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『映画ドラえもん のび太の地球交響曲』感想

※ネタバレ注意!
めっちゃ深いところまで書いてるから!観賞後に共感したい人または結末を知ってから鑑賞したい人だけカモン!


 2024年3月1日に日本で公開された『映画ドラえもん のび太の地球交響曲』。
 ドラえもん原作者:藤子・F・不二雄が生誕90周年を迎えた記念作品と聞いて、観てきました。春休みだったからか、平日でも子供たちが沢山見にきていました。楽しげな声が聞こえてきて、まずはそこでほっこり。
 私自身、映画ドラえもんを映画館のスクリーンで観るのは久々のことで、入場口にて特典があることを知りました。順番ずつ子供たちに混ざりながらも受け取り、席に向かいながらとてもワクワクしていました。

 今後上映される映画の予告映像が盛り沢山で、そこからもう楽しかった記憶。(陰陽師0、インサイド・ヘッド、ウマ娘、名探偵コナン、クレヨンしんちゃん etc…)

 視野が暗くなり、荒波を背景に「東映」の文字がドーンと浮かび、さあいよいよ始まるぞ!!!

 ED〜♪終

 …めっちゃ面白かった…(涙)(涙)(涙)

 ズビズビ鳴ってたの私だけだったような気がするけど、とっっっても素敵なお話だった。これからね、も〜細かいところまで、どこが良かった〜とかお話していくんですけれども、こっからネタバレになるのでね、まだ引き返せるから、引き返せるからねっ!!!

※中の人の口調がよく変わるけど気にしないでもらえると助かるラスカル。


 初めからとばしていくけれど、見所は最初から詰まっているんだ。この作品のタイトル『地球交響曲(シンフォニー)』に相応しい始まり方だったと言っても過言ではないほど高尚に作られていたと思う。音楽や演劇関連の史実を学んだり知っている人は多分この場面を目にした時に「おおっ!」てなるはず。まさに地球の交響曲(シンフォニー)だねって。音楽とは様々な要素が組み合わさって、交差して、作用しあい、紆余曲折を得てこれからも進化していくものだと私は考えてる。それらを比喩的に体現しているのが「交響曲(シンフォニー)」であり、この壮大なテーマを製作陣側は地球(人間)が積み上げてきた音楽として映像で表現していたように思う…壮大でしたわぁ。壮大なのは音楽だけじゃなくて、これから起きていく出来事も壮大って感じだった。これだけじゃあまだどんな話なのかも想像がつかないよね。壮大だからね。

 もしこのネタバレ感想を読んだ後に鑑賞する人は、ぜひタイトル回収後から続いてのび太の日常生活の場面で、聞こえてくる音に意識を傾けてほしい。普段私たちが何気なく聞いている音や口ずさむ音、雑音、空気にのっかった様々な音が、あえて少し強調されて日常にありふれた音として聞こえてくるように演出されているから。その場面があることで、のび太がドラえもんの道具で意図せず引き起こした"地球から1日だけ音楽を消し去ってしまう"という大事件がより鮮明に強調されるものになっている。(正しくは"今日は音楽がなかった"と秘密道具の[あらかじめ日記]に書いた。なぜのび太がそう書いたのか省略。)←『ドラえもん』の面白いところは、のび太のちょっとした思いつきからドラえもんの秘密道具を介してとんでもない大事件につながり、解決に導いていく筋書きにあると思う。映画シリーズになるとそれがさらに大規模で壮大になるんだ。

 上記の秘密道具で、のび太がドラえもんから上手く拝借できた時に上機嫌になって踊るのちょーかわいいからみんな見てほしい。今回私がもらった特典[響く♪まんがBOOK]には今作で登場する秘密道具にまつわる原作が掲載されているのだけど、その話の中でドラえもんの台詞にこんなものがある。

「人間はね、感情の動物と言われてるんだ。うれしい時はとびあがってよろこび、悲しければワアワア泣く。もっと気持ちをいきいきとあらわせよ。」

 私はこの台詞もとい特典を映画観賞後に読んだことで、このドラえもんの言葉がとても心に沁みたんだ。ちなみに私は原作漫画『ドラえもん』の全巻が幼少の頃に自宅にあったため読破している。もしボロボロになって処分していなかったらもう一度手に取って読んでみたいのが正直な気持ち。きっと大人になってから読む『ドラえもん』はまた違った印象をもたらしてくれるだろうから。上記の台詞のこともあり、やはり映画ドラえもんは感情表現による動きが豊かに描かれている気がする。見ていて楽しいし和む。その時ばかりは生暖かい目で見てたね。

