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チョコレート色のネイルだけが、わたしに訪れたバレンタインデー

指先が美しくあること、可愛らしくあることが、いつからこんなにもわたしの原動力になっているのだろう。

いま、わたしのネイルはオフされており、あしたの出勤までに、これを美しく、可愛らしく整えることが、本日わたしに残されたミッション。

ほんとうは、洗濯物を畳んで、ベッドカバーをかけて、新聞も読まなくてはいけないが、そのあたりのごまかしのきくミッションとは違う。

何も塗っていないネイルは、もはや裸のようで、ちょっと恥ずかしいのだ。

「すっぴんを見られるくらいなら乳首を見られる方がマシ」

昔、わたしの叔母は高らかにこう言った。
幼かったわたしは、「乳首って、おっぱいの!?おっぱいなんて、見せられないでしょう…?」と軽い衝撃を受けた記憶がある。

30超えた今でも、「すっぴん>乳首」の構図は若干理解しがたいが、女性にはそれぞれ、自分だけの、己だけが信じる、守るべき一線があって、わたしにはそれが、ネイルなのかもしれない。

指先も、心も、ぼろぼろ

わたしにとっては、指先の状態が心にも反映される気がする。

進化じゃないし蛇でもないが、30超えてから、年に何度か指先が脱皮するようになった。(どうしたまじで)
乾燥してちょっと剥けたとかのレベルでなく、まさに「脱皮」。
全部剥けて、わりと負傷に近い痛みを伴う。重症ささくれ。

そんなとき、もちろん指先は美しく見えないし、普通に痛いし、キーボードを打つ手は、痛ましい見た目に、ため息まじりに止まりがちになる。
ため息が出れば、元気もしぼむ。

「なんにもうまくいかない。指先もこんなにかわいくないし。」
指先ぼろぼろ脱皮期には、けっこうな頻度でこんな風に落ち込んでいる気がする。

指先が先か、心が先か。にわとりが先か、卵が先か。
指先も、心も、ぼろぼろ。いま現在、絶賛この状態。
落ち込み闇マインドは、実はこれも原因だったりする。

わたしを強くするネイル

落ち込んではいられない。
キーボードを打つたびに、ため息ばかりしていたら、いつまで経っても、おうちに帰れない。
見込み残業代しか出ないやすこの職場では、1分でも早く帰社することが、自分の時給を上げる最短の道。
おブスな指先に別れを告げて、すてきなネイルを施さなくては。

美しい指先は、洗濯物を畳み、ベッドカバーと格闘し、新聞を嗜むエンジンになる。
爆速キーボードを打つ、超ウルトラスーパーバリバリキャリアウーマンであるための、アイデンティティとなる。

禁断の言葉「めんどくさい」を吹き飛ばし、これからネイルをチョコレート色に染める。
もはや、そわそわも、センチメンタルも、もちろん、ドキドキもなく、気づいたら終わっていた、バレンタインデー気分を追っかけて。

次にネイルを変えるのはホワイトデーの頃かな、なんて考えながら。
なんのお返しももらえないけど、もうすぐ春がやってくる。







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