天空の茶畑 初夏の静岡掛川・茶畑サイクリング
立春から数えて88日目は八十八夜。日本茶の旬の時期ですね。この時期はサイクリングのベストシーズンでもあるわけで、「これは静岡あたりでお茶を飲みにサイクリングしに行ったら楽しいのでは!?」と思い、今回はお茶の名産地である静岡県・掛川を走ってきました。
東海道新幹線・掛川駅をスタートして粟ヶ岳、旧東海道の小夜の中山を経由して約50km。登りはそれなりにありますが、比較的ライトな感じ。
本当は牧之原台地や御前埼あたりも走ろうかと思ったんですが、たまにはこういうゆるいやつも良いじゃない。ということで。
1.東海道の宿場町をゆるーく走る
東京から約1時間、東海道新幹線掛川駅。ちょうど東京と名古屋の真ん中にある"こだま"しか止まらない駅ですが、新幹線で乗換なしで行けるっていうのはやっぱり便利です。
快晴の空の下、ちゃちゃっと輪行をといて走り出します。
町中に突然あらわれる掛川城の天守閣。小さな公園になっているようです。
掛川の郊外をぐるっとまわって、静岡方面へ。このあたりは東京・大阪キャノンボール(東京大阪間を自転車で24時間以内に走るやつ)でよく使われるルートですね。静岡県内は国道1号線に自転車が走れない区間が多くて辛いイメージ。
事任八幡宮のところに粟ヶ岳の案内が出てくるのでここを左へ。いわゆる旧東海道の日坂宿に入ります。東海道五十三次の25番目の宿場町だったところです。
日坂宿の入り口近くにあったのが岡田製パンさん。「岡パン」という可愛らしい看板とのれんがかかっています。これは名店の予感。
のれんをくぐって中に入ると、昔ながらのパン屋さんといった雰囲気。なんでもメロンパンが有名らしいですが、「カレーパン焼きたてですー」のひと言でカレーパンに即決。焼きたてに抗えない!
さくさく。美味しい。
エネルギーも補給できたので再出発。
街道沿いには、当時を偲ばせる建物や場所が残っています。それほど大きな規模ではなかったようで、全体的にコンパクトな作りです。
ところどころ、普通のお宅らしきところに屋号のような看板がかかってるんですよね。当時の旅籠や店舗の再現なのかも。
日坂宿を過ぎると、茶畑と山道が始まります。ヒルクライムは市街地を抜けはじめたあたりから楽しくなりますね。車通りが激減するのが嬉しい。
この日は夏のような空模様と、やや暖かいぐらいの気温で絶好のサイクリング日和でした。一年中こういう気候でいてほしいなー。
2.水平線まで続く茶畑を眺めながら、粟ヶ岳をヒルクライム
登りと言えないぐらいゆるやかな坂を登っていると、なんと途中でお茶の香りがしてきました。いやいや、いくら収穫期とはいえ茶畑でお茶の香りがするわけないじゃん。幻覚か?と思ったら、
製茶工場でお茶の加工をしている香りでした。なんでも、お茶葉は収穫直後に地域の工場で一次加工されてから各地の茶商さんに届けられるものらしいです。なんだかコーヒー豆農家と焙煎所の関係に似てますね。
茶畑地帯には必ず1箇所ある、ぐらいの頻度で製茶工場が出てくるので、この先も至るところでお茶の香りが楽しめました。新茶の時期のサイクリング、良すぎでは?
茶文字ってなんだろう?と思って走っていたら、目に飛び込んできたのは山腹に燦然と輝く「茶」の字。
茶文字焼きとかするのかな。ちなみに本日の目的地は「茶」の字の左上あたりです。がんばろう。
茶畑の間を縫って走っていくと、小さな茶屋が見えてきました。ちょうど粟ヶ岳の麓にあるので、ここを過ぎると本格的に登りが始まります。
お茶屋さんの目の前の川に、鯉のぼりの群れがかけられていました。うーん、本当にゴールデンウィーク時期に来るにはもってこいの場所ですね。
👍
注意書きするのが分かるぐらいには道幅が狭く、そして何より斜度がキツい。これまでのゆるゆるが嘘のような登りです。全体を通して8~10%ぐらいあるんじゃないかなー。えげつない。
ちなみにこの粟ヶ岳、お手軽なハイキングコースとしても知られているらしく、道路と交差するように登山道も整備されています。
2又に分かれるところでどちらに進もうか迷っていたら、後ろから来た登山者の方に「自転車はまっすぐだよー」と声をかけてもらえました。ありがとうございます。
遠い夏の日の幻みたいな構図。坂は相変わらずえぐい。
道中の景色は抜群に良くて、茶畑が絨毯のように広がっている様子が見て取れます。海側がずーっと台地になっているおかげですね。
最後の山道を抜けて、お椀をひっくり返したような展望台が見えたらゴール!粟ヶ岳の山頂です!
