見えなくても愛
点字を指で読む練習を始めたころ、とにかく多くの点字に触れねばと、あまり長くな
い点字本を読むようになった。
盲人デビュー間もないし、情報も欲しかったので、視覚障碍者関係の書籍を探したと
ころ、以下の本にぶち当たった。
見えなくても・愛―全盲の妻として母として (1983年)
河辺 豊子
まずタイトルに衝撃を受けた。
見えなくてもってなんだ?!
「ても」なのか?!私は「ても」の世界に来てしまったのか?!
私の愚にもつかないコラムのタイトルはここからいただいた。
積極的で前向きな障碍者が多い中、「ても」の世界の不自由さと日々の心温まらない
よしなしごとを、徒然なるままにそこはかとなく書きつくっている。
あやしうこそものぐるほしけれ(獏)
他にも衝撃はあった。
盲学校の女子高校生が結構大っぴらに先生と付き合っている。
本の内容はソフトだが、きっと実際はもっと大っぴらだったんだろうなと、下種な私
は邪推している。
これは私が無駄に厳しいカトリックの女子高出身というところから来る違和感でもあ
ったろう。
私の出身校で同様の事があったら、マ スール(フランス語でマイシスターの意味)に
即効粛清されてしまう事間違いなしである。
盲学校の不順異性交遊は、私が盲学校に入ってからその実態を知ったのだが、それは
また別の機会に書く予定です。
そして本の内容である。
高校の先生と女子生徒の恋愛は紆余曲折はあったものの、無事結婚。子供にも恵まれ
る。
しかし、幸せだったのはつかの間、先生だった夫が脳の病気になってしまい、認知症
のような症状を発症。
徘徊も始まってしまう。
盲導犬とともに子育てと介護に奮闘する全盲女性。
あまりにも壮絶な展開で、点字学習のために選んだ本としては重すぎて、私は途中で
挫折。
読んだのも何十年も前だし、第一読了していないので、この家族がどうなったかはわ
からない。
まだまだ盲導犬や障碍者、特別な病気にも理解が薄かった時代、子育ても介護も今以
上に大変だっただろう。
著者の方のご苦労が偲ばれる。
新人盲人の目の前はメンタル的にも真っ暗になった。
辛すぎる、盲人大変すぎる(涙)
仕方ないので、見えないなりに福祉サービスに甘えつつ、最低限の努力で、それなり
の余生を楽しく送る事にした。