O2R

”O2R”(o2r.legalアットマークgmail.com)です。都内で弁護士をして…

O2R

”O2R”(o2r.legalアットマークgmail.com)です。都内で弁護士をしています。ウェブとシステムの契約まわり,ECサイトの法律問題,商標・著作権・情報通信の法律問題,その他企業法務を扱っています。とりとめもなく記事を上げていくので,よろしくお願いしますm(_ _)m

マガジン

  • レストラン店名の危機

    のれん分け,商標譲渡,先利用権,商品・役務の指定漏れ,警告書への対処法などをテーマに,ドラマ仕立ての対話形式にまとめました。読み物感覚で楽しんでもらえれば嬉しいです。

  • 会社名と商標

    会社略称(商号のうち株式会社等の部分を除いたもの)を商標登録する場合に気をつけることや,商標登録できない場合の対処法などを,対話形式でまとめました。軽い読みもの感覚で読んでもらえれば,嬉しいです。

最近の記事

小学生に文明と文化の違いを尋ねる

自分が子供の頃,歴史ある高校の校長先生が近所に住んでいた。その校長先生は,学校名から「館長先生」と呼ばれていた。自分の父と館長先生が友人で,館長先生の自宅に遊びに行くことが何度もあった。 館長先生は,「我が子を悪い子に育てる法」だったようなタイトルの育児書を差し出しながら,「これを読んで悪い子になれ」と言って当時小学生の自分にプレゼントしてくれるような個性的な人だった。この本は,世間一般では子育て失敗とされる事例を,素晴らしい先例として紹介するという皮肉たっぷりの内容だった

    • 「君,ずるいね。」

      中学受験する息子のために各校の説明会に参加している。しばらくオンライン開催ばかりだったが,校舎に足を運んで生徒や教員に触れることで初めて感じとれるものがある。コロナ感染者が減少してきたので,対面での説明会を再開する男子校を訪れた。 校長先生の話が長い。30分は話していただろうか。その中で,一つ気になるエピソードがあった。 校長先生は,ノーベル賞を受賞した科学者の講演会に参加したことがあったそうだ。講演後,30代に見える受講者が,「研究が成功するコツは何か」旨の質問をした。

      • ペット撮影と商標(その3完)

        ■商標が無事登録される(前回の打ち合わせから約2年後のウェブ会議) O2R「時間がかかりましたが,先願『PETGRAN』の登録を取り消して,『ペットグラム\PETGRAM』を登録することができました。こちらが登録証原本です。後ほど郵送します。」 Aさん「ありがとうございました。ところで,SEO対策をお願いしているエンジニアから,『ペットグラム』を検索してうちのサイトに来る人が大幅に増えたって話でね。お客さんの中にインフルエンサーがいたらしくて,うちで撮影した写真をSNSに

        • ペット撮影と商標(その2)

          ■類似先願の存在(前回の打ち合わせから1週間後のビデオ会議。最初は契約書について協議。) O2R「では,撮影した写真を御社の宣伝に使うことができる規定を加えて後ほどお送りします。後は,現行案のとおりでいきましょう。」 Aさん「よろしくお願いします。」 O2R「次に,商標の先願調査結果についてです。41類で『ペットグラム』に類似している先願商標として,同じ41類の『PETGRAN』(注・設定上の架空商標です)が見つかりました。」 Aさん「『ペットグラム』ではなくて『ペッ

        小学生に文明と文化の違いを尋ねる

        マガジン

        • レストラン店名の危機
          10本
        • 会社名と商標
          10本

        記事

          ペット撮影と商標(その1)

          ■新しいビジネスの萌芽(挙式前のブライダル写真などを撮影しているカメラマンAさんとのウェブ会議。) Aさん「この前,ペットと一緒に写りたいというお客さんがいたんで,会場に許可もらって撮影したら,いい写真が撮れてね。」 O2R「(写真を見て)チワワのおかげか,よくあるブライダル写真よりも笑顔が自然で,リラックスしてる雰囲気が伝わります。これは新郎新婦も喜んだんじゃないですか。」 Aさん「ええ,すごく感謝されたよ。お客さんに了解もらって,うちのホームページにアップしたら評判

          ペット撮影と商標(その1)

          レストラン店名の危機(その10完)

          ■示談前回の打ち合わせから数ヶ月。株式会社ソレイユと数度にわたる協議を経て,下記内容で示談が成立し覚書が交わされた。  1 株式会社ソレイユは,有限会社ソレイユが,東京都江戸川区内東小岩,西小岩,南小岩及び北小岩において,飲食物の提供という役務の出所を表す標章として『キッチンソレイユ』を使用すること,及び日本全国においてその広告宣伝を行うことに対し,登録番号○○号の商標権及びこれに類似する商標権に基づく権利主張を行わない。  2 有限会社ソレイユは,株式会社ソレイユに対し,

          レストラン店名の危機(その10完)

          レストラン店名の危機(その9)

          ■あらすじと登場人物 登録商標「SOLEIL」の権利者である(株)ソレイユから,洋食レストラン「キッチンソレイユ」の名称を変更するよう警告書を送られたAさん。これに対し「キッチンソレイユ」は,(株)ソレイユと改称する前の太陽食品(株)からのれん分けを受けたものであり,また「キッチンソレイユ」には先使用権があるという趣旨の回答書を送った。すると,(株)ソレイユから証拠を見せろという返事が届いた。更なる反論の余地はあるのか。  【Aさん】:今回の相談者。有限会社ソレイユの現代表

          レストラン店名の危機(その9)

          レストラン店名の危機(その8)

