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下鴨さんの古本まつり

京都に来て、お盆の時期に下鴨神社で古本まつりが行われていることは、本好きとして当たり前のように知っていたけれど、予定が合わなかったのか、実際に足を運ぼうと決意をしなかったのか、理由はよく分からないけれど、京都生活4年目にして初めて、連れに誘われて、下鴨神社の古本まつりを訪れた。

森見登美彦の小説にはきっと出てきているだろう、糺の森の道の両端にテントを構え、関西を中心とした各地の古本屋さんが、各々好きなように古本を並べ、積み重ね、販売している。そんな古本まつりは本好きのワンダーランドである。

まずは、風情のある、京都的な、ベンチに赤い布がかけられているような喫茶店で連れは抹茶のかき氷を食べ、僕は小豆のアイスを食べた。こんな古風な喫茶店の小豆アイスを、コンビニで売っているようなあずきバーと比較するのは野暮だと思って僕は口にするのを躊躇ったけれど、連れは早々に「あずきバーと似た味だ」なんていい、そんな所で少々盛り上がり、いざ古本まつりへ臨む。

結果から言うと、僕は7冊の本と、4枚のレコード、ひとつの映画のDVDを手に入れた。

本たち
レコードたち

編集者、俳優、映画監督、グルメ、様々な顔を持つ伊丹十三をPOPEYEか何かの雑誌で知り、『女たちよ』というエッセイ本を買ったのは、僕がいま店番をする誠光社だ。それから伊丹十三の本を読み、俳優としての出演作や監督映画を鑑賞し、1人のファンとなった僕は伊丹十三の本を買わない訳には行かないと思い、ちらっと見かけた伊丹十三の『日本世間噺大系』を100円で買った。

単行本は2冊で500円、文庫本は3冊で500円というお店であるならば、きっちりと単行本を2冊、文庫本を3冊買いたくなる僕は、きっちりと単行本を2冊、文庫本を3冊購入した。そのラインナップは、美術手帖の『世界デザイン史』と村上春樹の『若い読者のための短編小説案内』、『ジャズ ベスト・レコード・コレクション』と文庫本の体をした雑誌『in pocket 〈特集〉ショートショート大会』、連れのために同じく『in pocketの裁判傍聴特集』を買い、代わりに連れには、古き良きデザインがなされたマッチ箱の図録を買ってもらった。あとはハワード・ホークスの『ハタリ』という映画のDVD、そして全て均一100円という、利益が取れるのか不安になるようなお店でレコードを4枚、浜田省吾と荒井由実とあとはジャケ買いで知らないアーティストのレコードを買った。滞在した1時間半程の時間のうち、半分以上はレコードを漁っていたように思う。そんなところだ。

ジワジワと暑い夏に、古本やレコードを漁るというのはなかなか汗をかく。季節は関係なく、屋外で古本やレコードを漁っていると手は砂っぽくザラザラとしてくる。それでも、僕は漁るという行為は、一種の宝探しのようで、こんなものに興味のない人からすればガラクタ同然の様なものたちの中から、自分にとって光り輝く、そして有益なもの達をいかにお金をかけずに家へと持って帰るかと考えれば、頭を回転させ、体を動かし、そこら辺をフラフラジョギングするくらいには労力を使ってしまう。古本市でも、レコードフェアでも、蚤の市でもこれは同じことだ。買い物はスポーツだと言える。

その後に立ち寄ったかもがわカフェのマスターは、下鴨の古本まつりへ行くとクラクラしてしまうと言っていた。お盆の時期に、古いもの、しかも本だけではなくて古い人間の日記などが並べられていると、先祖の幽霊とかそんなものが集まっているのだと言う。それで、他の古本市やレコードフェアとは違い、何かと特別なものを感じるというのだ。僕はもちろんそんなものを感じる暇もなく本の表紙と背表紙を眺め、レコードを手に取ってはあった場所に戻し、店から店まで忙しく動いていたからそんなものは感じなかったけれども、もしかすると本やレコードと一緒に幽霊を連れて帰っているのかもしれない。そんなものなのだろうか。

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