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カリスマ ワールド [アルバム全曲レビュー] ~暇を持て余したカリスマの遊び~

楽曲制作者や元ネタの紹介・考察もしつつ全曲レビュー!

カリスマ公式サイトのトップページのスクリーンショット。家のシルエットを背景に7人がわちゃわちゃしているキービジュアルが掲載されている。
『カリスマ』公式サイト

2022年9月21日(水)に『カリスマ』(©Dazed CO.,LTD.)の1stアルバム『カリスマ ワールド』が発売されました。後から知ったので気持ち的に言うと「発売されてました」って感じですが(笑)。

2021年9月から本格始動した『カリスマ』待望の初アルバム! ということで、楽曲制作者やサンプリング源の紹介、オマージュ元の考察(ていうかただの予想)もしつつ全曲感想を書きたいと思います。

あくまでアルバムの感想なので、曲の感想がメインです。でもちょっとMV考察もあります。寸劇やおまけについては公示以上のネタバレはしません。また、筆者の好みにより比重がラップとEDM系に偏っていることをご了承ください。ついつい長文になってしまうのでコンパクトにまとめるよう頑張ります。

もし『カリスマ ワールド』聴いてないけどこの記事にたどり着いたよ! って方がいたらまずこちらの動画がおすすめです。パロディ大好き『カリスマ』がCDTVのパロディに乗せてお送りする全曲試聴動画です。

▼『カリスマ』の魅力についてはこの記事で詳しく書いているので、よかったらこちらも読んで下さい♪

2022/12/26 『めちゃめちゃカリスマ』『When The Charisma Go Marching In』加筆修正しました。


アルバム構成

『カリスマ ワールド』にはカリスマ全員で歌う曲が4曲、カリスマブレイクしたカリスマがソロで歌う曲(カリブレ曲)が7曲、さらに新曲1曲を追加した12曲が収録されています。

また、フィジカルアルバム(CD)限定のボーナストラックとして、『カリスマ ワールド [寸劇]』と、カリスマ声優7名が長台詞の早口言葉に挑戦する『ケツパラガス選手権! [おまけ]』が収録されています。

なんと言っても本作の特徴はこの寸劇! 計10トラックが収録されており、導入から曲の合間までカリスマブレイク状態のカリスマたちの会話を聴くことができます。

やんごとなきカリスマたちの様子はまさに暇を持て余した神々さながら。私のようにモンスターエンジンのコントを想起した方も少なくないのではないでしょうか。

筆者はKPOPアイドルのオタクなので、アルバムの構成にイントロ、アウトロ、interlude(間奏)が含まれていたり、その中にナレーションが入っていたりはちょくちょく見るのですが、こんなにほぼ全曲に渡って入っているのは初めて見ました。アニメ音楽業界ではよくあることなんですかね…………???

とにかくこの寸劇のおかげで、もう曲が倍……10倍……いや100万倍楽しめます。カリスマたちが曲の前に盛り上げてくれるおかげで、もう最っ高の気分で曲の入りを迎えられます。気分はもうカリスマ単独ライブinカリスマワールドです。目を閉じればコロッセオが見えます。凡人もカリスマブレイクするレベルです。ガチで。『カリスマ』の曲が好きならぜひ寸劇込みで聴いてほしいです。もっと曲が大大大好きになります。マジで。

カリブレ曲の合間に挟まるカリスマたちの会話がまたよくて……どんな内容か言いたい! 言いたくなっちゃうけど、それは『カリスマ ワールド』でのお楽しみと言うことで、次はアートワークの感想に移ります。まだアルバム入手していない人がいたらぜひぜひ聴いてくださいね♪


アートワーク

オレンジとインディゴブルーで統一されたアルバムアートワークは、さすがのBALCOLONY.&えびも氏といったスタイリッシュさ。ジャケットイラストでは「最後の晩餐」を思わせる食卓についたカリスマたちの周りを、食べ物たち&マトリョーシカが飛びかっています。ブックレットの中にはその食べ物たちが。オシャレだなあ。

特筆すべき点はずばり「帯」。帯の内側がなんとカリスマたちの食卓に並んでいる料理のレシートになっているのです。なにこのさりげないオシャレさ。かわいすぎ。

個人的にはジュエルケースがあまり好きではなく、本作もまさに「帯って捨てるのももったいないけど保管にも困るんだよね~」と思いながら開封していたのですが、帯の裏面を見た瞬間「え!!! ジュエルケース好き!!!! カリスマ大好き!!!!!!」になりました。本当にかわいいのでぜひ実物を見てみてください。

