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平成最後の夏ドラマにみるヒロイン至上主義からの脱却

「義母と娘のブルース」第3話を観て、感動してしまった。

このドラマは小学生の娘と元キャリアウーマンの義母との奮闘記なのだが、2人を取り巻く周りの人たちとの繋がりも書かれている。

それは「ALWAYS 三丁目の夕日」に見る昭和の人情物語ではない。家族形成も多様化した現代の人たちが孤立しあった時を越え、もう一度ぶつかり、いかに共存していくかという誠実な物語だと思う。

第3話は、義母のアキコがPTAと対峙する話なのだが、その先にちゃんと解を見出している。

アキコは、PTAの会合でも会社と同じように忖度なしの発言をしたため、PTAのお母さんたちに嫌われてしまう。その余波は子供まで伝わり、アキコの娘はたちまち仲間外れに。

娘の可愛さに家庭にコミットすることを決めたアキコは、大人の喧嘩に子供を巻き込んだことに怒り、PTAを廃止に追い込む作戦を立てる。

画して、元キャリアウーマン VS PTAの構図が出来上がった。

とここまでは良くある話だけれど、話の結末は今までのママたちのドラマとは違っていて良かった。

2011年の「名前をなくした女神たち」というドラマは、夫の収入、夫婦仲が良いなどママ友たちの見栄の張り合いが描かれている。

みんながお受験などで足の引っ張り合いをしているにも関わらず、主人公の侑子はあまり気づいていない。夫婦仲は良いし、息子の出来も良い。だからこそ、みんなから妬まれるのだが、本人は何も悪いことはしていないので、主人公性善説が出来上がる。

2015年の「マザー・ゲーム〜彼女たちの階級〜」では、保育園に空きがなく、子供を幼稚園に入れることになってしまったシングルマザー希子の奮闘を描いている。

幼稚園にシングルマザーはおらず、意地悪を言われたりするのだけれどそんなことでは希子はへこたれない。

住む世界が違いすぎて付き合いやすいのか、スーパーセレブママから好かれた希子。完璧と思われたセレブママの秘密が公になり、周囲が離れたときも、味方でいる希子。

仕事も育児も頑張るシングルマザーと対比して、お金があっても不幸かもしれないセレブママも描いている。

ここでも正義は主人公。

で2018年、元キャリアウーマンのアキコも、PTAとガチンコで対決するのだけど、仲直りして、PTA会長とスキルシェアまでし始める。

まあ出来すぎかもしれないけれど、今までの属人的な正義を描いていない。侑子のような自然体でうまくいっちゃうが故に意地悪されるとか、希子のようなポジティブで頑張り屋さんのママが正義とされるようなものとは違うのだ。

アキコさんは自分の正しさを証明しない。自分がやっていることの正しさの先に目的があり、それに対して力を尽くすだけだ。

価値観の違う人を肯定すると自分の人生が否定されたように感じることはある。そのリアリティを描いたのが2011年「名前をなくした女神」であり、属人的に打ち壊そうとしていたのが2015年「マザー・ゲーム〜彼女たちの階級〜」だったと思う。

2018年「義母と娘のブルース」は属人的な正しさから脱皮し、価値観の違う人とも共存する術を探していく。

昭和の人情は良かったという思想から紆余曲折し、平成最後の夏にやっと新しいヒューマンドラマが出現した。

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