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最大の資産、「時間」をどう使うか 【城北高校特別授業から 後編】

皆さん、こんにちは。NVIC note編集チームです。
今回は、城北高校での特別授業の後編です。

前回は、人生における資産である「時間」と「能力」と「お金」、この交換サイクルを回すことが「投資」であると説明しました。

今回は、若者たちにとって最大の資産である「時間」をどう使うのか、奥野の経験に基づきアドバイスしています。

優先順位の決め方

いま、ちょうど「広義の投資」の話をしたところですが、皆さんはいま、そうは言っても高校1年生になったばかりで、色々とやらなきゃいけないことがあると思います。
デートもしなきゃいけないし、部活もありますし、それはそれで忙しい。皆さん普通にスマホを持ってるでしょうから、LINEとかメールのチェックもしなければいけない。

ここで、初めて「優先順位」というものを考える必要があるわけです。しかもそれを自分自身の「価値判断」に照らし合わせて考えていく必要がある。
じゃあ、どうやって「優先順位」を決めていきますか?ちょっと難しいですかね?

パレートの法則って、聞いたことのある人います? ほとんどいないですね。

例えばコンビニに行くと、ポテトチップスだけでたくさんの種類があります。何種類ぐらいありますかね?
恐らく10~15種類ぐらいあるかと思います。メーカーという観点では湖池屋とカルビーがありますし、同じ「うすしお味」でも湖池屋とカルビーでそれぞれ出してるものがあります。

でも沢山種類がある中で、実はカルビーの売り上げの、ポテトチップスでの売り上げのほとんどは、コンソメパンチとうすしおなんですよ。これは何を言っているかというと、「商品の売り上げの8割は、全商品のうちの大体2割で生み出されている」ということなのです。これを「パレートの法則」といいます。

「結果の8割は、大事な2割からつくられる」、これはものすごく重要な概念です。

もちろんビジネス上でも大事ですけど、普段の生活でも同様に大事なのです。
何を言っているかというと、「ほとんどの8割の出来事っていうのはあまり重要ではなく、大事な2割に集中しましょう」ということです。
逆に言うと、「大事な2割に集中することで、本当に得たい結果の8割につながる」のですね。
これは大抵のものが該当します。

例えば100人規模でいる会社を考えてみた場合、本当にその会社の業績に貢献している人というのは、全体100人のうち大体20人ぐらいの感覚です。残り80人の人はそれほど重要な仕事をしない人ばかりという場合が多い。これは典型的な例なのですが、実は社会一般に通じるものがあって非常に面白いですよ。

それではこの20人がものすごい優秀だと思って、20人の人を抜き出して新しい会社を作るとするじゃないですか。そうするとまたこの20人のうちの4人しか働かない・・・。常に「大事な2割が、結果の8割を決めていく」というのが、この「パレートの法則」、「80:20の原則」っていうものです。

いろんなものに当てはまるから、自分たちの生活のなかで意識してみると面白いかもしれないですよ。例えば将来アルバイトをしたときに、そのお店には沢山お客さんが来ているように見えるのだけど、実はいつも来る2割の常連客だけで、そのお店の経営は成り立っている。そのような色々な事象を目の当たりにすることができると思います。

それでは、その大事な「2割」をどのように決めればいいのか?
ここで先ほど話が出た、「価値」ベースで物事を判断できるようになると、より「投資」に近づいた考え方ができるようになります。

普段生活してると、緊急性が高いものってあるじゃないですか。
親から言われて、とか、あとは宿題がありますよね。例えば明日までにやらなきゃいけない宿題とか。これは紛れもなく「緊急性が高い」ですよね。

でもこれは「時間の緊急性がすごい高いもの」であるけれども、もし自分の価値観に照らし合わせた場合、本当に重要なのだろうか?こんな風に、「自分の価値の軸を持つ」ことを僕は提案したいです。

「自分にとっての価値」であって「他人の価値」じゃないですよ。
人が「これは重要だ」と言ってくる、押し付けてくる「価値」ではなくて、自分が本当にこれは重要なんだと思う「価値」そのもので、優先順位にかかる高低の判断をする。

重要性と緊急度でマトリクスを作ると、数学的に言えば以下の四象限に分けることができます。

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Ⅰ「緊急性が高くて、重要性も高い」もの
Ⅱ「緊急ではないけれども、実は結構重要」なもの
Ⅲ「緊急性は高いけど、それほど重要じゃない」もの
Ⅳ「緊急性もないし、重要でもない」もの

このなかでどれを1番優先して力を入れたいですか?

