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大自転車時代の幕開け?数字とニュースで見る自転車業界

この記事はロードバイク Advent Calender 2020 の21日目の記事です。
昨日は NなAおO さんの「自転車に乗るときのウェア選び」の記事でした。明日は ひであ さんの「今年買ってよかった自転車&キャンププロダクト」の記事です。

こうやってばんばん記事が公開されてるアドベントカレンダーを見ると楽しくなりますね!今回の僕の記事はちょっと毛色を変えて、「2020年って自転車業界にとってはどんな年だったんだろう」というのを様々な数字とニュースを見ながら振り返ってみようと思います。


変わる日常と自転車

日本国内では今年の春ごろから本格的な感染症対策が行われるようになり、僕もこれまでの日常生活を大きく変えることになりました。通勤が減り家に家具が増え、外食が減り自炊とテイクアウトが増え、ジムに行けない代わりにスマートトレーナーを買いました。
それでは自転車は?僕はさすがに自転車の台数は増やしませんでしたが、世間的には違ったようです。

自転車専門店を展開する「イオンバイク」では、スポーツタイプの自転車の売り上げが、ことし5月以降、前の年と比べておよそ2割増加しています。
子ども用の自転車の売り上げも、前の年と比べておよそ3割伸びています。

こちらのNHKの記事では国内に316店舗(2020/6時点)を運営する自転車小売店・イオンバイクが取り上げられていますが、480店舗(同)を運営している国内の自転車小売最大手・サイクルベースあさひは飛ぶ鳥を落とす勢いであることが報じられています。

2020年8月中間単体決算は、売上高が前年同期比15.0%増の391億円、純利益が60.8%増の42億円で、中間決算としてともに過去最高だった。

売上を大きく落とす業界が多い中、かつ、ここ数年の自転車ブームのおかげで去年の売上も好調だったことを考えると、前年比でも大きく売上を伸ばしているのは驚きです。

あさひ、イオンバイクの2社が好調なだけなら「みんなママチャリ買ってるのかな?」という雰囲気が醸し出されますが、車種を問わず好調な傾向が続いているようです。
ロードバイク乗りなら皆さんお馴染みシマノ。スポーツ自転車の部品で世界シェア7~8割を占めていると言われていますが、なんと今期の業績を上方修正しています。

自転車に乗るからには入っておきたい自転車保険も、やはり数字を伸ばしているというニュースが出ていました。自転車保険の加入を義務付ける自治体が増えている影響もあるようですが、大きく加入者が増えているようです。

これはやはり来ているのでは。ビックウェーブが。


小売だけじゃない、絶好調の自転車業界

買うだけでなく、借りる方も好調です。都内に住んでいる人には赤い小型自転車でおなじみのシェア自転車サービス、ドコモ・バイクシェアもやっぱり売上を伸ばしています。

4月~8月の電動自転車の平均利用回数は対前年120%で推移し、利用に際して必要な新規会員登録者数は対前年130%にのぼる。

もともと利用拡大傾向にあったドコモ・バイクシェアですが、今年に入ってさらに利用が伸びているようです。官報(決算公告)を見ても、会社設立以来ひたすら赤字だったのがついに粗利ベースで黒字転換しています。

また、このニュースで興味深いのが、「通勤時間帯の利用は(恐らくリモートワーク浸透などで)減少しており、それを補って余りあるほど土日の利用が増えている」というコメントです。もしかすると、自転車利用の好調さは通勤通学だけではなく他の要素によって支えられているのかもしれません。

趣味のサイクリングアプリとしては最も有名なStravaが、今年のアクティビティの統計データを公開しています。記事によると、サイクリングについては全体が伸びただけでなく、特に女性のアクティビティが急激に上昇したとコメントしています。

フィットネスアプリStravaは、今年1年間、7,200万人のユーザーによってアップロードされた11億以上のアクティビティを集計。アップロードされたランとサイクリングの数が2019年と比較してほぼ2倍になり、ウォーキングの数は前年比で3倍になりました。
世界の女性がStravaにアップロードしたサイクリングアクティビティの中央値は、18~29歳の層で前年比約45%増加、他の年齢層でも約25%増加しました。一方、男性は全体として10%程度の増加でした。