というわけで次は各楽曲の感想に移ります。


めちゃめちゃカリスマ

作詞・作曲・編曲:CHI-MEY
(Containing cover of “Ta-Hu-Wa-Hu-Wai”)
歌:七人のカリスマ


記念すべきカリスマ第一作。BPM80後半くらいののどかなウクレレにのせ、7人それぞれがカリスマ性を主張する自己紹介ソングです。

なんと言っても『めちゃめちゃカリスマ』はもう伊藤ふみやのバースがたまりません。アニメイトの店内モニターで初めて『めちゃめちゃカリスマ』を見たとき、「さっきはひどい紙芝居だったのに、謎のポリゴンが挟まって急にかっこよくなった……なにこれ同じ曲? 別の曲?」と困惑し、カリスマについて調べようと決意したのを覚えています。

ふみやのバースは彼の冷静沈着なキャラクターを象徴するように音数が抑えられており、淡々としたラップにぐっと引き込まれます。そしてガチガチに韻踏みまくり。swagだぜ。

個性あふれる欠陥仲間
頭の数だけ生まれるストーリー

仲間・頭の固い返り韻もたまりませんが、個性・ストーリーで地味に/i/・/ri/で合わせているのも見逃せません。フレーズ単位では脚韻と頭韻をあべこべにしながらも、真ん中ではあふれる・生まれるで踏んでるテクニカル&トリッキーさ……ミステリアスで妙に知的な伊藤ふみやらしいラップですね。

そして続けて怒濤の/i/の押韻が来ます。

良いとか悪いとか一概には言えない
ここじゃなきゃ こいつらどこにも家無い

良い・悪い・一概・言えないの/i/で踏みまくってから/ko/でタメを作って最後に言えない・家無いの子音踏みできっちり落とす。かっけえ。カリスマたちのバックグラウンドを匂わせる余韻を残すパンチラインもたまりませんね。まあMVでは余韻に浸る暇もなく謎スロットと謎ポリゴンが襲い来るわけですが。

この曲から『おつカリスマ! 忘年会』までのカリスマ三部作(?)はおそらくCMソングをコンセプトに作られており、今回の元ネタ『Ta-Hu-Wa-Hu-Wai』はハワイ民謡ですが、それを元にした牧伸二のウクレレ漫談『やんなっちゃった節』が「ピレパラアース」CMとして有名だったみたいです。「あゝやんなっちゃった あゝ驚いた」のところなんかかなり似てますね。クレジットでは『Ta-Hu-Wa-Hu-Wai』のみ表記されていますが、『やんなっちゃった節』も元ネタのひとつと言えるんじゃないでしょうか。

カリスマ三部作のうち『めちゃめちゃカリスマ』『カリスマっていいな』の2曲を提供しているCHI-MEYさんですが、カリスマのルーツとも言うべきバイブスを強く感じるのが、同じくCHI-MEYさん提供の『ヒプノシスマイク』コミック特典CD収録曲『Nausa de Zuiqu』『Wrap&Rap ~3分バイブスクッキング~』です。

『Nausa de Zuiqu』はフィンランド民謡『Ievan Polkka』をサンプリングしたリズミカルなビートに合わせて、山田一郎(やまだ いちろう)と碧棺左馬刻(あおひつぎ さまとき)が本場フィンランドのサウナクイズで真剣勝負をする姿が笑いを誘うコミカルな一曲。『Wrap&Rap ~3分バイブスクッキング~』は観音坂独歩(かんのんざか どっぽ)と伊弉冉一二三(いざなみ ひふみ)が料理番組のようにレシピを紹介しながらラップをするユニークな曲で、トラックではイェッセルの『おもちゃの兵隊のマーチ』をアレンジした「キューピー3分クッキング」を思わせる軽快なメロディーとともに、モーツァルトの『ピアノソナタ ハ長調 K. 545』のメロディーをサンプリングしています。

