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日本で現役最古の商標の話

 日本で登録番号1番になった商標のことを思い出した。確か,薬を指定商品とするもので,指を包丁で切った丁稚(商家に奉公する少年)のイラストだったはず。ネタにしようと思ってデータベースを検索したところ,すでに記録になく,権利消滅しているようだった。

 今でも有効な日本最古の商標は何かと気になって検索してみると,明治23(1890)年7月31日出願の,みりんを指定商品とする「重九」(登録番号第521号)と判明。

 ヘッダーの写真はその登録商標。一升瓶のラベルをそのまま商標として出願したものだと思う。色合いや花柄もそうだけど,横書き文字を右側から読ませるのが,時代を感じさせる(読み方は「ここのえ」)。

 権利者は,九重味淋(味醂の誤字じゃないよ)株式会社。江戸時代中期に愛知県で創業して,明治時代にはヨーロッパやアメリカの博覧会にみりんを出品していたらしい。そんな時期から,みりんの海外販売を考えていたとはすごい。

 何より感心したのは,商標と同じデザインの木製看板があって,その写真をホームページに掲載していること(https://kokonoe.co.jp/meet01)。最古の商標は,現在も現役と言っていいでしょう。

 時代の流行によって商品パッケージや商標が変わるのは当然だけど,一方で,企業のアイデンティティーになるような世代を超えて生き続けるデザインや商標に携われたら幸せだと思った。

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