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映画エッセイ「エリザベスタウン」~父親の死に思う事~

制作  2005年 米
監督  キャメロン・クロウ
出演  オーランド・ブルーム
    キルスティン・ダンスト
    スーザン・サランドン
    アレック・ボールドウィン

あらすじ
シューズ・デザイナーのドリュー(オーランド)は、あるプロジェクトで10億ドルの損害を出してしまう。会社にも恋人にも見捨てられ、生きる意味を失った彼は死ぬことを考えるが、そこに父親の訃報が届く。葬儀のため、故郷であるケンタッキー州エリザベスタウンへと向かうドリュー。その飛行機の中でお節介でお喋り好きなキャビン・アテンダントのクレア(キルスティン)に出会う・・・。

全てを失った青年の再起を描いた希望の物語

とはとある映画サイトのキャッチコピーで。
この作品、監督自身の父の死をきっかけに脚本も自ら手掛けたという。
いかにもド直球なヒューマンドラマそうで、僕好みだ!
と、思い鑑賞したのだが・・・。
葬式に集まる父の多くの友人知人親戚らはほとんど涙も見せずお祭り騒ぎ。ドリュー本人も死を実感できないのか、ふわふわとしていて感情がよくわからないで。
クレアとの穴埋めの恋に舞い上がっているというような話で・・・。
序盤の感覚としてはかなりわけわからない。違和感がある。
アメリカ独特のなんでもジョークにしてしまう文化の違いなのか・・・。
とにかく不謹慎と思うほどにみんな生き生きとしている。
ドリュー自身もクレアとのノーテンキな恋にうつつを抜かしている。
おいおいと思ってしまう。
いかんせんクレアが初めからイイ子過ぎる。
単なる行きずりのキャビンアテンダントなのに、みずから穴埋めの女とかいいながら、都合のいい女を買って出てくれて、傷心のドリューをさりげなく励まし続けてくれる。男ならだれでも一度は妄想するような・・。
だがしかし、決して現実ではありえない夢のような展開だ。
百歩譲ってオーランド・ブルームの外見、容姿なら一目ぼれもありえるか。
そりゃあいくら何でも都合よすぎじゃないの。
と、ネット上で感想やら批評やらちらっと見てみた感じでも、
批判的なものが多い感じだ。
しかし!
僕はこの作品観たの、父親の死を経験した直後だったこともあってか、
この映画の感じ、実はけっこうリアルだと感じた。
死をリアルに実感すればするほど、逆に生を強く求める感じ。
それはもう、生き物としての無意識の本能のような・・・
死に際に卵を産み落とすゴキブリのような・・・
良い悪いも、倫理も何もない。
死の淵から湧き出る生への渇望。
のような事を描いているように感じた。
いや、表だって表現されていないからこそ余計に、
その裏の悲しみ、苦しみ、もがき、の感情が
後半に怒涛のように胸に響いてくる。
これはまぎれもない再生と希望の物語だ。
結局、言いたいのは大好きな映画だという事。



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