また、微妙にバッドな自転車ニュースで世間を賑わせているUberEatsも、やはり取り扱い店舗数を大きく伸ばしていると公表しています。(配達員数は非公表)UberEatsを自転車業界とくくって良いのかという気がしますが、国内ならかなりの影響を与えているんじゃないでしょうか。

サービス開始時に150店だった提携レストラン数は、2017年9月に1000店、2018年9月に3500店、3年経った2019年9月で1万4000店にまで増えていた。それが足元では3万店を超えている。この3万店は、他社の数字と違って(登録だけでなく)実際に受注しているアクティブなレストランを指す。

もしかすると、買う自転車の傾向も変わってきているのかもしれません。電動アシスト自転車で国内首位のパナソニックや、海外の電動自転車スタートアップ企業VanMoofなどの好調さも聞こえてきています。

ちなみに前回記事にしているバーチャルサイクリングアプリのZwiftも、好調な業績を背景に大きめの資金調達に成功しているようです。

ざっとキーワードを拾ってまとめてみると、「シェアサイクルなど、自転車の"利用シーン"が増えている傾向」「趣味やアクティビティの自転車利用が増加、特に女性に顕著」「自転車を使ったビジネスが拡大」「ママチャリやスポーツ車だけでなく、高価格帯の電動自転車も好調」あたりでしょうか。
こうして見ると、個人的に一番気になるのはやはり「女性による趣味の自転車利用が増加」しているデータです。これまでの自転車ブームはどうしても男性メインだったことを考えると、女性の自転車利用が(感染症対策をきっかけとした何かの要因によって)増えて、結果としてこれまでよりも幅が広い自転車需要が掘り起こされているように思われます。


海外でも自転車フィーバー。来年も続く・・・かも?

シマノやStravaの記事でも出ていましたが、自転車ブームは日本国内だけの話ではありません。今年は世界的に自転車フィーバーな年でした。特にヨーロッパ各国では、この感染症拡大を機に道路におけるバス・自転車レーンの設置や自転車修理代の補助などの政策も行われているようです。

こうやってニュースを読んでいくと、「世界中で自転車大ブーム!向かうところ敵なし!自転車先生の次回作にご期待下さい!」な気分になってきたと思います。
ただ、こういった流れが日常に定着するかどうかは、変わる前と比べてユーザーがどれだけメリットを得られたか・課題を解決できたか、その結果生活スタイルを変えられたか、というあたりが重要です。

「感染症対策という外部要因によって生活スタイルを変えざるを得なかったから、仕方なく自転車を使った」だけでは長続きしないので、この1年で自転車をより多く乗るようになった人・新しく買った人たちが、自転車にたくさんのメリットや楽しさを見つけ出してくれたら良いなーと思います。

僕のふわっとした言葉で締めるのも何なので、シマノ社長・島野容三社長のインタビューのコメントを引用して終わります。来年もそのまた来年も、自転車にとって良い年になりますように。

歴史の話に戻りますが、堺では安土桃山時代にかけて火縄銃の生産で富が運び込まれたため、茶の湯などの文化が発展していきました。この茶道が今日まで続いているのは、それが「文化」だからです。やはり、長続きしているものの背景には必ず文化があります。
文化は一つのパラメーターにもなります。例えば、自転車を長く大事にしてくれる人は、価格が高くとも耐久性のある製品を買って使ってくれる。安物ではなく耐久力のある自転車に乗り、より良いコンポーネントを使ってくれれば、私たちのビジネスにもつながってきます。

自転車の部品で100年も続けられたことは、本当にありがたいです。次の100年は、時代はどんどん変革していくでしょうね。製品の作り方も、もちろん変わっていくと思います。でも、自転車や釣りの楽しみ方は変わらない。永遠に続くものだと思っています。

シマノ島野社長「カルティエに置いても見劣りしない自転車部品を」  - 日経ビジネス

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