地域の学びを支える学習塾の事業承継。組織改革を経てエリアNo.1を目指す取り組みとは
「学校の授業では得られない、学ぶことの楽しさを伝えたい。それが将来必ず役に立つ日が来るんだよ、と大人が信じて伝えていきたいですよね。」
塾での学習を単なる受験勉強という位置づけではなく、成功体験を積むこと、家庭での学習習慣をつけることで子どもたちの生きる力にしたい。多摩地区で学習塾を運営する株式会社翔栄学院の及川社長は、子どもたちの将来を見据えた指導指針をもちながら、地域に根差した経営を行っています。
創業から36年が経ち、現在はエリア内に9教室を展開。着実に事業を拡大しつつも、ご自身が60代に差し掛かったことで「自分が動けるうちにやりたかった」と後継者問題に向き合う決断をされました。
NYCへの事業承継から1年以上が経ち、社員の意識変化や「正直なところ、ここまでしっかり関わってもらえるとは思っていなかったですね。」と仰る、共に歩んだ道のりを伺いました。
地域と共に歩んだ塾経営の成長基盤を作りたい。60代で事業継承を決断した理由とは?
ーーまずは、事業と会社についてお聞かせください。
翔栄学院は、学生時代の友人と立ち上げ、昭和62年に本町田の団地内にある小さな集会所で開塾しました。その後あきる野・八王子とエリアを広げつつ、常に地域をリードする地域密着型の進学塾として歩んできました。
弊社の強みとして、担当講師は全員が専任講師で、学生アルバイトが行う授業はありません。大学入試や都立高校の入試制度も大きく変わる中で、それぞれの教科のスペシャリストを育成し、質の高い授業と徹底した受験進路指導を実践すること、地域に合わせたカリキュラムを策定してきめ細かな学習支援を行っています。
小学生から高校生が対象ですが、近年は高校受験に特化した新たなカリキュラムを構築しています。塾での学習を通じて自ら学び、いかに結果を出していくか、成功体験を作ってあげることが我々の役目だと考えています。そのためには中途半端な勉強ではなく、覚えるべきことは覚えるよう促し、時には子どもが少し嫌がるような宿題もきちんと与えていかなければなりません。
子どもたちの学ぶ力を伸ばし、自ら学ぶ習慣を作る、そして結果を出すことで未来を切り拓いて欲しい。地域密着型の学習塾として、そのような形で地域に貢献していきたいという想いは創業当時から変わりません。
ーー長年、お子さんや親御さんと真摯に向き合い、事業を伸ばしていらっしゃったのですね。事業承継はいつ頃から意識され始めたのでしょうか?
私自身が60代になり、年齢を重ねるにつれて自然と意識するようになりましたね。会社と社員の将来を考え、自分が動けるうちに成長基盤を固めておきたいと考えていました。
事業成長に課題を感じていたことも理由の一つですが、やはり一番大きかったのは後継者問題です。身内や社員にも、やはり適任者は見つからない。中小企業はどこも同じ悩みを抱えていると思いますが、事業が拡大する中で後継者をどうするか、先行きの不安というのはずっとありましたね。
ーー60代というご年齢ですと、後継者問題はありつつも「もう少し先でいいのでは」と考える方もいらっしゃいます。具体的に事業承継に向けて動き出したきっかけは何でしたか?
過去に知人を通じてM&A仲介業者をご紹介いただき、同業の学習塾を経営している会社との事業継承の話が持ち上がったことがありました。
そこで我々も事業継承に向けて動き出さなければならない年齢になったと改めて感じ、いよいよか、と本格的な検討に入りましたね。第三者による事業継承という選択肢を知ったのもそのタイミングでした。
それまで仲介業者の営業などはメールで来た程度だったので、特に意識することはありませんでした。たまたま知り合いがいたのでスムーズでしたが、自分たちで仲介業者を探して、比較検討していたらまた違う不安や苦労もあったかもしれません。
圧倒的なスピード感と中長期の保有が決め手になり「不安はなくなった」
ーー事業継承に向けて、我々を含め複数の選択肢を検討されたと思います。お声掛けさせていただいた当時のNYCは創業から日も浅く、小さな組織でしたが、どんな印象を受けましたか?
