2023年2月の新譜記録
こんにちは!タイトルの通り、私が2月に聴いて良いなあと思った新譜について、簡単な感想コメントとともにまとめておく記事です。
今月は大型のリリースがいくつかありましたね。私はきたる新生活に向けた引っ越しで部屋の掃除に追われる1ヶ月でしたが、その作業中の音楽として流しては、時折手を止めて聴き入ってしまうこともしばしば。おかげさまで引っ越しもこの記事もギリギリです。
良かった新譜
アルバムタイトルを押すとsongwhipのページに飛べるので、気になった方はそちらからどうぞ!
Girl In The Half Pearl / Liv.e
2月はこれが一番好きでした。ネオソウルを基調としつつも、ドラムンベースやグリッチ、さらにはVaporwaveすら思わせる不穏な「異物」でその心地よいグルーヴをあえて破壊し、聴き手を混沌へと突き落とす異形の音楽。苦悩の渦巻く歌詞世界もそうしたカオティックな音楽性とリンクして、極めて圧の強いアルバムになっていると思います。衝撃度でいえば、今年のリリースでは一番大きかったものの一つかも知れません。
Heavy Heavy / Young Fathers
異形の音楽という点では、こちらもものすごい作品でした。地下のスタジオにメンバー3人だけで篭って制作されたという本作は、自由な発想と、制限された環境下でそれを発揮したがための狂気的なエネルギーに満ち溢れた怪作に仕上がっています。至上の快楽に向かって加速していくような、トライバルなコーラスワークや異様に性急なビートが、まさに一種の麻薬をキメているような、多幸感と焦燥感が同居する異常な精神状態へと聴き手を誘います。最恐の一枚。
Cuts & Bruises / Inhaler
めーちゃくちゃ良かった。1975以来のある種キラキラしたポップネスとUKロックの伝統的な気怠さ・耽美さをいい具合で折衷していて、BFIAFLやThe Carで摂取できなかったストレートなUK的カッコよさへの憧憬が満たされた感覚があります。2ndアルバムにして、UKロックシーンのこれまでを背負い、さらに未来を見据える気概十分です。サマソニが楽しみ!
This Stupid World / Yo La Tengo
USオルタナ界のベテラン・ヨラテンゴの新譜。ノイズでゴリゴリのロックサウンドとヘロヘロギター&ボーカルが絶妙な塩梅で混ざっていて、雑な言い方をすれば非常に「いい感じ」のサウンドです。聴き手をゆらゆらさせつつも程よい緊張感があるサイケな雰囲気は、個人的にも求めていたものかもしれません。
Quest For Fire / Skrillex
中高生のときに流行っていたEDMの人、という印象であまり聴いてこなかったので、単にそれだけの部分もあるかもしれませんが、ずっと予測不能な角度から音楽的な快感が刺激されるヤバい作品でした。全体的に高音キツめのミックスで、体を痛めつけている感があるのが逆に良い。聴くと非常にカロリーを消費するため、名盤なのにあまり聴けないタイプのアルバムになっていきそう。
Food for Worms / Shame
21年の私的ベストにも挙げた前作 "Drunk Tank Pink" でのハードなリフ主体の破壊力あるサウンドが非常に印象的だっただけに、本作でギターの鋭さを抑えた一種の歌モノとしての性格が強まったのは意外でした。バックのバンドサウンドは、静と動の緩急や密度高めのコードストロークなどでパンキッシュなエネルギーの発露を変わらず感じさせますが、歌に寄り添うという観点で以前よりも内向きになった印象。こういう静かに燃えている感じもそれはそれで好みです。
This Is Why / Paramore
Paramoreのこと正直ナメてました。十数年前のポップパンクバンドが今さら何を……と。ところが本作は、そうしたある意味若い力任せの音楽ではなく、変わらぬエネルギーを内に秘めつつも、ギターとリズムのソリッドなアンサンブルワークに鋭い緊張感が走る、ロックバンドとしての円熟を感じさせる強固なサウンドに仕上がっています。サウンド面の特徴でいえば、現行のUKポストパンクへのアメリカからの回答とも言えるのかも。
サニーサイドへようこそ / 笹川真生
長谷川白紙や君島大空の評価を考えると、もっと注目されてもいいだろうと思っているSSW。トラックはバキバキに技巧的なのに、どの曲もそこにちゃんとストレートに良い歌メロが乗っていて、素晴らしいポップスに仕上がっているアルバムです。色んな角度の感性を刺激される。時々小学校の頃の合唱曲みたいになるのもグッと来ます。
Desire, I Want To Turn Into You / Caroline Polachek
Caroline Polachekは恥ずかしながら本作で初めて聴きました。王道のディーヴァのポップスと、ベッドルームポップの独創性が不思議に同居している感じが印象的です。ドラムンベース風のトラックもあったり、現行のインディーシーンへの眼差しも伺えていい感じ。
Cracker Island / Gorillaz
Gorillazの新譜、まずは何よりも客演が豪華すぎる(これまでよりも大御所志向が強め?)。その一方、楽曲は比較的実験的な性格だった過去二枚と比べてかなりビートやメロディが強く、非常にキャッチーでポップ。サンダーキャットとの表題曲 "Cracker Island" などは、わかりやすさで言えば "On Melancholy Hill" 以来のアンセムではないでしょうか。それでも、どこか淡々としたデーモンのボーカルはやはり良い味を出しています。
Get Up Sequences Part Two / The Go! Team
こういう軽妙洒脱でガチャガチャとした、それでもなんだかキャッチーなポップスはまさに彼らの得意技ですね。問答無用でサイコーの気分になれる、超ゴキゲンで、サンプリングワークからはどこかナードな香りも漂う、絶妙なポップチューンが並んだ好盤です。
Void Ov Voices : Baalbek / Attila Csihar
こういうのダークアンビエントっていうらしい。ヘヴィーなノイズとともに、不気味に低く唸る呪詛のような語りがただただ垂れ流される、言ってしまえば不気味なアルバム。ただ、聴いているとなぜか心が安らいでくる気がするのが不思議。このジャンル掘っていった方がよさそうです。
おわりに
今月はなんというか異常なサウンドをした音楽が多かったですね。一聴して「なんじゃこりゃ……」と衝撃を受ける体験が多々ありました。それもあって、ちょっと咀嚼に時間を要している(感想書いといてアレですけど)というか、まだ年間ベスト級に好きといえる作品に出会えた実感はないのが正直なところです。本当はもっとちゃんと聴きこみたいところなんですけど……(こう言っているうちにサボって感性が鈍っていくのこえ~~~)
あと、今月は残り少ない学生生活を謳歌する一環としてFor Tracy Hyde、RHCP、betcover!!のライブに行きました。キャリアも規模も様々でしたが、どれもそれぞれいいライブでした(感想はTwitterに書いてます)。欲を言えば、PavementやFountains D.C.も見たかった……。来月にもアクモンとFTHのラストライブに行くことになっているので、そちらもとても楽しみです。
仲間内でやってるマガジン。こちらもよければ。
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