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宮島・オブ・ワンダー

 自らが住む地域の観光名所にはなかなか立ち寄らないものだ。僕のような京都の人間が日常的に清水寺や金閣寺に行くかといえば、引っ越して来て1ヶ月の間に銀閣寺と建仁寺に行ってみた程度だし、かつて広島県民だった僕が宮島が遊び場だったかというと、いうまでもなく僕の遊び場はライブハウスや楽器店、あるいはラウンドワンのような場所だった。

 しかし、離れた土地から広島に訪れ、どこで遊ぶかというと、多くの場合は尾道や宮島だったりする。5月某日、恋人と一緒に僕の故郷である広島へ遊びにいき、高校時代から今も腐れ縁と言いながら親友と呼んでいるフクナガ(愛人疑惑まであるフクナガ)と3人で宮島へ行った。宮島に生息する生物としては鹿が圧倒的な人気を誇っているが、船で向かう途中に運が良ければスナメリを見ることができるかもしれないらしい。といっても、もし野生のスナメリを発見できれば中国新聞で取り上げられるような、数十年ぶりのビッグニュースなわけで、もちろんスナメリなんかいないとわかっていながら、それでも探すことがなんだか楽しくて、船から身を乗り出していた。

 案の定スナメリに会うことはできず(もう少し乗船時間が長ければ会えたかもしれない)、下船すれば僕らが目指すのはミヤジマリンという水族館だ。その途中に牡蠣を焼いたものを食べたり、もみじまんじゅうを揚げたのを食べたり、宮島ビールを飲んだり、寄り道をしながらそれらしき建築物が見えてくる。

 町中華で2品と瓶ビールを注文できるくらいの値段を払ってチケットを買うと、いきなり水槽があって、海鼠とか魚が泳いでいる。ここで困ったのは、僕の恋人は大の生き物好き、フクナガは自らギギという川魚を買っているほどの魚付きであるため、テンションについていくことができない。僕は魚に詳しくないどころか、水族館の中で識別できるのはウツボとエイと、貼ってあった交通安全か何かのポスターの大瀬良大地(広島東洋カープのエース)くらいだった。それでも魚は可愛いと思うし、アシカショーはなかなか愉快なものであった。観客が輪を投げてアシカがキャッチするという催しがあった。参加して、輪を明後日の方向にぶん投げると、アシカはどんな顔をしてコチラを見てくるのか、少し興味が湧いたけれど、観客全員から顰蹙を買いかねないので、僕の理性の部分がその興味を噛み殺した。野生ではないけれど、飼い慣らされたスナメリもきちんと水槽の中を泳いでいた。

 今、宮島のトレードマークである大きな鳥居は改修工事真っ最中だ。4年前くらいから大きな布で覆われ、その姿は見えない。もう少したち、工事が終わって布が取り外された時、まるで手品のように鳥居がなくなっているかもね、そして中国の方に似たような鳥居が建っているかもね、なんて話をフクナガとしながら、宮島で食べる穴子のお店で飲む瓶ビールは絶品だった。ついでにアナゴ丼も絶品だった。

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