往年の名曲をコミカルかつ大胆にアレンジする手法は、まさに『カリスマ』全員歌唱曲にも通ずるものがありますね。このスタイルを得意とするCHI-MEYさんだからこそ、『めちゃめちゃカリスマ』という斬新な名曲が生まれたのでしょう。『カリスマ』を象徴する初公開MVである『めちゃめちゃカリスマ』、そして1stシーズンのエンディングを飾る『カリスマっていいな』を手掛けたCHI-MEYさん。ぜひぜひ今後ともよろしくしていただけたら嬉しいですね。


カリスマ1 週間

作詞:OHTORA 作曲:OHTORA・New K 編曲:New K
(Containing cover of “Неделька”)
歌:七人のカリスマ


一転してアップテンポなテクノポップの2曲目。こちらはロシア民謡『一週間(Неделька)』にのせて、カリスマ全員がそれぞれの曜日の過ごし方を歌います。

私は本作ではこの曲が一番好きです。元々EDMに好みが偏っているのもありますが、それぞれのバースで遊び心を加えながらもずっと裏拍でノれる一体感が気持ちいい。歌詞の音ハメもめっちゃいい。

特に猿川のバースが本当に好きで何回も聴いています。

俺は 猿川 慧
協調性? 知るかボケ
やりたいことしかやらねー
ルールもマナーもぶっ壊す!

この/e/で攻めて攻めてぶっ壊すの! 気持ちよすぎ!!!! この後に来る「おめーらがYesなら俺はNoだ」から3拍目でキメる「No!」もめっちゃロック。頭揺れる。「俺が決める」で1音ずつ上がっていくのも一緒に歌いたくなっちゃう。猿川に協調性がなくても猿川の音楽でオーディエンスが勝手にひとつになるから問題ないよ。

『めちゃめちゃカリスマ』に引き続き音数が抑えられたふみやのバースは、4つ打ちのバスドラムがズンズン響く響く。「甘ったれた平日だって~」からのスイーツのターン(?)は、ゆったりしたビートにのせたスネアのフィンガースナップ(指パッチン)とピアノのメロディーがオシャレすぎる。この洗練されたのんびり感。これぞ伊藤ふみや。

ラップと言えば軽快に16ビートを刻んで「自分は生きるに足らない存在です 問題外です~」と歌う大瀬(おおせ)も見どころですね。妙にリズミカルなのがカリブレ回で謎キャラだった彼を思い出します。生きるに・足らない・存在・問題外の韻踏みも気持ちいい。

こちらもよくCMに使われる曲で、検索したら携帯電話や「ファブリーズ」「ファイブミニ」が出てきました。使われていることは覚えているけど何にって言われるとすぐ出てこないもんですね。

曲提供のOHTORAさん、New Kさんの『カリスマ一週間』についてのインタビュー記事を見つけたので貼っておきます。このお二人は一緒に音楽活動もされているみたいですね。主にOHTORAさん名義でNew Kさんがトラックを担当しているみたいです。『カリスマ一週間』の一体感も、お二人が息ぴったりだからこその味わいなのかもしれません。


おつカリスマ! 忘年会

作詞:森めぐ 作曲:山本"ぶち"真勇 編曲:zukio
(Containing cover of “Funiculì funiculà”)
歌:七人のカリスマ


カリスマ三部作(?)3曲目。こちらは日本では『鬼のパンツ』で知られるイタリア民謡『フニクリ・フニクラ』をカバー。これは流石にすぐCMわかった。「ハワイアンズ」「クリクラ」。調べたらCMまとめ動画が出てきたので本当によく使われているんだと思います。

イントロとトランジションにセリフが入っているのがすごく楽しい。カリスマたちが楽しそうに歌っているのが想像できます。特に依央利(いおり)の「は~い 喜んで♡」の語感が好きすぎて家で聴いているときは一緒に言ってしまいます(歌詞にハートはついていません)。猿川の「馬耳東風!」もライブで一緒に叫びたい。ていうかテラから猿に変わるときの降りてくるギターかっこよすぎ。

曲のジャンルが縦横無尽に変わるのでなんかもうほんと大騒ぎの忘年会って感じ。キャラクターの魅力が余すところなく楽しめる。布教するならこの曲はテンポも早くてノリやすいし個性も伝わる気がするけど、タモリ倶楽部がなあ……(苦笑) 天彦のキャラなら一目でわかる男性の尻が混ざっててもよかった気がするけどどうだろう。あと理解が爆走デコトラ伝説なのが永遠の謎です(笑)。

