令和に風呂無しWi-Fi無しの3階建てに1人で住む大学生。約1年住んで気づいたこと②
3. 「隣のおじさん」との出会い
これから半年間、よく分からない古い民宿で暮らす、という事実を当時「自称高尚な身分」の私は泣く泣く受け入れるしかありませんでした。
地元から、大学がある場所の民宿を、内見しに行く日。
父と2人で出かけました。
ナビが目的地の周辺に近づいている事を知らせてくれる頃、民宿に電話をかけました。
「もしもし…もう少しで到着するので、後ほど宜しくお願いします。」
「ほ〜い!!もう着くって?よろしく〜!!」
聞こえたのは若干しわがれた声の、おじさんの声。
ファーストコンタクトにしてはなんかテンションおかしいけど、老舗の小さい民宿やってる人ってこんなもんか…という第一印象でした。
そして、到着。
ガラガラ〜と民宿の引き戸を開けました。
うん、やっぱり想像通りの建物、雰囲気。
テレビはまさかのブラウン管、至る所に手書きの注意事項。
本当に私はその時ネガティブな感情に覆われていたので、目に写るもの感じ取るものすべてをマイナスに捉えていたんだと思います。
「よく来たな〜!…」
からの、お喋り好きなおじさんの長話が始まり。
やっと住む場所のツアーが始まりました。
始まるや否や、おもむろに建物の外に出るおじさん、
ご丁寧に外観から説明でもするんか、と思いきや、隣接する空き家と思われる建物に向かいます。
そして、その家の鍵を開けると
「ここを好きに使え〜!風呂は無いから、うちを使えばいい。」
と言って、
家の中について説明してくれたんです。
空き家とは言えど、定期的に手入れはしていたみたいでした。
懐かしさを感じる内装なものの、部屋の中は基本的に綺麗で、謎に洗濯機だけは付いていました。
トイレは、流すと初めに泥水が出てきました。(笑)
ちなみにWi-Fiの事も大学生なりにとても気になっていたのですが、聞かずともそんなものは無い、ということが伝わりました(笑)
実際、かろうじて隣の民宿にはセキュリティ無しのWi-Fiが通っていたんですけど、その電波を僅かながら受信するといった状況でした。(笑)
予想外すぎて、
この広い家を1人占めできることの嬉しさを感じたのか、それとも風呂も無いしテレビも受信できない、Wi-Fiも安定して使えない家に住むしかないことの絶望を感じたのか、
あまり覚えてないです。多分両方です。
契約書なんてものもない。
好きな時に来て、好きな時に出ていけばいい。
必要ものがあれば借りるなり買うなり自由にしていい。
何て自由で、適当な人なんだ…!
これが、御年85歳、「隣のおじさん」の第一印象でした。
85歳って普通におじいちゃんだよね。
でもこの方はそれを感じさせないくらいの活気を持った人なんです。
この家に住む半年間を想像しながら、
ひとまずこの日は実家への帰路に着きました。
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