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《育休》制度が整って、運用も万全で、自身の将来が保証されているなら…

おおかみが育休に興味を持ち始めたのは30年近く前
当時は制度もショボかったうえに、資料がほとんど出回っておらず

特に男性が取得する場合なんて、情報が皆無

しかたなしに直接人事に問い合わせ。だけど、そこにも情報がなかったり
そのときに、会社のルールってのは運用の細かいところは文書化されておらず、結局のところ担当者の胸三寸で決まることが多々あると学ぶ

手間暇時間をかけ「これならいける!」と満を持して取得した育休
それでも、調べていた通りに事が運ばないこともあり、制度が変わることもあり

思ってたんと違うことは多々あったけれど、育休取得から19年経ち、会社をリタイヤした今になって思う
制度の不十分さや運用の不安に負けず、あの日あの時あの場所で育休を取得しておいてよかったな…と

今回は育休の制度運用についての、ほろ苦い体験談


おおかみが育休を取得するのと前後して、男性の育休取得を促進すべく、人事部が新しい制度をつくった

ニュースにもなったので、そのときのナレーションを引用しよう
箱の中はNHKのアナウンサーになったつもりで読んで欲しい

この会社では直近2年間の働きぶりを元に昇格を決めています

この間に育休を取ると評価が低くなってしまいます

そこでその分をさかのぼって評価の対象に加え、通算2年間で判断
昇格で不利にならないよう配慮しました

今日の世界 経済最前線 2005年3月16日放送

この制度ができる前、育休を取得すると、2年間の間に評価のない空白期間が出来てしまうので、昇格的には振り出しに戻ってた

育休があけた次の年度から、また2年間実績を積み重ねなければ昇格できない
その間にまたこどもが出来て、育休をとったら、またそこから2年…
実際には年度の区切れがあるので、2年以上は昇格の可能性0だったわけ

これが男性育休の足かせになっていると考えた人事は、上記制度を制定
これならば、育休分の遅れはあるが、それ以上の遅れはなくなる
1年間育休を取得したら、昇格が1年遅れるだけ

すんばらしい。さすがプラチナくるみん企業

…ホントのところは女性管理職を増やすためだったのかも知れないけど
まあ、男性育休にもメリットがあるから、ニュースでアピールするには格好のネタだった

このニュースでは会社名も出して、人事部長もドヤ顔アップでドド~ンと出演していた

ので、この会社でこういう制度があることは世間に認知された…ハズだった


おおかみの育休があけて数ヶ月後、職場懇談会が開催された
そこで若手男性社員からこんな質問が出た

「育休を取ると、やっぱり昇格には影響がありますよね?」

事業部長曰く
「それは仕方がないでしょう」

そこでおおかみは、おそるおそるテレビで放送されていたへー社の制度を説明した

すると

事業部長「そんなことはないでしょう」

…まあ、事業部長はそんな人事制度の細かいこと気にしてられないのは、やむを得ない。そんなもんでしょ

そして事業部の事務方、こしさんに確認する

事業部長「ねぇ、越さん」
越さん「そうですね、そんなハズはありませんね」

…おいおい、越、何を根拠に…

でも、まあ、こんなものである
結局「人事に確認しておきますネ」のひと言すら出てこなかった


誤解の無いように書いておくと、事業部長はダイバーシティに強い関心を持っている女性で、育児をしながらの仕事にも深い理解があった

たとえば、おおかみは当時全社的には認められていなかった在宅勤務を、事業部ルールで週4日も実施させてもらってた
事業部長が人事に掛け合ってローカルルールを認めさせたのだ

本当にありがたかった。感謝感激雨嵐

でも…そんな事業部長でさえ、人事制度に追従しきれなかったし、思い込みの壁を破れなかった。いわんや部下の中間管理職をや

制度をつくったとしても、それを運用するにはまた高くて長い壁がある

もちろん、事業を司る長の仕事は多忙だ。人事制度に精通していないのはやむを得ない。それをカバーできない事業部のシステムが元凶


制度は作った人が運用する訳じゃあない
そうなると、周知して正しく運用されるまでにはタイムロスが発生する

これまでの会社/社会の常識と異なる制度なら、なおさら

手当のようにシステマティックにできるものならまだしも、評価のように人の手が介在するものは、制度が変わっても、その主旨に則って運用され、結果がでるまでには、ヤマトはイスカンダルから帰ってくるし、三千里を歩いたマルコは母と感動の対面を果たすし、999は…(以下略)


育休を取るにあたって、制度を知って、使えるものは使い倒すことで、育休ライフはランクアップする。もちろんそれは大切

けれども、制度がしっかりして、正しく運用されていることに拘ると、大切なことを見落とさないか心配

大切なのは、こどもとの時間
こどもとの時間は待ったなしだ


職場懇談会に話をもどそう

周囲の若手社員からの「がんばれ~」オーラが室内に充満していたにも関わらず、おおかみ、事業部長にも、越さんにも反論せず

おおかみ「あ~そないでっかぁ~すんません~」

って感じで引き下がった

ヤンキースタジアムで大谷選手に向けられるようなブーイングが聞こえた
心の声だけど。そんな大物じゃないけど

たぶん、おおかみも育休取得前だったら、最後まで食い下がってた
そして運用が改善されなかったら…どうしたかな?

わからない、わからないけど、これだけは確信をもって言える
もし運用が改善されなくて、それで育休を取らなかったら、今頃まちがいなく後悔しまくってた

おおかみにとっては、育休取得前に人事の頑張りだけが見えていて、運用の壁が見えていなかったのは、とても幸運なことだった


もし、制度が整って、運用も万全で、自身の将来が保証されているなら…と考えている人がいたら、一言だけ


そんな保証は…ない
いつまで経っても…


読んでくれただけでも感謝感激😊 もしサポートいただけたら、年金の足しにします(まだもらえないけど…)