伊藤ふみやは相変わらずクールなビートでバリバリにラップしててよき。オールドスクールな重心低めの安定感のあるラップ。お疲れちゃーん。

ラップといえばカリスマ仮住まいの子音踏みががっつりサビで使われていて嬉しいです。コンセプトから言葉遊びがオシャレなコンテンツだぜ。


秩序宣言

作詞・作曲・編曲:杉本善徳
Sampling of “Pomp and Circumstance”
歌:草薙理解


カリスマワールドの寸劇で盛り上げてからの、草薙理解お得意のアジテーション演説で開幕するカリブレ曲一番手。かっけえと言うのはモチーフがモチーフなだけに少々危なっかしいけどかっけえですね。まあギリシャとか混ざってるのでマイルドになっているかなとは思います。第三帝国とかまで突っ込むと結局……って感じですが……(苦笑)

カリスマ三部作ではピアノやオーケストラなどクラシカルなアレンジがされていた理解。この曲でも力強いコーラスとともに現代楽器をまじえた荘厳な行進曲を思わせるオーケストラと、まさに堂々とした思い切りのよすぎる『威風堂々』のサンプリングが用いられています。

いや金ピカ威風堂々はズルいだろ。ていうかMVはまだわかるけど曲でわらかすな。「Ah~ orderly is the best~♪」じゃないのよ。出先で聴いててもそこで笑っちゃうのよ。そして最後満足しないで。燃え尽きないで。ありがとう最高です。

なんか結構ネタに振り切ってる感じが『カリスマ』っぽくて好きです。天彦(あまひこ)の曲はキャッチーでインパクト強いけど、実は一番体張って曲で笑かしに来てるの理解なんじゃないかと思ったり。最後のセリフとか……。曲提供の杉本善徳さんは主にアニソンを手掛けている方みたいですね。さすがのキャラ感、遊び心と言ったところでしょうか。

クラシカルな引用がされているのは「古典」からの「頭が固い」とかのイメージなんでしょうか。 ヒプマイやパラライにハマってから音楽でキャラクターを表現する面白さに目覚めたので、こういう部分がついつい気になってしまいます。他のカリスマだと天彦のラテンとかも情熱的なイメージからなのかな。


LOVE MYSELF

作詞:Kanata Okajima 作曲:Kanata Okajima・ALYSA 編曲:ALYSA
歌:テラ


来ました! テラ様のミュージカル!! ブラスの音とテラ様の力強い歌声に開始早々心を鷲掴みにされました。バカデカイントロ最高! そして往年のスウィング・ジャズの名曲『sing sing sing』をオマージュしたような導入にウキウキが止まりません。ドラムが俺を呼んでいる。

ミュージカル調で行くと思いきや間にラップぶちかますのもずるい! テラ様ラップも歌も最高!! ラップのところだけバンドが後ろに下がってゴリゴリのエレクトロになるのもかっこいいですね。頭が揺さぶられる。バースの終わりに808系ベースのブーンが入っているのも嬉しい。この音大好き。耳がたすかる。

とにかく色んな場所でブラスにストリングスにドラムにピアノにコーラスが鳴りまくってて楽しい。あと『カリスマ一週間』『おつカリスマ! 忘年会』のテラ様のバースで鳴っていたキラキラもバッチリ鳴っています。トランペットかトロンボーンかわかんないけどすごい近くて迫力ある。クライマックスにかけて右と左で鳴ってるサックスっぽい音がかっこよすぎてよだれ出ました。もうクライマックスは全員同時ソロですよ。

ラップもあるし、ブリッジもあるし、フェイクもあるし、テラ様の色んな魅力が詰まっていて大大大満足だよ……。セリフとか笑い声とかあるのもキャラソンって感じでいいですね。

LOVE MYSELFでありLOVE YOURSELFな歌詞も最高です。その世界に行きてえ~。一緒に歌いてえ~。

全体的にどことなくKPOPっぽい構成だなあと思っていたら、作っている方がバリバリKPOPで仕事してる有名人でしたね。BTSを生んだHYBEの日本本社に所属するALYSAさんと、ジャニーズなどJPOPはじめKPOPにも提供しているKanata Okajimaさん。それぞれの参加作品を紹介しようと思いましたが絶対に長くなるのでやめます。ALYSAさんは倖田來未、SixTONES、Kis-My-Ft2、TXT、LOONAなどの作品を手掛け、オーディション番組でプロデューサーとしても活躍。またKanata Okajimaさんは安室奈美恵、Crystal Kay、Snow Man、Kis-My-Ft2、BTS、TWICE、NiziUへの作詞作曲提供など、ここに書ききれないほど幅広く活躍されている方々です。