Ⅰ?なるほど。これが一番多いですね。

このⅠを優先させたい人がやっぱり1番多かったんですけど、緊急性が高くて大事なことってなると、実は結局やることになるんですよ。そう思いませんか?
例えばテストがありますよね。これはやっぱり大事なわけです。例えば来週金曜日にテストがあるとなったら、どっちにしたって勉強しますよね?
でも、時間に追われて結局一夜漬けになってしまって、身に付かなかったなんて覚えはありませんか?

そういう意味で、このなかで1番力を入れたほうがいいところって、実はⅡなんですよね。緊急ではないけれど、実は重要性が高いもの。

何故だと思いますか?

先を見据えて、コツコツ勉強しておくと、テスト勉強のときにすごく楽になりませんか?
簡単にいうと、ここのⅡの領域に集中することで、Ⅰの領域をどんどん減らすことができるのです。

Ⅰは見た目大きいように見えるけれども、Ⅱに集中することで、時間をかけて準備をすることになるので、Ⅰの領域っていうのをどんどん少なくなることができる。
加えてⅡに集中することで、このⅣの領域も小さくすることができるので、結果的にⅡに集中すれば、いずれやらなきゃいけないことに対して準備することができるということです。よって、「Ⅱの領域に注力」するっていうのが、実は最も効率的な動き方となります。

この概念は結構重要なので、覚えておいたほうがいいと思います。Ⅰの領域はどうせやるんだから、ほっといたってやるのです。でも追い込まれてやると、あんまりいい結果にならないですね。

緊急性は現状ないけれども、いまやっておいたほうがいいかなと思うこと、例えば読書とか旅行とかも多分そうだと思いますが、「自分の価値を上げること」は普段からやっておいたほうがいいですね。

ついでに言うと、「重要性がないもの」、例えばスマホのゲームとか、こういうものもどうしてもやってしまうんですよ。
うちの息子にもいつも言ってるんですけど、スマホは身近に置いとかないほうがいいですね。物理的に離したほうがいい。だから寝るときは必ず違う部屋に置いておくとか、電源を切っておくとか。そうしないとやっぱりなかなか人間って弱いもので、近くにそういうものがあると、誘惑に負けてしまうんですね。結果、本来やらなきゃいけないことがどんどん浸食されていく。
「本当はここに力を使わなきゃいけない」という時間が、どんどん失われていくのです。

「いや、もう絶対そんな重要度の低いことはやらない!」と思っていても、必ず誘惑に負けるんですね、人間というのは。
ということなので、それをどのようにコントロールしていくのかというのを自分で考えて、それをルール化するというのは結構大事だと思います。

アウトプットの重要性

それともうひとつアウトプットについて。勉強するときでも、旅行するときでも何でもそうですけど、とにかく「アウトプット」することを意識しましょう。

勉強って大体インプットじゃないですか。試験を受けるときに初めてアウトプットするわけですね。
でも、日ごろから勉強するときにどんどんアウトプットをしておくといいですよ。

よく僕なんかは中学の時に、友達と一緒に、友達と会話をしながら、歴史の年号の言い合いをしていました。例えば単語の言い合いとかチェックを友達としあうとかっていうのは、それはインプットしながらアウトプットしているということなんですよ。

アウトプットしないと人間って一生懸命やらないですから。勉強するときに、ちょっとこれで問題出してよ、とか、そのようなやり方で勉強をすると、ものすごくインプットの効率が上がると思います。

投資は知の総合格闘技

いま僕がやっているこの狭義の投資の話をちょっとすると、これって結構いい商売です。
いい商売です、というのはどういうことかというと、先ほどお話ししたみたいに、3,000億円を運用して10%儲かったら300億円になるわけですよ。結構すごくないですか?