 毎度お馴染みジャイアンに絡まれる場面では、ワンシーン(カット?)だけジャイアンの声がなんか「木村昴だっ!」ってなったのだけど、わかるかなぁ。それとも最近のジャイアンはそんな感じなのか?その瞬間までジャイアンだ〜と思って声優さんのことなんか一切意識していなかったのだけど、そういえばジャイアンの声ってあの山田一郎(ヒプノシスマイク)と中の人一緒じゃん!て急な木村昴の声でびっくりして、つまり唐突なイケボだったってことなんだけどどどどどどどどどっどーうなんだろ…。
 彼の声はヒプノシスマイクあたりから他のアニメや吹替でも声のバリエーション?厚み?がなんか進化したなって勝手に思ってたけれど、もしやジャイアンごと進化しちゃった?
 まじでそのワンシーンだけドキッとしちゃってスペキャ顔の私だった。

閑話休題。

 この文章量でまだ起承転結の「起」あたりまでしか書けてないの大丈夫か。まとめきれるのか。
 物語内で起きる出来事が盛り沢山すぎて情報の取捨選択が難しいから、私が強く心を動かされたところや見どころポイントとかをかいつまんで書いているけれど、それにしても多いのよ。
 映画ドラえもんの良いところって、のび太の頑張りがよりフォーカスされているところだと思っていて、彼が頑張っている姿を見ると泣けてくるんだ。そう、おそらく私だけ泣いていた。「え、そこで泣く?」って絶対に隣の席に思われてた。
 のび太って「無理!できない!」って思った時に一旦投げ出すタイプで、今作ではそれがリコーダーの演奏だったわけですが、でも散々喚いた後にどうしようもなくなるんです。ドラえもんの秘密道具でもどうにもならないこと、それは最終的にのび太自身の努力・実力でしか掴み取れないもの。そのことに彼自身もなんとなく気づいて、川原で1人練習するわけ。すると、のび太の演奏する音につられて1人の少女が現れる…!これがミッカ(ムシーカ星人)との出会い。運命のきっかけですね。
 やっとここまできた…。

 ミッカとの出会いから話の展開は一気に広がっていくよ。のび太との出会いからその輪は音楽の力によって学校の仲間たちとドラえもんにまで広がっていく。ミッカの歌声と共にドラえもんの秘密道具[ムード盛り上げ楽団]による演出も加わったミニ演奏会が青空の下で開かれた。その場面を目撃した1人のロボット(チャペック/ムシーカ星人)がのび太たちが自分たちのピンチを救ってくれる救世主(ヴィルトゥオーゾ/音楽の達人)だと確信の勘違いから始まる宇宙への招待。ここは秘密道具ではなく、チャペックの手回しにより惑星ムシーカの伝統と文明パワーでのび太たちの通う小学校の音楽室を出発拠点とし、ピアノによるメロディーを鍵に"ファーレの殿堂"という宇宙に浮かぶ人工衛星のような巨大建造物・ミッカ達の拠点へとのび太たちはワープする。
 この時、チャペックはあの小さな体でせっせと招待状をつくり、おそらく惑星ムシーカにより築かれたファーレ(音楽)の力を利用して地球と殿堂を繋げたのかと思うと涙が…健気じゃん…。
 なぜ地球と宇宙を繋ぐ鍵のメロディーがベートヴェンの『エリーゼのために』だったのか、招待状には「夜」といった具体的ではない時間の指定で全員よく揃ったなとか、細かい謎は残るばかりだが、そこらへんの考察する頭脳を私は持ち合わせていないので省略していく。

