の僕にはその印象が強かった。
 大人になった今、色々なジャンルの映画を見るが、なんだかんだホラーとかそういう作品が好きなあたり、やはり血は争えないようだ。

 中学生の頃、父親が深夜に放送していた海外ドラマを録画してみていた。

 それが、「スーパーナチュラル」だった。

 2005年にアメリカで放送が開始されたこのドラマは、兄ディーンと弟サムのウィンチェスター兄弟が、アメリカ中を旅しながら、悪霊、悪魔、怪物などを狩っていくという作品だった。
 この作品は2020年に放送されたシーズン15をもって完結した。とんでもないボリュームである。
 特に初めの頃のシーズンは1話完結型の話が多く、見やすくてとても好きだったのを覚えている。
 だから当時の僕は、父親の一緒にいるのは嫌だったが、何となく横で見ていたものだった。

 それから高校生、大学生くらいになると、それこそ長期休みの度にレンタルショップに足を運んでは見ていたが、最終的に15年以上かけてシーズン15で完結した作品。
 何度も途中でやめてはトライしたものだ。
 そしてこのドラマさえも、最終的にはNetFlixで配信されたのを知って最後まで見たのだった。

 だから、近所のレンタルショップで「ウィンチェスターズ」という文字を見たときは衝撃を受けた。
 DVDのパッケージも、あの雰囲気を醸し出してみる。
 僕は一度呼吸を整えると、そのパッケージに手をかけた。
 どうやらこの作品は、「スーパーナチュラル」で兄ディーン役を演じたジェンセン・悪レス製作総指揮の元、作られたスピンオフ作品らしい。
 これは見るしかない、そう思った僕はその場では借りずに、準新作が安くなる日を狙って借りることにした。
 まあ売れてない芸人なんて金ないからね。

 そしてそれからしばらくして僕はシーズン1をレンタルし、一気見することに。
 とりあえず1本目(第1話と第2話)を何及び知識も入れずに見た僕は、まだDVDの後ろにある情報しか知らなかったため、改めて調べてみることに。
 もしかしたらネタバレ踏んじゃうかもしれないけど、シーズン2はいつやるのかな、そう思いながら。

 しかし蓋を開けてみれば、まさかのシーズン1で打ち切り決定。ジェンセン・アクレスが、資金を募るキャンペーンを行うかも、というニュースまで。
 これはショックだった。ショックだったけど、見進めていったら何となくわからんでもなかった。

 決して悪くはない。面白い。懐かしいキャラまで出てくるし、何ならその度に、おお!、ってテンション上がったし、でも、ね。

 人気が出たからと言って、安易に続編や前日譚を作っても、一過性の話題にしかならないというわけだ。
 いやむしろだからこそ、本当にヒットしてる作品はスゴイともいうべきで。
 とりあえずこのやるせない感情をどうにかすべく、久しぶりに本当の「スーパーナチュラル」を見返そうかなと、そう思うのだった。

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