でもそのためにはこういった「価値」だとか「価格」だとか、そういうことの修行をずっと積んでこないと、そんな世界にはなかなかたどり着けないわけです。僕はそういうことを10年以上、いや、10年どころじゃないですね。もっと長い間、ずっとその投資という仕事をやっています。

投資をするときに、「こういう事を高校のときに聞いておいたらよかったのになあ」と思うことが1つあるとすれば、やはり「高校のときの勉強と大学のときの勉強というのは、将来ものすごく活きる」ということです。

例えば、いま僕は海外の企業にも普通に投資しています。ということで海外の企業に行って、向こうの社長に会って話を聞いて、工場にも行って、そこの従業員の人と話します。当然英語で話します。
実は、もっと英語をちゃんと勉強しておけば良かった・・・というのは、今でもずっと後悔しています。

英語をしっかり身に着けるというのは結構難しいですね。何の目標もなくやみくもに勉強するとなかなか難しいですけど、「将来投資のような仕事するときには絶対必要だ」ということをもし知っていれば、もっとちゃんとやっていただろうなと。
単純にTOEIC何点とるとか、センター試験で何点とるとか、そういう話で勉強をしていてもなかなかちゃんとした英語って身につかないです。 

それから数学について。僕は数学が大好きでした。数学的な思考だとか論理的な思考っていうのはとても大事です。何をやるにしても数学はとても重要な科目だと思います。
とりわけいま僕がやっている投資という世界のなかでいうと、確率統計が重要ですね。なかなか日本の高校や中学もそうですけど、あまり確率統計はそれほど一生懸命やりませんよね。大学でも一生懸命やりません。
でも、僕は大学を卒業して会社に入ったあと、海外の大学院に行っていますが、MBAって分かりますか?いわゆるマスター(修士)ですね。これを取ろうとすると確率統計は避けて通れないですし、ものすごく叩き込まれます。

というのは、世の中の出来事というのは、全部確率と統計で説明ができるのです。投資は特に関係がありますね。「絶対勝つ投資」なんかあるわけないですし、ある程度の確率で勝ったり負けたりするわけです。その確率統計について本質的な議論ができないと、そもそも投資は無理です。ということで数字が重要です。

それから最も重要なのは、実は社会。
海外で、例えば経営者と話すときに、先ほどの話と若干矛盾しますが、実は英語は二の次でもいいと思っています。もちろん本当は英語ちゃんとできるに越したことはないですけれども、もっと大事なのは日本の歴史、文化だとか、日本の社会について。それをちゃんと伝えることができない人というのは、海外ではまるっきり尊敬されないということなんです。

「日本について語ることができないような人」、「日本の歴史について伝えることができない人」というのは、向こうでは「ビジネスができない人」とみなされてしまいます。
もしそのようなことを高校のときから知っていたら、もっと一生懸命日本の歴史を勉強したと思うのだけど、そういう教え方はあまりされてないですよね。

今までは「歴史は歴史」、「地理は地理」、「数学は数学」、「英語は英語」と教えられてるわけですが、実は僕たちがやってる「投資」においては、これらを全部必要とします。決して「投資」にかかる知識だけではないです。結局グローバルでビジネスをやるときには全てのことが求められるわけで、とりわけ投資の世界において結果を出したいと思うのであれば、英語であれ、数学であれ、歴史であれ、理科であれ、全て横断的な知識が求められるのです。

いわば、投資は知の総合格闘技なんです。そのように考えると、皆さんの日々の勉強も意味があり、身が入りませんか?

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ちょっと余談になりますが、もしこういう授業があったらいいのになあと思っているのは、「ブラタモリ」です。
あの番組、超面白いですよね。ブラタモリ見てる人? あ、結構いますね。
あれで地元であるとか、親の田舎とか取り上げられたりすると、面白いですよね。あの地理的な話と歴史的な話と、地学的な話が全部、ぶらぶら歩くなかで解きほぐされていく。
歴史と地理をしっかり結び付けながら、しかもそれを結構面白く話してくれるというのはすごくいいなと。

このような知識とか体験というのは皆さんが社会に出ていく過程で絶対必要になります。それは試験を受けるためじゃないです。そのような教養的な部分がないとビジネスの世界では全く通用しないと思った方がよくて、「そういえば、そういうことを高校1年生のときに言ってたおじさんがいたなあ」といつか思い出してくれれば本望です。

投資と社会の関係

そろそろ終わりの時間が近づいてきました。今までの時間で、「時間」と「能力」と「お金」というのがくるくる回りながら皆さんは生きていく、という話をしてきました。
でもまだ皆さんは高校1年生だからお金は自分の思い通りには当然ならないわけですけれど、これから数年したら、個人レベルで「時間」と「能力」と「お金」というのをくるくる回しながら自分を高めていく、自分の価値を上げていくことになると思います。

「社会に出る」ということは一体どういうことかというと、特に会社の場合はそうですけど、個人同士が惹かれ合って、1+1が3とか、5とか、そういう世界に変化していきます。これが「社会」です。
個人個人で得られるもののためだけに皆さんの人生があるわけではなくて、こうやって結び付くことで世の中がより良いものになっていくというのが社会なのです。そのときに最も重要なのはいったい何か?

