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見えなくても外出 2 ~盲学校残酷物語~

視覚障碍者の移動について書いていたら、盲学校時代のことを思い出した。

ところで、盲学校の寮生はヘルパー派遣の事務所と契約ができるのだろうか。未成年
もいるから、親の判断?それともNGだったのだろうか。

当時私はまだいまよりかなり見えていて、杖を使えばほぼ自力でどこへも行けたので
、ヘルパーの必要性をほとんど感じていなかった。

遊びに行くときは友達同士で出かけた。学校行事の時もそうだったが、弱視が全盲の
手引きをする形で移動していた。

普通校に比べて圧倒的に人数は少ないが、それでも学校なので、仲良しグループがあ
ったり、孤立してしまう子がいたりする。
弱視は単独行動ができるが、全盲だとなかなかそういうわけにはいかない。全盲は、
弱視を誘ったりお願いしたりして一緒に出掛けていた。気が強い全盲がノーと言えな
い弱視の子をこき使っていたようなケースもあるけれど、それでも一人で動ける弱視
が強いのであった。

ちなみに病院や役所に行くときは、寮の先生が引率してくれていた。私が突然網膜剥
離になった時も保健の先生が引率してくれた。


盲学校にも当然恋愛沙汰はあり、全盲同士のカップルもいる。彼らはなかなか二人き
りで外出することができないので、寮の共有スペースで日がな一日「何をそんなに話
すことがあるのだろうか」という勢いでしゃべっていた。そしてそんな彼らもやはり
若者同士なので二人きりで過ごしたい時もある。全盲の男の子が弱視の友達に頼んで
、ラブホへ行くための歩行訓練をしてもらったという涙ぐましい話を聞いたこともあ
る。もうプライベートもへったくれもない。視覚障害ってこういう障害なんだと私は
涙が出そうになった。

外に出るのは大変だからだろうか、放課後校内でいたしていたひともいたとか。厳し
い女子高出身の私は、盲学校の奔放さに驚いた。女子高なので校内でどうのという事
はないが私の高校では、不純異性交友は弁明の余地なく粛清対象だった。

しかしこんな話が外様の私にまで回ってくる盲界という閉じた生態系に震撼した。い
やー、下手なことはできんぞ!!「清く正しいアニメおたくのかわいさん」のポジショ
ンを死守せねばとこのとき決意した。


話が大分横にそれたが、外出の話。

あまり自力歩行が得意ではない全盲の男の子。弱視の彼女と付き合っていて、デート
にも出かけていた。しかしトイレだけは一人で行かなければならない。そこで彼は外
出中には絶対トイレに行かなかったそうだ。トイレ問題は深刻で、マラソンをしてい
る全盲の女性も、周りの伴走者が男性ばかりだった時、トイレ誘導を頼むのがなんと
も恥ずかしかったとこぼしていたことがある。


視覚障碍者の中では、弱視の優位性が圧倒的。弱視の人の中には「自分は見えている
んだ、全盲とは違うんだ」アピールをするひとがいる。いわゆる「弱視マウント」で
ある。優越感を持つのは構わないが、問題なのはこういう人の中に、勇気を出して誘
導を申し出てくれた人に「自分は見えるから大丈夫」と、つっけんどんにはねつける
人がいることである。

先日も、ボランティアの人がこのような対応をされて、気を悪くして来なくなってし
まったという話を聞いた。

ちなみに私は道也駅でうごうごしていたときに声をかけてもらって助かった経験がた
くさんある。

話はいろいろ飛んでしまったが、いずれにしろ視力がなければないほど移動が大変で
、それが個人の尊厳にもかかわってきてしまうことがある。
仕方ないとはいえ、トイレや恋愛、要するに一番プライベートな部分がプライベート
として守れないのは切ない。

とは言え、20代後半で初めて経験した寮生活はなかなか楽しかったし、クラスの女子
で行ったディズニーランドや遊園地はとても楽しい思い出になった。
なんだかんだ言って、盲学校は楽しかったのである。

年齢より幼く見える20歳の友達に混ざって28歳の私も高校生料金でディズニーランド
に入場したのはもう時効だよね。




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