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夏の終わり

シャワシャワシャワとけたゝましく鳴く
蝉の声が消えいつのまにか季節は移ろい
夏から秋になっていた。

羽音を揺らす鈴虫達の声が、どこからかリーンリーンと聴こえてくる。

そんな朝晩の空気がすこし冷たくなったころ、
わたしは新しい場所にいた。

新しい場所へと引っ越したわたしには、
まだ馴染みのない最寄り駅。
アーチを模した屋根の向こうに自動改札機がみえる。
その改札口の傍には、
役目を終えた蝉の亡骸が横たわっていた。
その蝉の亡骸を見ながら、わたしは夏の終わりを感じていた。

蝉の鳴き声があったから、夏の気配を感じていた。
慌しくすぎる日常のなかに、シャワシャワシャワと鳴く蝉の存在があったからこそ夏を感じられたのだ。

カンカンカンと遮断機が降りる音がする。
もうまもなく電車はやってくる。


身体いっぱいを震わせて鳴く蝉の声に、生命力を感じていた。そして夏を感じていたのだ。

ブレーキ音と共に5両編成の電車がホームへとやってくる。

「素敵な鳴き声をありがとう」


そうつぶやき、わたしはホームへと向かった。
電車のドアがプシューっと開き、新しい秋の世界に誘われるかのように人が吸い込まれていく。


「またね」
フジファブリックの若者のすべてを聴きながら、するりと電車に飛び乗った。


そして電車は扉を閉じた。
懐かしいあの蝉の気配を遺して。

この先に待つ新しい秋の世界に行くために。




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