他社と比較すると、やはり年齢の若さが際立ち、非常にエネルギッシュな印象を受けましたね。ただ、若いながらも経験豊富でレスポンスも早く、ご提案いただいた内容にも納得感がありました。
NYCからの提案を受け、話を進めていくうちに年齢や規模感に対する不安は一切なくなりましたし、これなら大丈夫、という確信に変わりました。
ーーNYCとの事業継承にあたって、決め手になったのはどんな点でしたか?
事業を成長させるためのサポートをしていただけることはもちろんですが、NYCには我々にはない圧倒的なスピード感があると感じたことが決め手でした。それは検討段階でも非常に強く感じましたね。
NYCへの事業承継自体も大変スムーズで、事業承継のお話をいただいて、その一か月後には資料を提出して、事業継承後にどんな取り組みをしていくかという話まで進んでいました。
事業承継にあたっての大きな不安材料としては、成長基盤が固められないまま短期で売却されてしまうことと、社員が離れていってしまうことでした。NYCは中長期の保有をすることで事業成長をしっかり後押ししてくれると感じたので、大きな不安を感じることもなく決断することができました。
これまでは私ともう一人の代表とで相談して決めていましたが、今はNYCが一つの課題に対しても我々が思いつかないような提案をしてくれますし、現場を巻き込みながら、どんどん事業を前に進めていってくれます。
経営者が社員とのパイプ役を担うことで、スムーズな事業承継を実現
ーーNYCとともに経営を進めていく中で、経営者の立場からどんな変化を感じますか?
まず、事業承継の決め手となったスピード感については、弊社にとっても大変プラスに働いていると感じます。NYCのメンバーとミーティングをしていても、気を抜いていると置いていかれるんじゃないかと思うくらい(笑)。複数の事案を同時並行で進めていただけるので、事業が格段にスピードアップしています。
これまでなんとなくで数字を追っていたところから、まずは数値化する、見える化して、さらにその数字をどう見るか、何を改善するかまで提案して実行を促してくれるのでありがたいですね。外部の専門家とも適切に繋いでもらえるので、私自身もすごく勉強になると感じています。
ーー事業承継が決まった当初、社員の方々からはどんな反応がありましたか?また、スムーズな事業承継のために心掛けたことなどありますでしょうか。
事業承継が決まってからは、社内向けに説明会を開催しました。今は実際に現場の先生方とNYCのメンバーが関わる機会もありますので、私と同じくスピードアップしている実感はあると思います。とはいえそのスピード感についていけない、変化に戸惑っている社員がいるのも事実です。
ただ、私がNYCと関わらせていただく中で、全員が本当に真剣に弊社のことを考えて動いていただいていると強く感じています。ならば、私が間に入ることで現場の調整役を果たしていこうと。
時にはNYCのメンバーから受け取った内容を私が個別に言葉を変えて伝えることもありますし、少しずつ社内に浸透していったように思います。
ーー事業継承後、経営者自身がどんな役目を果たすべきか、イメージが付かない方もいらっしゃるかもしれません。現場を一番よく理解する経営者自身がパイプ役になることでスムーズな事業承継が実現したのですね。
NYCが一方的に物事を進めていくわけではなく、現場の様子や反応を伺いながら、その上で方向性を変えたり違う提案をいただけたりします。譲与側・譲受側という関係性ではなく、共に歩む良きパートナーですね。
また、これまでも現場の先生方がいい授業をできるように、安心して長く働くことができる環境を作りたいという想いをもって経営をしていました。だからこそ、事業継承をすることで先生方が違和感を持ち離れていってしまうことは一番の懸念点でした。
これまでは曖昧だった評価制度を見直し等級を作ってわかりやすく整備するなど、先生方にプラスになるように働きかけてくれています。働く側としても見えない・わからないとなると不安が募りますが、見える化することで安心感にもなり、自身でどう改善するか考えるきっかけにもなりました。
弊社として積み上げてきた歴史や強みは残しつつ、私自身の年齢を考えて事業を引き継いでいかなければならない今のタイミングで、NYCと手を組み事業の課題を洗い出し解決し、事業の足場を固め、成長基盤を作っていくことができています。正直なところ、ここまで業務改善や事業成長にコミットしていただけるとは思っていませんでした。
コミュニケーションの活性化と組織の見える化で、社員の意識が変わった
ーーNYCへの事業承継から一年が経ちました。社内ではどんな変化を感じますか?