          ■あらすじと登場人物 登録商標「SOLEIL」の権利者である(株)ソレイユから,洋食レストラン「キッチンソレイユ」の名称を変更するよう警告書を送られたAさん。これに対し「キッチンソレイユ」は,(株)ソレイユと改称する前の太陽食品(株)からのれん分けを受けたものであり,また「キッチンソレイユ」には先使用権があるという趣旨の回答書を送ったところ,証拠を見せろという返事が届いた。  【Aさん】:今回の相談者。有限会社ソレイユの現代表で,洋食レストランの「キッチンソレイユ」を経営。

          レストラン店名の危機(その8)

          レストラン店名の危機(その7)

          ■あらすじと登場人物 登録商標「SOLEIL」の権利者である(株)ソレイユから,洋食レストラン「キッチンソレイユ」の名称を変更するよう警告書を送られたAさん。これに対し,「キッチンソレイユ」は,(株)ソレイユと改称する前の太陽食品(株)からのれん分けを受けたものであり,また「キッチンソレイユ」には先使用権があるという回答書を送った。  【Aさん】:今回の相談者。有限会社ソレイユの現代表で,洋食レストランの「キッチンソレイユ」を経営。  【先代】:Aさんの父親。「喫茶ソレイユ

          レストラン店名の危機(その7)

          レストラン店名の危機(その6)

          ■あらすじと登場人物 登録商標「SOLEIL」の権利者である株式会社ソレイユ(旧称・太陽食品株式会社)から,洋食レストラン「キッチンソレイユ」の名称を変更するよう警告書を送られたAさん。「キッチンソレイユ」は,太陽食品株式会社からのれん分けをしてもらったというが,その証拠はなかなか見つからない。そこで,他の方法を考えることに。  【Aさん】:今回の相談者。有限会社ソレイユの現代表で,洋食レストランの「キッチンソレイユ」を経営。  【先代】:Aさんの父親。約30年前,有限会社

          レストラン店名の危機(その6)

          レストラン店名の危機(その5)

          ■あらすじと登場人物 登録商標「SOLEIL」の権利者である(株)ソレイユから,洋食レストラン「キッチンソレイユ」の名称を変更するよう警告書を送られたAさん。しかし,商標「SOLEIL」は,元々別人が出願したものを,(株)ソレイユが買い取ったものだという。その背景とは?  【Aさん】:今回の相談者。有限会社ソレイユの現代表で,洋食レストランの「キッチンソレイユ」を経営。  【会長】:太陽食品株式会社を設立し,神田に「喫茶ソレイユ」を開店。すでに亡くなっている。  【Y専務

          レストラン店名の危機(その5)

          レストラン店名の危機(その4)

          ■あらすじと登場人物 登録商標「SOLEIL」の権利者である(株)ソレイユから,洋食レストラン「キッチンソレイユ」の名称を変更するよう警告書を送られたAさん。しかし,「キッチンソレイユ」は,(株)ソレイユと改称する前の太陽食品(株)からのれん分けを受けたのだという。はたして(株)ソレイユの元従業員Sさんはのれん分けを知っているのか。  【Aさん】:今回の相談者。有限会社ソレイユの現代表で,洋食レストランの「キッチンソレイユ」を経営。  【先代】:Aさんの父親。「喫茶ソレイユ

          レストラン店名の危機(その4)

          レストラン店名の危機(その3)

          ■あらすじと登場人物 登録商標「SOLEIL」の権利者である(株)ソレイユから,洋食レストラン「キッチンソレイユ」の名称を変更するよう警告書を送られたAさん。しかし,「キッチンソレイユ」は,(株)ソレイユと改称する前の太陽食品(株)からのれん分けを受けたのだという。果たしてのれん分けの証拠は見つかるのか。 【Aさん】:今回の相談者。有限会社ソレイユの現代表で,洋食レストランの「キッチンソレイユ」を経営。 【先代】:Aさんの父親。「喫茶ソレイユ」で修行後,有限会社ソレイユを設

          レストラン店名の危機(その3)

          レストラン店名の危機(その2)

          ■あらすじと登場人物登録商標「SOLEIL」の権利者である株式会社ソレイユから,洋食レストラン「キッチンソレイユ」の名称を変更するよう警告書を送られたAさん。しかし,「キッチンソレイユ」は「喫茶ソレイユ」からのれん分けをしてもらったという。そして,「喫茶ソレイユ」を経営していたのは,他ならぬ株式会社ソレイユだというのだが… 【Aさん】:今回の相談者。有限会社ソレイユの現代表で,洋食レストランの「キッチンソレイユ」を経営。 【先代】:Aさんの父親。「喫茶ソレイユ」で修行後,有

          レストラン店名の危機(その2)

          レストラン店名の危機(その1)

          (前回の連載「会社名と商標」では,会社名を元にしたオリジナルのサービス名を考えて商標登録をする話をしました。今回は,会社名を商標として使用したことで起きたトラブルの顛末についての物語です。この話は,実際の事例を換骨奪胎したフィクションで,実在する会社,お店及び商標とは関係ありません。) クライアントのFさんから電話。行きつけのレストラン「キッチンソレイユ」に警告書が届いたので相談に乗ってほしいとのこと。 レストラン店主のAさんと電話で話す。商標権を侵害しているから,店名を

          レストラン店名の危機(その1)

          日本で現役最古の商標の話

           日本で登録番号1番になった商標のことを思い出した。確か,薬を指定商品とするもので,指を包丁で切った丁稚(商家に奉公する少年)のイラストだったはず。ネタにしようと思ってデータベースを検索したところ,すでに記録になく,権利消滅しているようだった。  今でも有効な日本最古の商標は何かと気になって検索してみると,明治23(1890)年7月31日出願の,みりんを指定商品とする「重九」(登録番号第521号)と判明。  ヘッダーの写真はその登録商標。一升瓶のラベルをそのまま商標として

          日本で現役最古の商標の話