余談ですが有名なベニー・グッドマンの『sing sing sing』ってカバーなんですね。今調べて初めて知りました。


命短し尽くせよ奴隷

作詞:森めぐ  作曲:山本"ぶち"真勇  編曲:zukio
歌:本橋依央利


The キャラソン!!
『おつカリスマ! 忘年会』のチームがお送りする、王道にして至高のキャラソンです。小気味いい言葉遊びとChineseでjazzyなトラックの遊び心が調和して、快活な裏にどこか後ろ暗いものが見え隠れする本橋依央利という人間を表現しています。言葉選びがちょっとヘンテコなのも『カリスマ』っぽくていい。

歌詞の大筋としては、奉仕で心は昇天しながらも体は追い込まれている依央利を浮遊・飛行などのワードにかけて遊びつつ、中華テイストをアクセントに入れている感じなんですが、その何層にも仕掛けられた言葉遊びが面白すぎる。なんだ恍惚のマイレージて。溜まったらフライトするんか。

特に好きなのがここ。

僕の四肢 全部捧げたい
あなたの代わりに呼吸したい
満ち満ちるO2
駆け巡るエンドルフィン
肺胞!肺胞!奴隷ーズハイ
嗚呼 僕は生きている!

肺胞!肺胞!奴隷ーズハイて。それ本当にO2満ち満ちてる? ランナーズハイならまだいいけどクライマーズハイだったら死んじゃうよ。だれかこいつを止めてくれ。いや止めるな。ロケットでつきぬけろ!

作詞の森めぐさんがこの曲についてTwitterでお話しされていたので紹介します。

これは私の解釈ですが

幸せは自分の尺度で決めるもので、傍目には不幸せでも、自分が幸せと思えたら最高の人生。

カリスマたちは一見キワモノの集まりだけど、皆それぞれの価値観で自分の最高を生きてる。

私にとってはこの曲は超ハッピーソングです。

……やはり止める必要はないですね。どこまでも突き抜けていけ! 本橋依央利!!

そんなふわっふわに酩酊している依央利に、浮遊感と疾走感のあるジャズがよく似合う。上の肺胞肺胞のところなんてウキウキすぎて気持ちよすぎます。2番でそれぞれの楽器が「みっつ 見返り~」の前に合わさるセッション感もたまらないですね。依央利と奉仕のセッションでボルテージが高まっていくのを感じます(?)。ところどころ鳴る銅鑼のジャーンとか笛のピーヒョロがユニークで笑ってしまうけどかわいい。この曲も色んな楽器が色んな場所で鳴っていて本当に楽しいです。

中華テイストなのはなんでなんだろう。中国……奴隷……犬……なんだか不穏な話になりそうなのでやめておきますね(汗)。曲の方の中華要素は「熱烈的中華飯店」のBGMっぽいと思いました。『蛎皇三頭鮑〜美味讃礼』『金_炸菜炒肉絲~Cooking man』とか。ちゃんと聴いたら他にもありそう。料理上手な依央利にぴったりですね。


LONE WOLF

作詞:Yuta Kobayashi 作曲・編曲:PRAISE
歌:猿川 慧


ラップがかっけえ。ラップが、かっけえ。ラップが……かっけえ……!! 猿川はカリスマ三部作でもロックな曲調のアレンジがされていましたが、カリブレ曲もめちゃくちゃかっこいいミクスチャー・ロックで来ましたね。抵抗と言ったらロックかHIPHOPかみたいなところありますもんね。欲張りセットですね。ハードな中にもどこか寂寥感を感じさせるバンドサウンドに乗せて、生きづれえ世の中で自分を貫く猿川の真っすぐな歌詞が胸にしみます。ラップもオラオラ感はありつつめっちゃ踏みまくってる。かっこいいな。

作詞のYuta Kobayashiさんはこの曲についてこう語っていました。

孤独と反発。でもどこかに優しさが見え隠れする彼はとても不器用な奴。自分もそんな気持ちで今回書きました。

優しさって意外と伝わらねーけど、信じる心をこっちからは捨てたくないよな。わかるぞ猿川!