何よりも、社員の意識が本当に変わったと思います。これまでは塾講師イコール授業をする、勉強を教える、という認識でしたが、集客を始め先生方に経営者的な目線が備わってきました。NYCのサポートもあり社内で経営塾を立ち上げ、自教室を経営するという意識が少しずつ高まってきているのを感じます。
事業継承を検討する段階で、当然支援計画についてNYCから説明はあったのですが、「もしかしたら形だけかもしれない、実際に事業承継したらあまり関わってこないかもしれない。」という懸念はありました。ところが実際は想像以上に関わっていただき、事業成長を後押ししてくれています。
ーー「想像以上だった」という経営支援について、具体的な取り組みについて聞かせてください。
社内で意見を出しやすい環境を構築していただいたのも大きな変化でした。slackが導入され、今はつぶやき程度でも気づいたことや自分の考えを発信できる場があります。
これまでは我々が先生一人ひとりにヒアリングすることでしか声を拾うことができませんでしたが、どうしても形式的になってしまう、気づいたその時に声を拾えず未消化のままになってしまうという課題がありました。
とはいえslackを導入してすぐ社内が変わったというわけではありません。我々経営者としても、声を上げてもらった以上、肯定的な意見も否定的なものも含めて必ず反応し対応しなくてはなりません。slackでのやりとりも直接的な対話も含めて、徐々に自分の意見を出すことへの安心感や、現場とNYCとの信頼関係を構築している最中ですね。
ーー組織や制度の見える化、コミュニケーションを活性化することで心理安全性の高い職場へと変化している様子が伺えます。
一方で、中にはこれまでのように教えることに専念したいという先生もいますので、それぞれの適性を見ながら対応しています。これまではそのような意向があることすら把握できていなかったので、お互いに理解を深めていくきっかけになりました。
事業を次代に引き継いでいくにあたって、風通しの良い組織や社風を作っていきたいという想いはありました。まだまだ道半ばですが、大きな進歩だと感じています。
NYCは良きパートナー。エリアNo.1を目指し共に躍進したい
ーーNYCへの事業承継、共に歩んだ一年間を振り返って、今どんなことを感じていますか?
とにかくNYCは投資先に寄り添って、翔栄学院のために尽力していただいていると感じます。誰よりも事業の成長を考え、手間や工数をいとわずに、なおかつスピード感をもって対応していただける。
後継者不足に悩む経営者は多いと思いますが、NYCのメンバーは非常に勉強熱心ですし、企業の意向を汲み取り相談しながら、しっかりと本質的な解決に向けてサポートしていただけます。NYCなら会社をこれまで以上に良い方向へ導いてくれるだろう、という期待を持たせてくれる良きパートナーですね。
及川氏には弊社youtubeにて、事業承継の経緯と譲渡後のNYCとの取り組みについてお話いただいております。ぜひ併せてご覧ください。
担当者の声
シニアアソシエイト 駒野谷より
当社は長年、地域密着で小・中学生を中心に学習支援をしており、多くの卒業生を輩出しています。一方で、認知の面は高められる余地がまだまだあると感じており、「地域の学生・保護者に親身に寄り添う翔栄学院を、もっと知ってもらいたい!」という思いで、マーケティングや組織体制構築の支援を進めています。
今後は、これまで以上に生徒に溢れ、更なる事業成長を実現し「八王子・町田・あきる野で塾と言えば翔栄学院」と言われるよう、新教室も出店していきたいと考えています。
▼NYC株式会社について
NYCは「2027年までに100件の投資を行い、中小企業経営のイノベイターとなる」というビジョンの実現に向けて、優れた技術やビジネスモデルを持つ優良企業であるにもかかわらず、事業承継ができない中小企業を専門とした投資会社です。
同じ志を持ったパートナーとともに互いの専門性を最大限発揮することで、 これまで閉鎖的であった中小企業投資の世界に変革をもたらし、 1社でも多くの中小企業の事業継続・持続的成長を実現していきます。
noteではメンバーの普段の業務や、事業継承をご決断いただいた投資先の皆様の事業承継ストーリーを発信しています。ぜひ併せてフォロー・ご一読ください!
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