いやー、これは絶景。
茶畑と焼津の市街地、駿河湾、そして伊豆半島が一望できます。
バイクラックがありました。自転車フレンドリー。
期間限定の黒カレー。特産のお茶と一緒にいただきます!
それにしても、500mちょいのヒルクライムの頂上としては屈指の眺めの良さだと思います。頂上にカフェテラスがあるのも至れり尽くせり。
残念ながらこの日、富士山は見えず。
静岡空港の滑走路。ここの右手側が牧之原台地で、日本でも有数の広大な茶畑が広がっています。
3.東海道の三大難所・小夜の中山の激坂に挑む
絶景とランチを堪能したら麓までダウンヒル。
途中、お茶の収穫をしているのを見かけました。さすがに手摘みではなく、機械でばーっと刈っていくんですね。
麓についたら、来た道とは逆に東側へ。このあたりも製茶工場のおかげでうっすらお茶の良い香りがします。五感を刺激するサイクリング。
こんなところにもゆるキャン。伊豆半島を走ったときにも居ましたが、静岡で推してるんですかね。
国道1号線のあたりまで下ってきたら、旧道の東海道の方へ。ここから日坂宿までの間にある「小夜の中山峠」は江戸時代に東海道の三大難所(箱根峠、鈴鹿峠に匹敵する難所)に数えられていたんだそうです。
とはいえ標高も250mぐらいなので楽勝でしょ!と思っていたんですが。
冗談みたいな激坂でした。なんだこれ。
電柱と看板で垂直を出してますが、このナナメ具合ですよ本当にヤバい。下手に体重をかけると前輪が浮きます。
途中の看板に描かれていた当時の浮世絵。この斜度は絵画表現ではない。
ひとつ目の坂を登ったあたりで、右手側に広大な茶畑が見えてきます。ご褒美の絶景。
このあたりはお茶の新芽がまだ刈り取られていないようでした。東山のあたりとは微妙に生育が違うんですかね。
そしてまだまだ続く激坂。瞬間的な斜度で言うならたぶん箱根より上ですね、もうちょっとゆるやかな山道にできなかったのか……。
驚きなのはちょこちょこ民家があることで、毎日こんな坂を登り降りしてたらオリンピック選手が育っちゃいますよ本当に。
ようやく峠の頂上付近にたどり着くと、年季の入ったお茶屋さんがありました。こちらのお店、なんと宝永(1700年ごろ)創業だそうで、歌川広重の浮世絵にも描かれているとか。
名物の「子育飴」は、往時、山賊に襲われて命を落とした妊婦さんから近くのお寺の僧侶がお腹の子を救い出し、その子を育てるために作った水飴に由来しているという伝説があるそうです。お菓子の由来としてはあまりにも悲劇すぎる。
峠を過ぎたらダウンヒル。気持ちいい瞬間。
途中で「車両は直進できません」の看板があったので、大人しく従って新道側へ。ちなみにこのまま旧道を進むと登りと同じぐらいの激坂があるそうで、自転車で下るのはちょっと遠慮したいですね。
日坂宿に戻ってきました。
最後に掛川駅へ戻る途中でお目当てにしていたお茶屋さんに寄り道。
残念ながらカフェ営業は休業していました。ショック。美味しい日本茶とぜんざいを食べようと思ってたのに……。
気を取り直してお土産の新茶を購入。店内で炊かれていたお茶のアロマがなんとも言えず良い香りでした。
4.帰宅してからのお楽しみ
今回のサイクリングはこれをやらないと終われない!ということで、お土産で買ってきた新茶を淹れました。
深蒸しの掛川茶らしく、苦味が少なめですっきりとした甘みがありました。新茶は甘み・旨みの成分であるアミノ酸を大量に含んでいるらしいので、そのせいもあるのかも。
少しづつ味わっていただこうと思います。
全体の距離は50kmほどですが、2つの歯ごたえのあるヒルクライムとお茶の香りが楽しめるサイクリング。走りに行った際にはぜひ現地でお茶のお土産を買うと良いと思います。
例えサコッシュを忘れても、お茶っ葉ならサイクルウェアのポケットに余裕で入るのが良いですね!
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