 殿堂に招待されたのび太たちは、チャペックから今置かれている自分たちの状況説明と現状からの復帰をお願いされる。殿堂はとても巨大で、その一部分の限られた場所でチャペックとミッカは2人のみで過ごしており、頼みの内容はファーレ(音楽)の力で殿堂内の閉ざされてしまった場所の全ての解放。そのためにはヴィルトゥオーゾ(音楽の達人)であるのび太たちの力が必要であり、困っているならということでのび太たちはその頼みを聞き入れる…。
 ここで新たに登場する秘密道具が[音楽家ライセンス]。この道具は「一緒に楽器の練習を重ねるとレベルアップしていける道具。楽器を小さくしてストラップのようにつけられる。」(特典参照)といった代物で、今作では欠かせないメインの秘密道具だ。のび太たちは各々に一番あった楽器をこれまた秘密道具の[運命の赤い糸]で選び手に取る。ジャイアンはチューバ、スネ夫はヴァイオリン、しずかちゃんはボンゴ(※その他打楽器)、そしてのび太は…リコーダーだったね。
 この場面で隅っこにラケット映すのはずるいって。完全にあれはミスリード。なんとなくのび太はリコーダーだろうなってわかるのだけど、でもラケットがチラつく…!そういうちょっとした遊び心、好きです。
 リコーダーと共に成長していくのび太…とても良かった。のび太以外のみんなは先にランクがレベルアップしていく流れでこんなんやる気なくなるでしょ〜と思いながら見ていた。
 のび太のリコーダーへの苦手意識もあってか自分にはできっこないと落ち込んでいたようにも思う。周りのみんなはできているのに自分だけができていない時って焦るよね…。焦燥感、疎外感、孤独…でものび太はリコーダーと喧嘩しつつも自分のペースでなんとかやっていく。
 私自身[音楽家ライセンス]の仕組みに少し違和感というか、なぜのび太のランクは上がらないのか不思議だった。上手く演奏ができないからライセンスのレベルは変化しないのか?そうなるとのび太以外のビギナークラスからミドルクラスへのランクアップが簡単過ぎやしないか?など色々と思考が巡っていた。しかし答えは簡単で、彼が誰かのためを思って最後まで演奏した際にレベルアップしたことで心の持ち用でランクは変化することがわかった。この場面まで[音楽家ライセンス]のレベルアップする基準が正直はっきりわからなかったというか理解し難い部分があったのだが、のび太の人に寄り添う演奏により音は感情と同義であることを彼の人間性と共に表されていたように思える。やっぱのび太って良いやつだよな〜(涙)(涙)(涙)

 人間性の描き方って些細なことでも欠かせない要素だと私は思っていて、今作でも1人ひとりのキャラクターを製作側がちゃんと大切にしているのが伝わってくるんだ。こういった場合だとこのキャラクターはこういう反応するよねっていう行動パターンがしっかり描かれていたりとかね。
 例えば、学校の音楽室からよくわからない光の先へ飛び込んでいく瞬間も、スネ夫はビビって文句を垂れてからでも結局はみんなについていくし、しずかちゃんは初めての楽器に対してもポジティブな姿勢を崩さず、のび太の気持ちを汲み取りズレたテンポに自分から合わせにいく優しく挑戦的な側面を見せてきたり…十人十色な姿で長所・短所でちゃんと人間味があって、そういったところも見ていて面白い。

 少し話が逸れてしまったから戻すが、のび太たちはミッカと出会い、音楽に触れ、ファーレの力でどんどん殿堂を解放していく。その中で彼らの成長も見れるのが良いとこポイント。
 殿堂の各場所が解放されるたびに、ムシーカ星人の手によって作られた新たなロボットたちが登場していく。そう、なぜか殿堂にはロボットしか見当たらない。動植物は存在するが、ミッカのような人型の生物が出てこないのだ…。
 なんと!ムシーカ人はミッカ以外死んでしまっていた!画面に映し出されるお墓の数々!経年劣化によるほころび!!明かされるコールドスリープ!!!
 …容赦がない。うせやん。まだ齢10歳もいってないだろう子供がそんなすぐに現実を受け入れられるわけがないじゃん。せめて他のムシーカ星人もコルスリさせてやってよぉ…そこで展開は明るくなっていくんか。正気か。と胸が締め付けられる思いでその場面を見ていた私。
 後から回想のシーンが入ってきて、やっぱり自分だけしか生き残りがいないって悲しいよねそうだよね!!ってなって、そうなるとムシーカ星人が全滅(ミッカ以外)してしまった事実を観客に受け入れさせる前にミッカの気にしていない装いで一旦その場面(問題)を置いといたのはミッカ自身が現実を受け入れるための時間だったのかなってそう思うとさらに心が苦しくなって目から水が溢れてきtうっlt

