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故郷の桜@小説noteでお花見

#お花見note

4月30日までのこちらの企画に
もう一度参加させて頂こうと思います


***

風がひとひらの花びらを運んできた。
私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。

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河川沿いの桜並木と河の上を泳ぐ鯉のぼりが映し出される画面の下に流れる文字が、音楽に合わせ色を変えてゆくのを目で追いながら

「この歌、カラオケがあったんだ」とつぶやいていた

「はっ? 部長 何言ってんですか 自分で入れといて~」
と、ほろ酔いの西田くんがケラケラと笑いながら言ったと思ったら
少し真顔で
「でもぉ 今年も桜見れなかったな・・・」
と、画面の桜に見入っている


赤道にほど近いこの国には桜はない
私たち開発チームがここに派遣されて2年になるが
桜の季節に日本に帰るのはなかなか難しい
この娯楽室はそんなチームメンバーのオアシスといったところだ

「そーだ、部長 来週帰国じゃないですか!
桜、間に合うんじゃないですか?」
西田くんが恨めしそうに言う

「それが 今年の桜は早いらしいよ」
昨日、娘からの電話でそう聞いて私も少しがっかりしたところだった

「まぁ 桜より綺麗な花 見れますもんね!
ダメですよ、ウェディングドレス姿見て泣いたりしちゃぁ~」
今度はニヤニヤしながら涙を拭く真似をする西田くんの肩に
「ははは・・」と笑い、ツッコミを入れながら思う

本当に早かったな 桜の下で得意げにランドセルを背負っていた娘が来週には花嫁になるんだから
「お父さん来年は日本の桜みれるかもよ」と切り出した結婚の報告に
正直、嬉しさより寂しさの方が大きかった
離れているからかな、と自分に言い訳をした
でも心から幸せになって欲しいといつもいつも願っている


「部長 歌 唄わないんですか?」

と言う西田くんの声で
私は画面の中の満開の桜を眺めた。

さくら1


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お読み頂きありがとうございました

今回yuca.さんの企画に参加して
沢山の方の作品に触れることができました
本当に素敵な企画をありがとうございました♡






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