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神奈川在住。新潟出身。日常のできごとやちょっと疑問に思ったこと、読書記録、ドラマの感想…

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神奈川在住。新潟出身。日常のできごとやちょっと疑問に思ったこと、読書記録、ドラマの感想などを書きます。ビーグル/ニョロニョロ/食べる・飲むこと/マンガ(『来世は他人がいい』『食べたい女と作りたい女』)/朝ドラ/雑誌/小説が好きです!よろしくお願いします。

最近の記事

読者は1人でいい

 編集者として、担当した本の部数が伸びることはこの上ない喜びだけれど、同時にたった1人の読者を大切にしたいと思う。  本ではないけれど、祖母に手紙や自作のアルバムをプレゼントすると、祖母はゆっくり時間をかけて、何回も何回も繰り返し見てくれる。私は1人の読者を喜ばせることに成功したんだと、孫としても作り手としても得意になる。  アイドルでもない限り、喜んでもらえる周りの人の数には限りがある。会社員は利益を追求しなければならないし、いくら出版不況とはいえ読者が1人だけではビジ

    • マルチタスクをものにする

       私は出版社で編集者をしていますが、その仕事内容は多岐に渡ります。 校正 原稿の執筆・整理 企画書作成 誌面作成(デザイナーさんとのやりとりが中心) 執筆・取材依頼 取材内容のテープ起こし イラストレーター さんやカメラマンさんへのアポとり イラスト依頼(内容を考えたり資料をつけたりしてイラストレーターさんに相談) アンケートの作成 アンケート結果の集計・分析 SNSの更新(Instagram、TikTok、X、LINE) 読者モニターの管理 web

      • 断捨離の逆をゆく

         私は物を捨てることが苦手だ。  テレビ番組や書籍で断捨離やミニマリストはよく取り上げられるが、なぜかその逆はあまり見ないことに違和感を感じる。そもそも、断捨離の逆ってなんだ? ごみ屋敷?   私が物を捨てるのが苦手なのは、物や思い出への愛着が強く、捨てるごみが増えることに罪悪感を感じるからだ。  貧乏性なのもあって、私はかなり物持ちがいい。小学生から15年くらい履いているパンツがあると友人に言ったら、ドン引きされた。  穴が空いたら流石に捨てるが、下着や靴下は子供の

        • 野球、黒あめ、黒豆せんべい

           「じー」は阪神と中日のファン。家に遊びに行くとテレビはいつもプロ野球の試合か大リーグの試合か甲子園だった。  じーの家で出てくるお菓子は、だいたいいつも黒豆せんべい。かじるとほどよい硬さで、黒豆の香りとお米の味がぶわっと広がる。素材のを活かしたあっさりとした塩味で、私も大好きなお菓子だ。じーの家でいつも出てくるからか、その素朴なおいしさからか、今では幼い従兄弟の好物になっている。好き嫌いの多い従兄弟なのに、どこが気に入ったのだろうか。  じーは歳をとってから膝を悪くして

        読者は1人でいい

          カズオ・イシグロさんの本が好きです

           最近「日の名残り」を読み終わった。  カズオ・イシグロさんは自身がその時代を生きているかのように描けるのがすごい。この本は1920〜30年代の回想と1956年の「現在」を執事のスティーブンスが語っていくストーリーだが、それを1954年生まれのカズオ・イシグロさんが、まるでその時代を生きていたかのようにリアリティたっぷりに描いている。いや、その時代を生きていたとしても、ここまでの詳細な時代の情景を描くことは難しいだろう。それどころかカズオ・イシグロさんが執事のスティーブンス

          カズオ・イシグロさんの本が好きです

          セリフの重みとリアリティが違う「アンメット〜ある脳外科医の日記〜」

           もうすぐ最終回を迎えるドラマ「アンメット〜ある脳外科医の日記〜」の魅力をどうしても語りたい。  不慮の事故で脳を損傷した脳外科医の川内ミヤビ。事故前の2年間の記憶がなく、また事故後は記憶は1日しかもたなくなってしまった。寝て起きたら前日の記憶はリセットされる日々。毎朝5時に起きて日記を読み、事故で記憶障害を負ったことを含め、前日までの失った記憶を覚え直す。元々研修先だった病院で、理解ある同僚の助けを借りながら、医療行為は行わない看護助手として働いている。少々複雑なストーリー

          セリフの重みとリアリティが違う「アンメット〜ある脳外科医の日記〜」

          京急線はヒーローだ

           今日の夜、JR京浜東北線が人身事故で運転見合わせになりました。振替輸送で京急線を利用しようとしたものの、もちろん大混雑。そんな中で、京急線の車両数を増やしたり運行区間を延長したり、あの手この手でなんとかしようとしている駅員さんたちの努力が手に取るようにわかりました。  他の車両は大混雑の中、後方に連結される空の車両がブンと音を立ててやってきたとき、ヒーローのように見えました。  駅の混雑に少しイライラしてしまってごめんなさい。いつも首都圏の途方もない人数の通勤・通学を支えて

