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<ペアリング研究会vol.2>リンゴ 2020/3/4

ニューヨークの食材とワインと合わせてみるペアリング研究会。(部員は私一人です笑) 第二弾として、ニューヨークの冬の風物詩である「リンゴ」との相性を試してみました。

 グリーンマーケット(地元の青空市場)でもスーパーでも、日本品種で有名なFujiを始め、Winesap、Gala、Empire、、、などと聞いたことのない様々な品種のリンゴが販売されています。それぞれ特徴があり、かたくてタルト向きとか、甘くて柔らかいものなどマーケットには少なくとも10種類以上の品々が並んでいます。

ニューヨークは、リンゴの生産量がアメリカトップ2位の州です(生産トップ1位はワシントン州)。色味の少ない冬のこの時期には、マーケットに並べられた色鮮やかな達なリンゴみると、ついつい手が伸びてしまいます。

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冬のマーケットには、リンゴから作られるアップルサイダーが並んで販売されています。アルコールが入っているタイプのサイダーは低アルコールの発泡酒のことを指します。日本ではフランス語のシードルの方が馴染みがある呼び名ではないでしょうか。このサイダー、ニューヨーカーにも大人気で、ワインショップには必ずサイダーコーナーがあるし、元旦に訪れたロングアイランドのワイナリー街道にも、リンゴ農園の前に「CIDER!」と大きく書いてある看板を見かけました。

サイダーの話はさて置き、そうやって購入したリンゴを家に持ち帰り、リンゴを使った料理とワインの組み合わせを試してみました。

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メニューは、リンゴとブルーチーズのキッシュと、チキンのリンゴクリーム煮。どちらもリンゴと相性の良いチーズをたっぷり使った料理です。そして、ワインは何を合わせようか悩んだあげく、ニューヨーク州フィンガーレイクスにあるKEUKA LAKE VINYARDSのワインを試すことにしました。見た目からしてリースリングかな?と思って購入したのですが、リースリングらしき単語は記載ありません。代わりにラベルの真ん中に、「VIGNOLES」と記載されています。なんだろう・・・と思い調べてみると、なんと初めて聞く品種名、しかもハイブリット品種※でした。

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(KEUKA LAKE VINEYARDSのハイブリッド品種VIGNOLES、2016年ヴィンテージ)

※ハイブリット品種とは、親同士の種族が違う品種をかけ合わせてできた交配種の事で、主にヨーロッパ品種とアメリカ品種をかけ合わせて生まれた品種の事を言います。発祥は19世紀、アメリカからもたらされたフィロキセラというブドウの樹を襲う害虫が大流行した時、フィロキセラに耐性のあるアメリカ品種とヨーロッパ品種をかけ合わすことで、病気へ対抗することが出来たという歴史です。しかし、ハイブリット品種はクオリティが低いとのことで、ヨーロッパの多くでは禁止、制限されています。一方、日本は結構ハイブリッド品種があって、例えば日本の固有品種のマスカット・ベーリーAが、ハイブリット品種にあたります。

このVIGNOLESという品種、栽培地域としてはニューヨーク州のフィンガーレイクスが最も有名だそう。というのも、1970年代にフィンガーレイクスのワイン団体によって名付けられたとのことです。ハイブリッド種について色々リサーチをしていると、どうやらここ数年、ハイブリッド品種についての研究が、アメリカのみならずヨーロッパでも活発に行われているのだそう。今まではクオリティが低く軽視されてきたハイブリット品種ですが、地球温暖化に対応できる品種や、農薬削減につながる、病気に抗体のある品種などが生み出せる可能性があるとして研究が進められているそうです。

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(あまり美味しそうに見えませんが...リンゴとブルーチーズのキッシュ)

肝心のハイブリッド品種、VIGNOLES種の味は、まさに、皮付きのまま、まるごとリンゴを齧ったような味でした。色は黄金色で、一口飲んだらじわっと広がる桃や洋梨のような香り。エルダーフラワーの様な爽やかさもあり、リースリングに似た印象です。

酸味はそこまで高くないですが、オイリーな感じもなく、程よいフレッシュさが感じられたVIGNOLES種。フレッシュさがリンゴのシャキッとした食感によく合い、また洋梨の様な甘みが、チーズの濃厚さと良くマッチしました。

VIGNOLES種は、遅摘みによる甘口ワインも作られているそうなのですが、それもとても納得です。

 温暖化を始め、地球の転換期と言われる中で、今までの常識が通じなかったり、新しい技術やアイデアが生まれたり。先に進んでいくには、まずは今まで自分が当たり前だと思っている価値観の枠を取っ払う必要があるのかも....と、なんだかワインを超えて、思わぬ発見があったリンゴペアリング。

生産者であるKEUKA LAKE VINEYARDSは、一部のワインが日本にも輸入されているので、日本でもこのハイブリッド品種が飲める日もそう遠くないかもしれません。

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