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職業:書評家は、どうやって書評をかいているのか? 書評をかくプロセスを公開してみた

たまに思うことがある。「漫画のかきかたってよく載ってるけど、文章のかきかたってどこにも載ってない、よね……!?」と。

いや、「文章をかくときに気を付けるコツ」はたくさんあるんですよ。自分も出版したし。(注1)でも、文章を書くときのプロセスって、誰も言わなくないですか……!?!? 漫画は、素人の私ですら「まずはプロット書いてネームかいて、編集者さんにOKもらったら、下書きかいてペン入れする」みたいなプロセスを知っているというのに……!!!(『りぼん』とか『ちゃお』みたいな漫画雑誌にもよく載ってるし、漫画家さんのあとがきによく出てくるから知ってる)。

っていうか、私、お金もらって文章を書き始めてはや3年経とうとしてるのですが、今ですら、同業の文筆家(ライターでもブロガーでもコラムニストでも小説家でも誰でもいいんですが)が、いったいどういうプロセスで文章を書いているのか、あんまり知らないんですよね……。

「書くことをどれくらい決めて、文章書き始めてるんですか?」とか「ていうか書くのにどれくらい時間ってかかるんですか!?」とか、ほんとは首根っこ掴んでみんなに聞きたいんですけど。文章って、小学生のころから作文を「ハイ書いてねー」っていわれて書いた記憶があるからか、あんまり書き方をいまさら言おう、って思われないんだろうな。

というわけで、みんなの書くプロセスを知りたいので、ひとまず自分から公開してみました。

この世のあらゆる文章を書く皆さんが、「!? 自分と全然違う!! 自分はこうやって書いていて……」と語りだしてくれることを私は期待しています。(重要)

プロだけじゃなくて、ふつうに生活を送っていて、そのなかでブログをちゃんと更新しているみなさんの話を聞きたい………。私は………。

みんな、教えてよおお。


※私の場合、「本を書くプロセス」と「1記事(ブログや寄稿など、4000文字くらいまでの文章)を書くプロセス」と「書評記事」でちょっとちがうかも~と思ったので、まずはいちおう自分の生業であるところの「書評」の話をしてみました。

私はいままで5冊本を出していて、どれも「この本や文章の面白さを伝える!」的な内容の、つまりは書評の本なので、たぶんプロの書評家と名乗っていいのではないでしょうか………。いや、異論があったらごめん………。



<記事編>

①本を決める

まずは書評する本を決める。当たり前か。

たいてい書評連載の場合は、今月の書評する本(新刊とかランキングに入っている本とか制約があるのでそのなかで決める)を担当編集者さんに連絡して、OKもらったら〆切教えてもらう。たいてい〆切3週間前くらいかな。

※書評連載ってのは下みたいなやつです。宣伝になってしまう。

(ちなみに書評じゃない文章だったら、ここで「~~について書こう」ってざっくりした書くことを決めます。依頼ありきの記事だったら、ここは決まってることも多いですね。あるいは自分のブログだったら、ざっくりと「京都の思い出について書こうー」とか)。


②本を読みながら、自分がいちばん面白いと思う場所を決める

ここで本を読みます。で、重要なのはここで、「どこがいちばん面白いか」を決めること。

いちばんひっかかりのある場面or台詞orキャラクターを決める。興味深いところでも感動したところでも笑ったところでも好きなところでもいいんだけど、「この本でいちばんいい、人に読ませたい、すすめたいハイライトはどこかと言われたらここ」って言えるものを決める。私は「好きな台詞」があればそれを採用することがいちばん多いんですが、それは私が文章フェチだから。「この文章が……いい……!!」とキュンとすることが多いからです。(でもキャラなこともあるし展開なこともあるよ)。

一度読んだことのある本でも、読み返しながら「どこがいちばん面白いか選手権」を開催します。


③書き出しを決める

ここで考えるのは「②のグッときた理由ってなにかな~~、そしてそれを人に分かってもらうためには、何から話し始めればいいのかな~~」ということ。自分でも、なぜ②がグッと来たのか、ちゃんと言語化できていないので、それを文章使って言語化していくイメージ。

たとえばこの記事では、歌集を紹介させていただいたのだけど。

「目が覚めて大雨な夜 その雨を聴いてたはずが明るんでいた」って歌が、ものすご~くいいなと思って、紹介したくて。

でもこの歌をイイって感じるのって、やっぱり自分が同じような体験をしたことがあるからだよなーと思った(学生時代、雨降る夜明けをぼんやり過ごしてしまった経験、私はある)。だからこそ、自分と同じ体験を覚えている人がいるんだ、東京で社会人生活すると忘れてしまいそうな京都の学生時代の湿っぽい空気を覚えて残そうとする人がいるんだ、ってところに私はなにより感動したんだよな……と。