閑話休題。

 最終的に、ミッカ以外の生残りがいることも最後に判明してハッピーハッピーなんだけれど、その前に、完全に絶滅したわけではなくて、実はミッカの片割れの血が地球人に受け継がれていたこと。そしてその血縁者に会うところまでが、はじめの宇宙から流星が降ってくる場面の付箋からセットでずっと話が進んでいた事実に胸がグッと熱くなり、ミッカとの地球との関わり・縁がより深く見えて良きかな良きかな〜だった。ここも壮大すぎるよ…。音楽の原初から現代の音楽に繋がった瞬間だったね。

 惑星ムシーカが滅んでしまった元凶は、宇宙に存在する生命体からしたら恐ろしすぎる存在で星の生態系を壊滅させかねないほどの脅威だったが、のび太たちはミッカたちと力を合わせてファーレの力と秘密道具でその脅威を打ち倒すことに成功。まじメルヘンとファンタジーを詰め込んだ宇宙大戦[ファーレ vs ノイズ]だった。宇宙の性質を利用されたピンチだったり、のび太のユーモア溢れる運の良さが発揮されたりてんこ盛り。ミッカの歌声でドラえもんの代表曲が出てきたときはも〜胸が熱くてあっつくって、ああそれも音楽だよねって。歴史ある代表曲を最終局場面で持ってきたのは最高の演出すぎるよドラえも〜ん!!!

 ED(エンディング)もね、最高に良かった。作品自体が「音楽」を冠するからEDはかなり重要なんじゃ…!と気づいたところに聞こえてきたのはVaundyの声!!!EDタイトルは『タイムパラドックス』。もーーねーー、人選最高!歌詞最高!「あのね、僕のポケットの未来をのぞいて きっと笑ってくれるから」っていうフレーズ良すぎるだろぉぉぉぉ…普段から何を摂取していたらこんな素敵な言葉選びができるんじゃ…。そのフレーズに行くまでの歌詞も良すぎるんだなぁ。
 ED映像も物語終了後の日常の一枚絵が数々出てきて、のび太がリコーダー練習していた川原が映された時は「あ"ーーーーー」って胸がギュッてなった。そのほかにも細々と登場していた付箋が回収されたりしていて、映像に映し出したものは最後まで責任を取る使命というか、忘れないモットーを感じた。それに、クレジットにのび太たちの楽器を演奏した人たちの名前も記載されていてなんか嬉しかった。人を大切にしているのが伝わってきて、それが作品にも滲み出ている最後までほっこりする映画だった。

【まとめ】
 アニメならではのご都合主義な部分もあったけれど、それらを次の演出で塗り替えていくため、脳が次の情報(インパクト)に埋め尽くされていく形で、私は全然観ることができた。強大な敵と戦う時、どのようにしてその敵を倒すかがその作品の見どころとなり、盛り上がりの頂点となるけど、不思議世界な物語だと割とどうにかなってしまいがちで…。だからこそ肝心で作り手側も悩まされるのだけど、漠然と感じた印象としてはユーモアを含めなんとかした感じではあったのかな。このご都合展開が気になる人は永遠に気になってしまうだろうけど、時には難しいことは頭から切り離して流れに乗るのもまた一興。私としてはもう一度見たい気持ち。
 最後に、ドラえもんの秘密道具は努力のきっかけに過ぎないものだと今作では全体を通してなんとなく教えてくれているようで、ただの便利道具でもなく、万能ではない。だから人生のちょっとしたスパイス・冒険・アシストになるような秘密な道具なんだよってED見ながら感傷に浸っていました。音楽に溢れた作品だから映画館の音響で見るのをぜひとも推奨したい作品です。

!!!完!!!

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『映画ドラえもん のび太の地球交響曲』
【スタッフ】
原作 藤子・F・不二雄
監督 今井一暁
脚本 内海照子
音楽 服部隆之
キャラクターデザイン 河毛雅妃
総作画監督 河毛雅妃、中野悟史

【メインキャスト】
ドラえもん 水田わさび
のび太   大原めぐみ
しずか   かかず ゆみ
ジャイアン 木村 昴
スネ夫   関 智一
ミッカ   平野莉亜菜
チャペック 菊池こころ
タキレン  チョー
モーツェル 田村睦心

※キャスト記載省略しています。詳しくは公式HP参照。

【主題歌】
Vaundy/『タイムパラドックス』

https://doraeiga.com/2024/

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