猿川、愛されてますね! こうして制作陣の曲やキャラクターに対する思いを聞けるのは本当にありがたいし楽しいです。

社会への怒りをラップにのせたミクスチャーといえば、Rage Against The Machine(レイジ)が思い浮かびます。ラップのフロウや最後の方でバックミュージックが消えて語り(?)が入るところなんかはレイジの代表曲『Guerrilla Radio』(1999)を感じました。サウンドは初期のリンキンっぽいけど。

オマージュは他にもありそうな気がするので、また思いついたら追記するかもしれません。ただの願望だけどどうせならUKロック(イギリス)も入っててほしい。レイジもリンキンもUS(アメリカ)だから。

それにしてもほんと猿川は気持ちのいい攻めたラップをしますね。

何の 構える
余計な優しさなら断つだけ
中うなされ 止まらぬ寝汗
からは覚め 窓の外 
足早に駆ける 人混みを避け
揶揄(からか)われてもどこ吹く
ざわつく 弱さを捨て
これは俺が俺である為に生きてく術(すべ)

韻の連打大好きクラブ永久会員なのでまた連打の話になってしまうんですが、ここの/e/のノリやすい連打とリリカルな情景描写が好きです。「窓の外 雨」とか猿川の外界との隔絶や孤独を感じられて切ないけどめっちゃ好き。

「人生は常に想定外~」で上下に振ってからの「ひとりで居れば捨てられねぇんだ」のリズミカルなフロウもめっちゃ気持ちいい。なにその音の取り方。いやー猿川のラップマジで好きだな。

MVはかっこいいんだけど、「猿川にとってビッグベンは何なんだよ」と思ってしまってちょっと面白い。塔がにょきにょき生えてくるの、「うみねこのなく頃に」でもありませんでしたっけ。いにしえのオタクですみません。共通の元ネタがあるのかな。

狼男だからロンドンなんですかね。トラックにも狼の遠吠えみたいな音入ってるのオシャレだな。イントロでもガオーって言ってますね。


VIVA LA LIBERATION

作詞:岩里祐穂・月蝕會議 作曲・編曲:月蝕會議
歌:天堂天彦


ヒプマイではおなじみ月蝕會議の提供曲。イケブクロの曲を中心に提供されている音楽クリエイターギルドバンドです。

『おつカリスマ! 忘年会』ではラテン風のアレンジに合わせて情熱的に歌っていた天彦。やはりラテンの文脈があるのか、歌詞や曲名にスペイン語の「Viva(万歳)」が多用されていますね。今調べてて知ったけど「viva la vida」で人生万歳って意味らしい。歌詞には入ってないけどこの曲っぽい。

しかし曲調はインド。てかボリウッド。ノリノリなダンスミュージックに体が勝手に踊ってしまいますね。でもボリウッドのノり方がわからない。首のアイソレすればいいんでしょうか……?

笛かなにかの音や女性コーラスがあやしげな雰囲気を醸し出しつつ、天彦の力強い歌声がまさにリビドーを感じます(?)。ちょいちょい「Ah」って言うのもいいですね。とてもセクシーです。ズンズンなってるバスドラム(と言っていいのか?)も胸の鼓動、いや性の脈動に思えてきます(?)。

個人的なハイライトは突然迫りくるえげつねえダブステップです(あなたは全宇宙〜のところ)。爆笑しました。なんなんだよ。ボリウッドからそんなのくるとは思わないじゃん。

歌詞にフロイト主義が引用されているのはわかるんですが、宗教的なアレでインド思想も性と関係があるみたいですね。そのへんは難しくてよくわかりません(泣)勉強します。たぶんそのへんがわかるとこの曲がもっと楽しめるんだと思います。私はいまだにボボンガリンガなのかボリンガリンガなのかわからなくなります。

頑張ってオマージュ元を探してみようかとも思ったんですが、マジで無知すぎるので日本のインターネットでボリウッドとして有名なAshokの『Gola Gola』を貼っておきます。ちょっと似てるフレーズもありますね。

余談ですが『VIVA LA LIBERATION』でのボリウッドとダブステップの組み合わせが面白すぎてマッシュアップを探してみるなどしました。とてもよかったです。ボリウッドもちゃんと勉強しよっと。


