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オンブラマイフ

オペラ「セルセ」の冒頭の曲、オンブラマイフ、私くらいの年代か、その上の方だったら、皆さん聞いたことがあるはずです。(昭和の中頃生れです。)

サントリーがソプラノ歌手のキャスリーン・バトルを使ってのウイスキーのコマーシャルに、この曲を使っていたのです。褐色の肌のバトル、白いドレス、琥珀の液体、寒色の背景。なめらかで、のびやかな声と、静謐な画面。ウイスキーについては、なんの言及もないけれど、高級なイメージを抱くという、素晴らしいコマーシャルでした。

Youtubeで、「キャスリーン・バトル、サントリー、ウイスキー」と検索すると、素晴らしい歌声と物語のあるような動画を楽しめます。是非。

別に、キャスリーン・バトルの宣伝をするつもりはなかったのですが、二期会のオペラ「セルセ」を観て、連想してしまったのです。

劇中の酒場の場面や、カーテンコールの時の歌手の方々の様子を見て、昨今の禁止・自粛の中、耐えて耐えて上演に辿り着いた想いを、感じてしまいました。上演中止にならないよう、座席数の削減を受け入れ、上演できるかどうかの不安を抱きつつの練習。若手のデビュー公演でもあったので、歌って、踊って(!!!)芝居をして、と何度も練習を重ねたことは、想像に難くありません。

日本のオペラの上演は、海外に比べて日数が短いのに、座席数を減らされたら、採算がとれるのか、と心配になります。二期会への募金を呼び掛ける人々が、あちこちに立っていたのを見ると、内情は苦しいのでしょうね。

飲食店といい、こうした劇場系のイベントと言い、人々をリフレッシュさせてくれるものが、存在を圧迫されています。弓の弦が、ピンと張ったままだと、伸びてしまうように、日々の生活や仕事だけで、潤いが無くなってしまうと、私達の生活から光が減ってゆきます。

オンブラマイフは、歌詞だけを見ると、木々の緑の美しさだけを歌ったものです。「この歌、あまり意味がないのでは?」と思っていましたが、木々の緑を想う心に、そういう気持ちを抱く人の生活や想いがあるのだ、と思えてきました。

以前とは違う形であっても、日々のあたりまえの暮らしが取り戻せて、自然を慈しむゆとりのある時間を持てるよう、願ってやみません。

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