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妊娠を機に起こった私のコペルニクス的転回Ⅱ-突然現実化した私の結婚-

前回のお話
1 私のこれまでの人生における結婚・出産の意味

2  突然現実化した私の結婚

気付けば29歳もすでに半分が過ぎた頃,なぜか急激に私の中にあった結婚願望が萎んでいった。そして、32歳までに結婚できればいっかなんて思うようになった。それもなぜ32歳かというと,32歳になる年に東京オリンピックが開かれるからお祭り騒ぎのときに独身だと寂しいしなぁくらいの適当なものだった。

そんなことを思いはじめた矢先,友人の紹介で一人の男性と出会った。第一印象は,全く良くなく、お洒落してきて損したなぁ,とりあえずご飯食べて帰ろうと,今思えばかなり酷いことを思ってしまった。そんな第一印象からはじまりつつも話してみると意外にも楽しく,これはアリかもしれない(なぜかこのときものすごく上から目線だった)と思った。ちなみに,私は地方出身で,その男性と出会ったのは私の故郷から遠く離れた土地だったのだが,その男性の先祖と私の先祖はともに同じ藩の武士であり,その男性の先祖は私の先祖の家来だったことが判明し,不思議な気持ちになったりもした。

初めて出会ってから2週間くらい経った頃,その男性から食事の誘いがきた。初めて会った日は,最悪の第一印象から「アリかもしれない」というところまで良い印象になっていたのだが,2週間も経つうちにすっかり忘れてしまって,めんどくさいけどとりあえず行っとくかくらいの気持ちで誘いを受けた。結局,その2回目の食事が私の気持ちを大きく変えることとなった。
その頃の私と言えば,やりたくない仕事をしているにもかかわらず,持ち前の負けず嫌いと完璧主義を発揮し,がむしゃらに仕事に邁進しており,問題のある案件を複数抱え,心身共に疲れ果てていた。加えて,その年の夏には犯罪被害者になっていたし,30歳を目前にして精一杯努力して生きているのに何にも手に入れてないどころか散々だななどと思っていた。
そして,その男性とお酒を飲みながら,私はそのことを軽い気持ちで愚痴っていた。これまでも男性に仕事や人生の愚痴なんかを言ったことは何度もあったのだが,ほとんど決まって,思ってもなさそうな,というよりたぶん何も考えもせず,同調し,励まされることばかりだった。そうだよね,他に向いてる仕事があるよ,また目標を追いかければ良いよ,まだ若いんだしこれからだよ・・・みたいな当たり障りのない励ましをいただいた。このときもきっとそんなありがたい励ましをいただくと思っていたし,私自身,話すだけでもいくらかスッキリするし,相手の返答には何の期待もしていなかった。相談ではなくて,あくまで愚痴なんだし。ところがこのときは違ったのだ。
私が放った「今の私は人生の無駄遣いをしている。」という言葉に対して,「人生無駄なことなんてないよ。自分もこれまでいろいろ紆余曲折あったけど全部無駄じゃなかったよ。」と言われたのだ。文字にするとなんだか大したことないような会話に見えるのだが,この会話で私はその男性に惚れたのだ。そう,たったこの1つの会話で。私が無駄だと思って生きていた毎日を優しく包み込んでもらえた気がして,自分ですら否定していた自分を肯定してもらえた気がしたのだと思う。

そうして,私はその男性を好きになり,その男性もてっきり私を気に入っているものだと思っていたのだが,実際はこの段階ではそうではなかったらしい。ただ,私が惚れた2週間後くらいに開かれた忘年会でようやく私を気に入ってくれたらしく,さらにその数週間後に晴れて付き合うこととなった。出会ってからおよそ2ヶ月,その間会った回数は4回でどれもお酒を飲みながらの夕食という,出会ってから付き合うまでの経緯はごく平凡なものだった。

付き合うこととなってから約2週間後に初めて昼間からデートをした。といっても,カフェや飲食店をはしごして何時間もひたすら話すだけのデート。そして,このデートで結婚を決めた。

ほんの直前まで,結婚なんて仕事を転職するのと違って簡単に変えられないんだし,1年付き合って,2年同棲して,しっかり相手を見極めてからでないと,なんて言っていた私はどこへ行ったのだろうか。子どもの頃から,目標を決めてそれに向かって努力することが人生において大事なことだと思って生きてきて,結婚も同じように考えていたし,加えて,優柔不断で,石橋を叩いても渡りたくない性格の私が,なぜか結婚を一瞬で決めてしまったのだ。

両親は当然ながら,友だちも戸惑うレベルの急展開だった。付き合った報告すらしないまま,結婚の報告となってしまった友だちすらいたのだから。

結婚の決め手は何だったのかと聞かれたことがあった。これまでは,この人と結婚したら私は幸せになれるかという視線で男性を見ていたが,夫については,私がこの人を幸せにしたいと思ったのだ。なぜかはよく分からない。でも,愛ってそんなもんだよね。

そういうわけで,私は30歳の誕生日に結婚した。子どもの頃から20代前半まで結婚願望は全くなく,20代後半になっても結婚に向けた目標設定も大した努力もせず,最終的に私が行った「私的婚活」はとりあえず「誰か良い独身男性いたら紹介してね」と言っておくという超他力本願なものだったのだが,それが成功し,まさかの平均初婚年齢あたりで結婚した。良い意味で人生なるようになるもんだなぁなどと思った出来事だった。

妊娠の話をテーマにしておきながら,ようやく結婚まで辿り着いた。果たして,妊娠中に完成するのだろうか。

つづく

第3話はこちら⇒ 妊娠を機に起こった私のコペルニクス的転回Ⅲ-結婚は点ではなく,線である-

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