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3年1組~団結~

「夫よ、子供たちを入れて」
と夫に促し、子供達を保護者会会場に入れた。
次男と次男の仲良し4人組のお友達が入ってきた。中にはスローガンを破った男の子もいた。

「次男、あなたとお友達が考えた今後発達障害の子が一緒に過ごすための解決策をみなに教えてあげて」

次男は一歩前に出て言った。
「うん、わかった。まず発達障害の子はまわりにたくさん人がいると落ち着かないんだよ。だから席を一番後ろにしてあげた方がいいんだ。でも不安になったときは誰か頼れる人がいないと怖くて暴れたくなるから、後ろの方に大人の先生か、隣か前に僕やお友達がいてあげたら安心すると思う。」

お友達Aが続けた。
「あと暴れるときは遊びたいときに一緒に遊んでくれなかったり、話したいときに話せなかった時だよ。僕達の話が終わったら話そうね、遊ぶときはいきなり入ってくるんじゃなくて『あーそーぼ』って言うんだよって言えばちゃんとやってくれるよ。それを知らない子達が怒ったり気持ち悪がったりして遠ざけると暴れるんだよ。まずはそうやってやればいいんだってことを広めないとだめだ。」

お友達Bも意見を言った。
「あとよだれとハナクソつけちゃうのは、怖かったり不安だったりする気持ちを押さえられないからだよ。次男くんがやめていやだよって言っても止められないのは意味がわからないから。反応してくれたって喜びになるんだ。まずはストレスになるものをなくしていって、それでもやったら、たぶん新しいストレスがあるはずだから、まず手を両手で包んで『だめ』っていう。その後手を洗いにいかせる。はなくそやよだれを付けたら拭かせる。皆もやられたら泣いてるふりをする。泣くのは悲しいことって発達障害の子はわかるから、それでとまるよ。」

私は、子供たちの発言に感謝し、再び保護者たちに向き直った。
「皆さん、私は専門家ではないので、インクルーシブ教育がどういうものか詳しくはわかりません。ですが、私の考えるインクルーシブ教育とは、今この子たちが示してくれた言葉であり、これからの社会にあるべき姿なのではないでしょうか。
発達障害のお子様やご家庭、先生のいうことは理解しますが、私たち他の家庭にやってくれと押し付けるだけで何も返してこないのは良くないと感じます。それはいつか、弱者を排除しようとする大きなモンスターを生むと私は考えています。あなた方のやっていることは、未来の発達障害者の首を絞めているのです」

保護者たちに向かって続けた。
「皆さま、まず子供たちのこの考えた対策を、子供たちができるように私たちが支えていきませんか? 我々大人の一番の大きな仕事は、子供たちに多くの選択肢が選べるよう支えていくことだと私は考えています。」

私の締めくくりに全員が頷いてくれた。
そして口々に
「賛成します」
「同意します」
と声をあげてくれた。
発達障害のご両親は顔をうつむけて
「ありがとうございます…すいませんでした…」
とひたすら言っていた。

「教頭先生、年度途中でかなり難しいとはわかっていますが、補助の先生を申請してください。私も申告書の保護者代表要望欄に言葉を足します。先生も発達障害の子のご両親も良いですね?」

先生とご両親は力強く頷いてくれた。
あれほど自分たちは大丈夫と強固にいた人々が、ありがたいことだった。

他の保護者も協力を申し出てくれた。
「私も申告書書くの手伝います」
「私、市役所勤務なので、申請するなら持って行きます」

私は申し出てくれた保護者に感謝した。
また席替えを提案しました。
「次男くん、お友達みな。誰が前と隣がいいかな?」

お友達Cが答えた。
「前は私かな、気が強いから発達障害の子。手を出してこない。」
お友達Aも同意した。
「僕は隣かな、Cと同じ理由。僕、よく発達障害の子が暴力をふるうと止めるから。」

次男も提案した。
「あと、暴力を止めるときは一人にしてあげた方がいいよね。まわりに人がいるとさらに暴力がひどくなるから。」

子供たちは熱心に話し合い、具体的な対策を進めていくことが決まった。
保護者会は、子供たちの力強い意見と協力のもと、一致団結して新たな道を歩み始めた。

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