雪解

作詞・作曲・編曲:Ryu (Ryu Matsuyama)
Ryu Matsuyama by the courtesy of VAP Inc.
歌:湊 大瀬


大瀬の柔らかい伸びやかな歌声と無機質なオートチューンが印象的なバラード。コーラスの広がりがMVの雄大な氷河を思わせて気持ちいいです。要所要所に入る大瀬のセリフも切なくて泣けます。

曲提供のRyuさんが所属するRyu Matsuyamaはピアノスリーピースバンド。『雪解』でもゆったりとしたピアノが美しく響いていますね。

そしてとにかく高音がすげえ。男声でここまで出せるのすごくないですか。何オクターブ? コーラスもすごいきれい。何人くらい重なってるんだろう。この手の曲の聴き方に関して知識が不足しすぎてて気になることばっかりになってしまう。勉強します……。

ときどき電子音が左右に揺れて出てくるのが波紋みたいできれいです。「聞こえる」のところはいろんなところにいっぱい大瀬くんがいて耳が幸せ。

今までMVで出てきた動物シリーズがここで意味を持って出てくるのもニクい演出ですね。大瀬、できればカリスマのまま幸せになってくれ。カリスマではいてくれ。

これもオマージュがあるとしたら合唱曲とか少年合唱団とか讃美歌、鎮魂歌かなあ? とあたりをつけて探してみようとしましたが、普通に範囲広すぎるし知識ゼロから探すとか無理でした。いつか思いついたら追記します。知ってる方がいたら教えてください。


When The Charisma Go Marching In

作詞: Ma-Nu
作曲: Mori Zentaro, Ma-Nu
編曲: Mori Zentaro
歌:伊藤ふみや


ヒプマイの左馬刻&簓のデュエット曲『Double Trouble』を手がけたチームによる、ダークなトラップビート。はいトラップ来ました。実家のような安心感ですね。

心地良い重低音ベースと畳みかけるようなハイハットの上では、日本の童謡『さくらさくら』のようなリフレインが聴こえます。マイナーコードのミステリアスな旋律が重厚なトラックのアクセントとなり、伊藤ふみやの哲学ゾーン(あの背景黒くなるやつ。便宜的に勝手に命名)に引き込まれるような感覚になりますね。イントロとアウトロのときいろんな場所でポンポン鳴ってるのはお琴のイメージだったりするのかな。曲の終わりにかけてコーラスが盛り上がってくるのもラスボス感があってかっこいいです。

正直カリスマ三部作を聴いてからカリブレ曲を聴き始めるまでは、こういうダークな曲は大瀬が担当なのかなって思ってました。なんとなく暗めのポエトリーなのかなと。ふみや、猿川、大瀬がラップ担当だと思ってた。でもこういうヘビーで腹の奥にクる伊藤ふみやもいいですね。タイトルは聖者の行進と正邪をかけたらしいです。かっこいい。

この曲でも相変わらず伊藤ふみやのリリックは韻が固ぇんだ。この曲は最初から最後までガッチガチで好きなところっていうと全部になりそうなので、一か所だけにします。

間に合わせのエモーション set me free
チラつかしまた肩透かし食らい水増し
嘆くミスマッチ so many楽観視
流され加担し振り返れば心許ない轍(わだち)
必要悪自ら手を繋ぎ never too much
気にも留めないようにアイキャッチ

はえ~すっごい……。ガッチガチ。とりあえず/i/に関連してるやつだけ太字にしました。特にチラつかし・肩透かし・食らい・水増しの隙のなさすごい。スローなテンポで気づいたらじわじわ韻の連打に巻き込まれてて、「まだいけるのかよ⁉ いつ終わるの⁉」ってなる蟻地獄みたいなラップがすごい好きなんですけど、この伊藤ふみやはもう完璧ですね。「気にも留めないようにアイキャッチ」の落とし方もかっこよすぎる。

ライミングといえばここのリリックもめちゃめちゃ食らったので語らせてください。一か所に絞るとか無理でした。

ちょっと色が足りなくて若干雑ですが、とりあえず対応させているであろうところを色分けしたので感じ取ってください! この緻密な構成を!