          京急線はヒーローだ

          不運と幸運は紙一重

           朝、歯磨き粉を歯ブラシにつけようとしたとき、チューブから出した歯磨き粉の塊を、洗面所の流しに落としてしまった。歯磨き粉は知覚過敏や歯周病予防に効くという、少し高価な「シュミテクト」で、「うわ、最悪」とがっかりした。もったいないので、シンクに直接ついていない部分を表面だけ歯ブラシで削り取ったが、それでも大半は流してしまった。    その10分後、洗面所の鏡を見てピアスをつけようとしたら、今度はピアスのキャッチャーを流しに落としてしまった。落ちた勢いでカンカンと転がり、そのまま

          不運と幸運は紙一重

          西加奈子さんはこうだったけれど、自分だったらどうだろうー『くもをさがす』を読んでー

           エッセイ『くもをさがす』で、西加奈子さんは乳がんを告知されて治療を進めていく中、「自分」の所在に不思議な感覚をもつようになったという。治療でつらいときなど、何かが自分に起こっているとき、そのできごとと自分には、いつもどこか一定の距離があったそうだ。     このことは、私にもわかる。何かつらいことや、現実を受け止めきれないことがあったとき、自分に起こっている出来事をどこかから客観的に見てしまう、防御反応のようなものだ。  私は大学受験に失敗したとき、先生に先に泣かれてしま

          西加奈子さんはこうだったけれど、自分だったらどうだろうー『くもをさがす』を読んでー

          今も昔も変わらない、文を書くこと

           大河ドラマ「光る君へ」第2回。  まひろが代筆の仕事をしていたり、詮子が円融天皇に文を書いていたり、「書く」シーンが美しく描かれているのが印象に残った。  とくに詮子が円融天皇を想って文を書くシーンは、なぜか、現代人が好きな人に悩みながらメールを打っているようにも見えて、こんなに時代が違うのに変わらないなと思った。

          今も昔も変わらない、文を書くこと

          ないと息ができない

           先日、小学校低学年のときの担任の先生から結婚祝いをいただきました。小学校を卒業してからは、年賀状と手紙のやり取りしかしていませんでした。20年もずっと私を忘れず、幸せを願ってくれていたことがわかって、私はすぐに先生に電話をかけました。  お互いの近況など、積もり積もった話のなかで、先生は最近、旦那さんを病気で亡くされたことを知りました。何十年も一緒だったので「空気みたいな存在だったけれど、空気がなくなって息ができなくなってしまった」と。  マンネリ化してしまったカップルや夫

          ないと息ができない

          能登バスツアーの思い出と現在

           去年の8月、能登のバスツアーに参加しました。  金沢駅に集合した後、バスは能登半島へ向かい、千里浜なぎさドライブウェイ、能登金剛・巌門、總持寺祖院、千枚田ポケットパーク(世界農業遺産 白米千枚田)、すず塩田村を巡るというものでした。ペーパードライバーの私にとっては、車がないと行きにくい能登の名所をバスで回ってくれるという、魅力たっぷりの内容となっていました。  私は1人で参加しましたが、運転手さんもガイドさんもすごく親切で寂しさを感じることはなく、のびのびと満喫できました。

          能登バスツアーの思い出と現在

          せめてこの1日は

           大学入学と同時に実家を出てから、年末年始と夏休みの1週間くらいしか、地元のパパとママや兄と過ごせない。でもせめてその1週間は、笑い合って楽しく過ごせますように。    ばーの介護度が上がり、グループホームに行かざるを得なくなってしまった。長くて1、2日間くらいしか一緒に過ごすことができない。でもせめて、一緒に過ごせる1、2日間はばーが笑顔でありますように。  仕事が忙しくて、毎日手の込んだ朝ごはんをダンナにつくってあげることはできない(自分でつくれやとは思うけれど)。でも、

          せめてこの1日は

          ひとふさひとふさ、ひとりひとり

           以前帰省したとき、親が新潟の聖籠町の伊藤農園で、ぶどうを買ってくれた。  ぶどうの箱をキャリーバッグに入れて運ぶと言ったら、農園のおっちゃんとおばちゃんが 「この袋に入れたらいいんじゃねか」 「そんな袋いらねー」 とあーだこーだ言いながら、ひとふさひとふさ、すごく丁寧に包んでくれた。  おかげで長時間かけてキャリーバッグで運んでも全く傷まず、美味しいぶどうを食べることができた。いや、傷まなかったことが重要なんじゃない。たった1人の客に対して、農園のおっちゃんとおばちゃんが一

          ひとふさひとふさ、ひとりひとり

          ティッシュがないと思ったら 次のティッシュがもう用意されてる幸せよ

          ティッシュがないと思ったら 次のティッシュがもう用意されてる幸せよ

          クライミングと夫婦の絆を突き詰める

           ひとことで表現するなら、標高約8,000m級のヒマラヤ高峰に登ることは、こんなにも過酷なのかということが超絶リアルに描かれている本だった。  標高が高ければ酸素が薄くなる。凍傷で手足を失うことや遭難の危険がある。それくらいのことは素人の私でもわかっていたつもりだったが、この本を読むまで全然わかっていなかった。命を懸けると言葉で表現するのは簡単だが、命を懸ける状況になるまでの選択、決断、それまでの過程や努力、つまり人生のすべてがぶっ飛んでいなければ、標高約8,000m級のヒ

          クライミングと夫婦の絆を突き詰める