だったら、「京都という町は思い出の街だ、だからこそ残そうとする短歌があることに京都の(元)学生は感動しちゃうんだよ」って話を書こう、と決めた。だから書き出しに、「京都の元学生は、とにかく京都の閉店事情を悲しむんですよ」って話を持ってきた。

……おわかりいただけますでしょうか、「この場面(歌)を紹介したい→なんでこの場面(歌)にぐっときたのか→じゃあそれを本読んだことのない人に紹介するためにはどうしたらいいのか」というプロセスで書き出しを考えていることを……。

まず紹介したい場面があって、その良さを、文章でひもときながら、説明していくイメージ。その場面を知らない人にも、「ああなんかわかる」って思ってもらおうとする。

ぶっちゃけここが一番時間がかかる!! よお!!  なので私は書き始めるまでが長いです………。書き出しさえ決まってしまえば書ける。

※あまりにもここがつまづく場合は、「まず書き始めてしまう」。で、なにか面白い言語化ができるまで待つのです。


④実際に書く

とりあえず、③の書き出しから、とにかく書く。どんどん書く。

③がぼんやりしていることもあるけど、そういう場合は苦労しつつ、まあでも、書く。大切なのは、とにかく文章の誤字脱字とかを気にせず、「自分がこれが結末だ」と思えるところまで辿り着くところ。

結末っていうか、話のオチ。なんとなく、これで文章終わりでオッケー!と自分で思えるところまで行き着く。文章のうまさはここで考えない。

書き終わりで、自分で「ああそうか、だからこの本を私は好きなのか」ともう一度納得できたらいちばんラッキー。自分で自分に解説して、納得感のある文章になってる、ってことだから。

書評だけじゃなくてどんな文章でも、自分がなるほどねーと思える、「自分を納得させられる言語化」になっていれば、それがいちばん面白い文章になるのでは……と私は思っております。


⑤とにかく修正する

ここが私はいちばん大切だと思っている……。できればすこし時間が経ってから、④で書いたものを見返す。

うまく書けたなと自分で思った文章があれば、それを書き出しにもってくる。(私これよくやる……)。いちばん最初がいちばん読まれるんだろうし、そこでいちばん面白いところを見せたくないですか!? そんで、その書き出しから始まっても読みやすいように修正する。

あとは誤字脱字や、文章の読みづらさをちまちま直す。ラストとかも、くどくないかな~と読み返したり。


→完成!!


というわけで、①~⑤のプロセスを辿って書評は完成します。

時間で言うと、私はたぶん④がはやくて、③がおそいタイプですね……。③ができてしまえば2,3時間あれば④⑤はいける、って感じです。もちろん分量やノリノリ度にもよりますが。


大切にしているのは、あらすじよりも、②の自分がグッと来たところについて書こうとすること、かな。あらすじなんてググれば出てくるから、それよりももっと、自分が面白いと思える箇所の紹介にフォーカスしたほうが、有益な書評になるのでは……と。

よく「なんでそんなに書評を書いてるのか」って聞かれるのだけど、個人的には「自分が好きな本に関しては、自分が世界で一番面白い書評を書けるのでは!!」と無邪気に信じているからだと思います……。なんて能天気なんだ……。でもオタクってそういうもんだよね……。

この人のことを私は世界でいちばん分かっている、なんでみんな分からないんだろう、と思うから恋なのであって。(注2)この本のことを世界でいちばん分かってるのは私だし、そのよさを言語化したい、文章にして保存したい、という欲求に突き動かされているのだと思う。


というわけで、みなさま、自分と書くプロセスがちがったら、ぜひ教えてください!!!!! ていうかみんなどうやって文章書いてるんだよ!!!! 教えてよ!!!!


ちなみに書評じゃない記事かくときもたいてい同じプロセスです。

書きたいことがあって、そのひっかかる部分を取り上げて、納得感のある面白い解説をしようとする……みたいな。書評以外の記事もブログで書いてるのでよければぜひ。


さて、書評記事はこんな感じなのですが、じゃあ本はどうやって書いているのか? ちょっと長くなるので、次の記事でお伝えします~。


ちなみに『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』という新刊がでまーす! 夏目漱石、ドストエフスキー、三島由紀夫、サリンジャーなどの、手を出しづらい小説をどうやったら面白く読めるのか? について書いてます。ステイホームな読書の秋に、ぜひぜひ。


(注1)『バズる文章教室』という本です。いろんな名文から文章を書くコツを学ぼう的な本です。よければなにとぞ。

(注2)内田樹先生の『先生はえらい』という本にそういう説明が書いてあったので出典はこちらで。わかりやすい言葉で書かれてあるんですがすごいいい本だと思う。


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