「お金」じゃないのです。これだけは強調しておきたい。人と人が結び付くのに1番重要なのはそのときに皆さんが「いくらお金を持っているか?」ではなく、ここでは「能力」という書き方をしていますけど、もうちょっと広い意味でいうと、人間としての魅力、いわゆる「人間力」なんです。

こういうものに人というのは惹かれ合うのです。
「この人お金持ってるから付き合おう!」というのは、実にせせこましいじゃないですか。そうじゃないんですよ。
「この人と組んだら、もっと面白いことができるんじゃないか、もっと、こんな風に世の中変わるんじゃないか?」ということって結構ありませんか?

だからそのようになるためには、自分が「能力」を持っている、いわゆる「人間力」を兼ね備えている必要があるわけです。
将来を見据えたうえで、いまはまだ高校1年生だけど、先ほど話が出た「優先順位」を意識しながら生活してもらいたいなというのが伝えたい部分です。

繰り返しになりますけど、いまの皆さんにとっての最大の資産は何か。それは「時間」しかないです。いま有効に使えるものは「時間」しかないのです。「お金」はまだないし、「才能」だってこれからだから。

「時間」をいかに使って、自分の「才能」と自分の「価値」を上げていくか?これが今、皆さんが最優先で考えなければいけないことです。だからこそ、あらゆることの優先順位をつけて、1番重要な「2割」はいったい何なのか?を考えてみてください。

別にそれが勉強じゃなくてもいい。部活でもいいと思います。勉強だけやれ、なんて一言も言ってないですからね。野球が重要だと思えば野球に集中すればいいんです。

でも大事なことは「集中」することです。あれもやって、これもやって、ではなかなかうまくいきませんので、優先順位をつける。それで、とにかく打ち込む。そうすることで恐らく違う風景が見えてきます。

つまり「価値」が上がる。「自分の価値を上げること」に集中しましょうということです。

番外編(やってはいけない3つのこと)

以上がお話ししたい事全てなのですが、ちょっと「お金」に関して補足します。もし、おうちでお父さん、お母さんに「今日はどういう授業受けたの?」と言われたら、この3つは必ず言ってもらいたいです。

甘い話はない。

簡単に儲かる話は絶対にないです。
皆さんはまだ新聞等をあまり読んでないかもしれないけれど、大体年に3、4回は投資詐欺に引っかかった人の話が出てきます。僕から言わせれば、あんなの引っかかる人が悪い。引っかける人はもっと悪いですけど。
「そんな世の中簡単に儲かる話なんてあるわけがない」ということは絶対に肝に銘じておいてください。これから先、ひょっとするとお金に関しておいしい話がやってくるかもしれません。でもその時は、おいしい話は絶対嘘だと思ったほうがいい。そんなことは絶対ない。大体おいしい話を君たちに持ってくる理由はどこにもないですよね?だっておいしい話があるんだったら、その人だけで普通その話を独占しますから。

借金はしちゃいけない。

基本的に人から金を借りるとその人に支配されてしまうので、できるだけ金は借りないほうがいいです。

資格とか会社っていうのは、あてにしないほうがいい。

頼れるのは自分だけだと思ってください。というのも、僕は洛南高校を出て京都大学に入って、その当時、銀行のなかではかなりいい銀行だと言われていた、日本長期信用銀行という銀行に入ったんですよ。
でも、日本長期信用銀行は日本で1番最初に潰れた大銀行です。
そのようなときに結局あてになるのは自分の腕と、さっき言ったように「みんなで一緒にやろうぜ」という感じで寄ってきてくれるお友達なり、仲間、ネットワークっていうのが最も重要なものになると思います。

以上です。ありがとうございました。


さて、2回に分けてお届けした「城北高校特別授業」いかがでしたでしょうか。
このメッセージが高校生たちにしっかり届いたのか、正直言って確証はありません。
でも、30人の生徒さんのうち、5,6人は目を輝かせて、必死にメモを取りながら聞いてくれたのは間違いありません。
少し眠そうに聞いていた他の20数名も、何年かして社会に出た後に、「そういえば昔こんな話聞いたな」と、思い出してくれればいいなと思います。

「今日の奥野さんは、なかなかいい話をしていた」

事後アンケートの中の、若干上から目線のコメントに頼もしさを感じつつ、次なる教育機会に向けてプログラムのブラッシュアップを図っています。