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国際紛争に関する研究 #01 基礎知識編

YouTubeで「戦争を終わらせたい」と言っている若者がいました。しかし私は「どの戦争をどう終わらせたいの?」と考え「ビジョンや具体的に戦争を終わらせる方法が明確じゃない」と思ってしまいました。そこで、まずは「この戦争をこう終わらせたい」という前に戦争や社会問題の源泉となっている、ナショナリズムや民族紛争についてまず知る必要があると考えました。
今回は「世界の民族と紛争」(監修:祝田秀全)という本を元にナショナリズムや民族紛争についての基礎知識を記事にしてみます。

「人種」「民族」という概念の基本知識


人類という生物を分類する概念には、大きく分けて遺伝的特徴で分類する「人種」、社会的特徴で分類する「民族」の2つがある。
人種という括りで人類を分類すると大きく分けてコーカソイド、ネグロイド、モンゴロイド、オーストラロイド…といった区分がある。これらの人種は生物学上は全て同じホモ・サピエンスであり、旧人類とされるクロマニョン人やホモサピエンスと同じ新人類であるネアンデルタール人とは異なる生物種である。
ホモ・サピエンスに皮膚の色・頭髪の色といった生物学的な差異が見られるのは、土地や時代の環境に応じた自然淘汰の結果であると考えられる。

地球上の自然な人種の分布は、約10000年前にモンゴロイドが南アフリカ大陸に到達した頃に定まったとされている。その後15世紀ごろヨーロッパによる大航海時代が始まると人口の急速な移動により、人種の混血が始まる。かつては骨相学のような反証性のない仮説や統計学の誤用・ナチス医学のような誤った科学的知識により人種間の優劣があるとされていたが、人種と人間の本質には生物学上の違いは存在しないとするのが科学者の主流解釈となっている。

生物学的な人種とは別に、言語・文化・風習など、後天的な学習や社会環境によって身につく社会的な特徴による人類の分類がいわゆる「民族」である。特に重要な要素が言語であり、個々の言語の他インド・ヨーロッパ語族、アフリカ・アジア語族、アルタイ語族、シナ・チベット語族といったグループに分けられている。

武力衝突と民族問題


現在、この星では50以上の武力衝突が発生している。紛争の原因は誤った政治、国境の紛争、土地と資源を巡る争い、民族紛争などなど多岐にわたる。中でも民族紛争が近年目立つ理由に「国民とは単一の民族であるべき」という国家民族主義とでもいうべきイデオロギーが関係している。

国民国家・国家民族主義と民族自決

「国民による国家」という、成人の国民全員が主権者となるべきであるというイデオロギーは18世紀末のフランス革命期にエマニュエル=ジョゼフ・シエイエスが絶対王政や身分制社会を批判する形で提唱した。シェイエスは「主権者としての国民は絶対王政や身分制社会を破壊することで実現する」と考え、この時点では国民国家主義と民族主義の結びつきは強くはなかった。

「第三身分とは何か」の著者シェイエス、Wikipediaより

「国民=単一の民族」という国家体制の構想が本格的となり始めたのは、19世紀のプロイセンである。プロイセンはオスマン帝国やオーストリア大公国の衰退は多民族による国家体制が原因であると考えていた。

民族主義の台頭にさらに拍車とかけたのが、第一次世界大戦後の14ヶ条平和構想、そして第二次世界大戦後の国連憲章に明記された「民族自決」というイデオロギーである。民族自決とは、各々の民族が自身の政治的な運命を決めるべきであるという、国家民族主義を後押しする思想である。

民族自決はアジア・アフリカのヨーロッパ植民地の独立運動を後押ししたが、独立した後の国に組み込まれた複数の民族同士での争い、あるいは複数の異なる国に分断された同じ民族といった事情が民族紛争の新たな原因となっている。
例えばクルド人は居住地域がトルコ・シリア・イラク・イランとで分断されているが、これはオスマン帝国解体後のシリア・イラクをフランス・イギリスが民族事情を考慮せずに分断統治していたという事情が関係している。





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