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pallet

歳をとる、大人になるにつれて色を知って使い方を覚えてきた。けど変化のない毎日、不透明な未来を見据えるたびに黒と白の2色でいまを構成されていて、パレットに色を出すのを諦め始めた自分がいる。

どんなに色を集めてキャンパスを彩っても黒に全てを完結させられることもあるし、20年も生きてきて真っ白のまま綺麗なものを維持しとくのも無理な話。

黒と白の世界、もしくは混沌として灰色の世界を生きることに慣れ始めて覚えたせっかくの覚えた色が消えていく中、関心もなくなって自分もどこか黒に溶け込んでいこうとしていた。

もともと海と空を見るのが好きだったから自然と青色や水色が好きだった。でも濁りが見えるようになって哀愁と隣り合わせになってることを知ってしまった。

垢抜けしてだんだん歳をとるにつれて女の子の口には赤がついて来ることを知るとともに黒、白、黄色と肌の色は違えど流れる血の色はみんな赤なのに紛争や戦争のニュースで争いは絶えないことを気付かされた。

10代が終わる頃チャラつき方を覚えて銀と金を身体につけはじめた。それが馴染んでくる頃に大人は金に執着し続ける、金で心が錆びて黒ずんでいくのが見えてきた。気づけば肺に煙を吸い込んでいるように。

妖艶、色気という言葉の意味がなんとなく理解できるようになってくる頃、そんな言葉が似合う人は同時に血と涙が混ざって紫があるんじゃないかとも考えるようになった。

色を覚えても霞んで混ざり合ったら汚くなってどんどん知りたくないこともしって目を閉じて黒を見る。

でももう一度色を知りなおそうとするきっかけは単純。顔についた白もだんだん街でつける人が減ってきた春の温かみを感じ始めた頃。

青い空に桜が咲いてる、緑の公園。真っ白なパレットにもう一度色を出して自分のキャンパスと向かい合おうと色で表せないくらいの光が生活に差し込んできてそっと瞼を開けて黒を遠下げる。光と青い空によって緑の蕾がそっと顔を出す。

運命の赤い糸は信じてないけど信じたくなったし、海も空も春も青いことを思い出す。

黄色いひまわりが太陽に咲き誇るの景色も、緑からオレンジに変わる紅葉も全部見て色を知ってみたい。

撫子色のハートと引き換えに真っ白なパレットをもらった気がする。

未来のキャンパスを彩る準備が二十歳の春やってきた。

音色は奏でることは出来ないけど、自分の見た景色と気持ちでパレットの色を増やしてキャンパスに彩りたい。

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