「心すり減らす クリアランス」を中心に美しいまでに韻が敷き詰められています。「澄み渡る」から4~5文字で固く踏んでいって、「クリアランス」から「ン」を足して、2文字目から音をとって「We are」そして「キーマン」へと続く……。それと同時進行で文章の頭では「余生」からガッチリ踏んでいます。複雑でありながらも整然とした規則性を持つライミングには、音の論理性とでも言いたくなるような迫力があります。

そんな緻密な韻を淡々と追い詰めるように繰り出す様は、まさにドラマで持論を展開する伊藤ふみやさながら!! 聴いていると「えっ何々どうなってるの?」と困惑すらしてしまうこのバースを聞くたびに、「ふみやに説き伏せられるのはこんな気分なんだろうなー」と思いを馳せてしまいます。そんで最後「奪うか奪われるか 凡人かカリスマ」の/ka/にアクセント置いたパンチラインでしめるのもかっこいい。最後にちょっと山なりのフロウでswag見せつけてくるの(?)たまりませんね。

ていうかMVが『ブレードランナー』みたいなサイバーパンクなのずるすぎませんか。ずるいよ。かっこよすぎるよ。日本語と英語と中国語と韓国語と英語が見えるここはどこなんだ。さくらさくらだから日本か。AKIRAの方だったか。

カプセルでシミュレーション仮説を匂わせておいて最後爆破オチなのはちょっと笑ってしまいました。カプセルやメカなどMVの全体的な印象は『マトリックス』を思い出しますね。やはりサイバーパンク。そもそもサイバーパンクの始祖的存在である『ニューロマンサー』の舞台が千葉だし、やはり日本がテーマなのかな。日本というお題でサイバーパンクを持ってくるセンス、超いいですね。


神の領域

作詞:及川眠子 作曲・編曲:R・O・N
歌唱:七人のカリスマ


ヒプマイでは『T.D.D LEGEND』の作曲・編曲を手掛けたR・O・Nさんが作曲・編曲を担当。

『神の領域(リージョン)』はその名の通り神々しいイントロから一転、明るくなったりハードになったりするハウス系のEDMっぽいボーカル曲です。歌のメロディは全体的に90年代のロボットアニメっぽいけど、サビはゴリゴリのEDM。フューチャーハウスっぽい。明るく広がりのあるプレコーラスからそのまま突き抜けると思いきや、まさに「ドロップ」って感じで落ちる。階段踏み外したかと思うレベル。さっきまで大人しかったベースやミドルベースたちが暴れ狂ってる。しかもなんか1拍ブレイク入ってる。そのせいで拍の取り方わからなくなる。サビの途中で入ってくるシンセにも惑わされる。なんなんだ。

正直トラック的な意味ではカリスマ三部作よりやばい曲だと思った。なんかすごい……すごい曲だと思いました。全然読めなくて。そんなわからなさもなんか『カリスマ』っぽくていいですね。訓練されてきました。

って思ってたら案の定声優の方々もレコーディング難しかったみたいで笑ってしまいました。

歌詞がすごくいいですよね。さすが『残酷な天使のテーゼ』『魂のルフラン』を手がけた大ベテラン・及川眠子さん。この曲の歌詞についてはもう過去の記事を見てもらった方が早いので以下の記事を見てください。


カリスマっていいな

作詞・作曲・編曲:CHI-MEY
Containing cover of “にんげんっていいな”
作詞:山口あかり 作曲:小林亜星 ©愛プロ
歌唱:七人のカリスマ
コーラスのお友達:すがも児童合唱団と近所のお友達


これの話も上に貼った記事でしました。1stシーズンのエンディングであり、本作のエンディングも飾る曲ですね。寸劇のネタバレになるので詳しくは言えませんが、「おかえり」「ばいばいばい!」って言いたくなる曲です。ぜひCDで聴いてください。『めちゃめちゃカリスマ』のCHI-MEYさんが提供。

基本的に原曲に忠実な替え歌なのに、無理やりラップねじ込んでくるあたり好きすぎる。また開いた・瞬いた、めっちゃ気持ちいい。

どうでもいいけどワンピースEDのところ、カラオケのオケっぽくなるの元ネタに合わせてるのかと思ったら別にそんなわけでもないんですね。


……というわけで終わりにします。ここまで読んでくださってありがとうございました!!
近くにまだ『カリスマ ワールド』を手に入れていない人がいたらぜひぜひこの記事(てか記事の前半)を共有してください。もし読んでいるあなたが持っていないなら今すぐに手に入れなければなりません。

全人類カリスマブレイク!

カリスマ公式サイトのミュージックページのスクリーンショット。アルバムのジャケットが掲載されている。
『カリスマ』公式サイト - MUSIC


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