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アスク・ミー・ホワイ

『アスク・ミー・ホワイ』を読んだ

古市憲寿さんがかかれた小説

この小説を読むのは人生で2度目
初めてこの本に出会った時はよく行く書店に並んでいて
いわゆるジャケ買いというもの
表紙の絵が綺麗で、全体的に青っぽい、漫画の1ページみたいなイラストに惹かれて買った
その頃、私は大学生で内容よりも表紙に惹かれる本を選ぶのが常だった

社会人になって数年たち
ひさしぶりにその本を読んだ

最初に読んだ時は何故かすごく悲しくて
もう一度読みたいけど読んだらまたしんどくなるから一旦やめよう、と思った記憶がある
物語のラストが私にはどうしても受け止めきれなくて悲しかった

だから久しぶりにこの本を読もうとした時も少し躊躇った
あの時みたいに悲しい気持ちになるかもしれないなあ、と。

しかし私は読み終えたあと、全然悲しくならなくて、むしろハッピーエンドとも言える終わり方に満足して幸せな気持ちになった
愛しい人から甘いケーキを一口分けてもらうみたいな、そんな砂糖菓子のような幸せがこの本にはあったのに
なんで昔の私はあんなに悲しんだのか、不思議だった

この本の最後は主人公と恋人が離れ離れになる
しかし悲しい別れではなくて
恋人が昔とある事件がきっかけで芸能界から姿を消していたのだが復帰するために少しの間遠距離になってしまうというだけ
だけ、といってしまうと雑に聞こえるけど
生涯離れ離れになるわけじゃない
2人は晴れて両思いになったのだけど離れてしまう、でも気持ちは変わらないまま
恋人の背中を押したのは紛れもなく主人公だったし悲しいことなんて離れてしまうことだけなのに
どうしてあの頃は私はあんなに悲しい気持ちになったのだろう

あの頃の私にとって恋人と物理的に離れてしまうことは地獄にも等しい事だったのかもしれない
私の学生時代は恋人とずっと一緒に過ごしていたし、会いたい時に会える距離だった
恋人は年下だったので私が先に卒業した
恋人の進路は決まっていて卒業したら遠距離恋愛になることは確実で
それがすごく辛くて経験したこともない得体の知れないものに怯えていた、寂しい気持ちが私は1番苦手だった
そんなふうに2年間、私たちは遠距離恋愛をした
想像よりも遠距離は辛くなかった
私は地元に帰郷していたからか、寂しいという気持ちを抱く瞬間も少なくて離れているからこそ会える時間は大切にしようとか会いに行くのが楽しみとか、新しい感情に出会えることの方が多くて私にとって大切な時間だったと思う

それを経てからこの小説を読んだからなのか
自分自身の感じ方が全く違っていて驚いてしまった

恋人と物理的に離れてしまっても気持ちは変わらないで残していられるし
気持ちが離れることなんてないって私は知っていたからかもしれない

あのころの私は知らなかった
離れても愛が変わらずにあること

一言でいうと、私が成長したからこの本への向き合い方が変わったのだと思う
そういう自分の人生に寄り添ってくれる物語が私にあったこと、それがとても幸せでこれからもっと歳を重ねていけばまた違う感情に出会える
これからもそんな瞬間にこの本を一緒に抱えていたい

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