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何かがおかしい女の子『推し、燃ゆ』

こんにちは、オマンです。
今回は第164回芥川賞を受賞した今一番知られている本を紹介したいと思います。

アイドルに夢中になる経験をしているか、していないかでこの本の価値基準が大きく変わると考えます。
また、抽象的な言葉である「かわいい」を根本から理解するのに大いに役立てることができる本であります。

1. 紹介する本

『推し、燃ゆ』[著]宇佐見 りん

2. 感想

炎上して世間から厳しいバッシングを受けているアイドルとそのアイドルに魅せられている高校生の女の子が炎上をきっかけに一般的な私生活が崩れ落ちる様がリアルに描かれています。

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「推し」には不思議な魔力が存在しており、愛情でも友情でも慕情でもない特別な繋がりを持っておりません。そのため、このような存在はいわば神のような存在であります。
そのため、「推し」に対して「かわいい」を越えた信仰心を持つ感情である「尊い」という言葉が生まれてきたのがと考えられます。

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女の子には発達障害のような行動が多く見受けられます。
その行動が
・簡単な漢字、九九、アルファベットが覚えられない
・人の話に耳を貸さずに別の行動をする
・メモしたにもかかわらず忘れ物をする
・やかんを火にかけているのを忘れて別のことに没頭する
・汚れている食器を数週間放置している

これが「何かがおかしい女の子」の原因であると思われます。
作中でも病院の受診を勧められて病名がつく病気を診断されたシーン、診断書の提出をお願いされているシーンがあったので、直接は書かれていないものの発達障害と推察させられるような内容が含まれています。

これらの行動や言動を障害者の3文字で片付けてしまうのはあまりにも気持ちが悪いと感じます。
当事者ではないので分かりませんが、自身の行動を無理矢理にでも正当化させて学校や世間の評価を気にしていないことは、この女の子の個性や感性であって障害とはあまり関わりがないように思います。
障害を言い訳にして自分から行動しなかったり、やらなければいけないことを他人任せにしていたりとことは、ただ単に怠惰な人消極的な人のように思えます。

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推しは自分の気持ちを輝かせ、意思を決定する頼りになる程よい距離から支えになっています。その距離は自分の「推し」を推している限り、推しは続いているものです。そのため、消極的な人や主人公のような否定的な人はアイドルなどの「推し」に魅了されるのではないかと思います。

アイドルは必ずと言ってもいいほど卒業というものがあります。卒業は自身を肯定してくれる存在(推し)が消えてしまい自分の存在意義がなくなってしまうことと同意義になると本書で語っているような気がします。

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著者と主人公の年齢が近いので、高校生が考浮かぶような日常の会話や両親に対する感情が鮮明に表現されています。

アイドルを推している人(特に女性)に共感できるような内容が多く含まれ、主人公の繊細な気持ちから些細な物事まで綺麗に表現されているので、ぜひ読んでみてください!

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