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見えなくてもはばたけ!?~水泳の記録会に出たよ~

性懲りもなくまた障害者スポーツセンター主催の「はばたき水泳大会」というのに出
場した。

今年は毎年5月に行われる東京都のスポーツ大会と自分の朗読サークルの公演がバッ
チリ被ってしまった。朗読は5年ぶりの大きな公演、これはさすがにブっちするわけ
にはいかない。
なので今年は東京と埼玉の記録会に出てやろうということになった。


去年は背泳ぎでエントリーしたが、散々な結果に終わった。さらに練習しすぎて変な
癖がついてしまい、まっすぐ泳げなくなってしまった。

そこで今回は2種目までえんとりーできるという事なので、クロールと平泳ぎ25メー
トルに出場することにした。

さらに去年は弱視の部でエントリーしたが、今回はブラックゴーグルをかけての全盲
クラスに転向した

しかしほとんど見えてはいないとはいえ、全盲ではないのでブラックゴーグルをかけ
ると進行方向がどちらかすらわからない。
それでもあまりにも見えないので弱視クラスだとかなり不利になる。
プールの底のラインや天井が見えるか見えないかでハンデが大きく違ってくるのであ
る。

コーチのような上手な人でも癖はあるので天井やプールの底を目で確認しながら泳い
でいると言っていた。けれども見えなければまっすぐの指標が何もない。

私の場合ただ周辺が水色なのか黒なのかの違いだけ。だったらブラックゴーグルでも
いいではないかと言うことになりクラスをチェンジすることにした。


ランニングにしろ水泳にしろ私はスポーツ大会の経験値がめちゃくちゃ低いので当日
の段取りなどが全くわからない。なので事前の練習会というのにも参加してみた。


スポーツセンターのプールは深くないので飛び込みはなし。潜水からのスタートにな
る。
飛び込み練習はしたことがないのでそれはいいのだけれど、プールの縁ではなく用意
された飛び込み台についているバーを掴んでスタートするということだった。

私は両手でプールの縁をつかんでスタートする練習をしていたのだが、バーは少し高
い位置にあるので両手でつかむのはかなり難しい。
焦ってうごうごしていたところ、どうやら他の皆さんは片手でバーを掴んでスタート
していたようだ。

その前に、泳ぐ練習の時、場所がないとは言え私は赤台が敷いてある一番端のコース
で練習するように指示された。そこは普段ウォーキングをする人のコースなので側面
に手すりがついている。
一緒に泳いでいたのは25メートルやっと泳げるか泳げないか位の男の子。お母さんが
そばに付き添っていた。

エントリーの時、自分のタイムも一緒に書いたので私が全く泳げないわけではないと
言う事はわかっていたはずなのになんでこっちにやられてしまったのだろうか。

実は縁に手すりがあるような所の方が視覚障害者的には危険。意図せず曲がってしま
ったときに手すりに腕や脚を打ち付けてけがをする可能性がある。全盲は少ないから
あまり配慮の方向性がわかっていなかったのだろうか。


仕事にしろ何にしろ、見えない人がどこまで何ができるかはわかってもらえるまでは
かなり警戒される。クロール25m30秒はかからないと言ってもへんちくりんな全盲お
ばちゃんの自己申告なんて眉唾物に違いないと判断されたのか。
確かに全盲の個人差は半端ないからその辺は仕方ないのかもしれない。


練習日から本番まであまり時間がなかったけれど、スタートだけは練習せねばと何度
か障害者プールに練習に行った。
しかしいつもスタートと共に必ず左に曲がってしまう。
すると見るに見かねたプールのスタッフが壁をけるところから曲がっていると教えて
くれた。ブラックゴーグルをかけているとどこに向かって泳いでいいかがわからない
のだ。

スタッフの人が言うにはまず壁に背中をつけて両手を正面に伸ばす。そこから一歩前
に出て右手だけを淵に持っていく。そうすると左手はゴールを向いているのでその方
向にけり出せばいいとの事だった。
そうなのだ。全く見えないとゴールの方向すらわからないので最初からポジションを
決めておかなければならないのだ。


当日はかなりの選手が参加するらしいのでヘルパーさんをお願いしてほしいと言われ
た。
確かに参加者はかなりの数。これでは私が見えないからと言って係りの人を独り占め
するわけにはいかない。


そして実際のレースが始まった。
25メートル、とにかく一瞬で終わってしまう。
スタートはお陰様であらかじめ練習していったのでそこそこうまくいったような気が
する。
でもやはり悲しいかな、クロールも平泳ぎも何度かコースロープにぶつかってしまっ
た。コースロープにぶつかると勢いが中断され失速してしまう。
見えないと泳力だけでなく、いかにぶつからずに失速を免れるかも課題になる。


記録はクロールも平泳ぎも申告したタイムだった。
背泳ぎの時は悲惨だったけれど、今回は大きな失敗もなく練習通りに泳げたと思う。

そしてやはり全盲のおばさんは私1人だったのでもれなく一等賞。金メダルをもらっ
て帰ってきた。盲人あるあるだ。


嬉しかったのは受付でスキークラブの友達で元パラ選手の人と盲学校時代の体育の先
生に会えたこと。さすが閉じた生態系、どこに行っても知り合いがいる。


めちゃくちゃ暑かったけれど、事故もなくヘルパーさんとお茶をして帰りました。

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