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人生の選択は、全てが投資 【城北高校特別授業から】

皆さん、こんにちは。NVIC note編集チームです。
今回は、先日舞台裏を見ていただいた、城北高校での特別授業、その内容をお届けしたいと思います。

初めての高校生向けの授業、それも中学を卒業したばかりの1年生向けということで、奥野もどのような言葉で話したらよいのか、事前に熟慮を重ねたようです。

まだまだ荒削りの内容ですが、NVIC なりの「若者向け投資教育」、是非ご覧ください。

自己紹介

みなさんおはようございます。
農林中金バリューインベストメンツの奥野と申します。

実は何を隠そう僕も男子校出身なんですよ。洛南高校という、京都にある高校です。
皆さんは最初男子校に入ったときに、周りが男子だらけでびっくりしませんでしたか?
その洛南高校も、いまや共学になってしまったという話を聞いて、隔世の感を覚えますね。

自らの出身高校の洛南高校ですら卒業後戻ったことがないのに、こうやって長原さんのご縁があって、このような機会を頂きました。
実は高校で教壇に立つのは今日が初めてなんです。ただし大学では授業は行っていて、京都大学、一橋大学、東京大学等で定期的にやっています。大学だと投資について、ちょっと難しい話をしてしまうのですが、今日は皆さん中学を卒業したばかりの高校1年生なので、そんなに難しい話はしないようにしますね。

うちの息子がちょうどいま大学1年生になったところで、高校3年生の時に投資について話した時があったんです。すると、「結構面白い!」という反応だったので、じゃあちょっと調子に乗って(?)一般の高校生向けにも話をしてみたいと思い、今日はここに来させて頂きました。教頭先生、このような大変貴重な機会を頂きまして、本当にありがとうございます。

まずは自己紹介なんですけど、僕はいま資産運用の仕事をしてます。まさに「投資」の仕事ですね。
約3,000億円のお金をお客様からお預かりして、それを「株式」というもので運用しています。
結果はいいときもあればいまいちのときもあるんですが、ならすと大体5%から10%ぐらい儲かります。金額にすると1年で150億円とか300億円ぐらい、お客さんにリターンを提供できます。

金額が大きいので、皆さんはちょっと想像がつかないかもしれないですけれども、今日はそういった、いま僕がやっているような「狭義の投資」、狭い意味での投資じゃなくて、もっと広い意味での投資、「広義の投資」のお話をしていきたいと思います。


投資のイメージ

皆さん、投資って、どのようなイメージを持っていますか?

この中で、「投資」を実際にやったことがある人いますか?恐らくいないですよね。皆さんまだ高校生なのでお小遣いをもらってる身ですよね。

それではご両親が投資をしてるのを聞いたことがある人は?ちょっといますね。
みなさんのご両親はひょっとすると投資をやっているのかもしれない。でも、あんまり家族でお金の話ってしないんじゃないかと思います。

「投資」って、モニターを見ながらちょこちょこっと売ったり買ったりして儲けてるというようなイメージを持っている人?
まだみなさん「投資」そのものについて触れたこともないので、このイメージすらも持ってないかもしれません。
「投資」って聞くと、「楽して儲けているんじゃないか?」そんなイメージを持っている方が結構多いと思いますが、実はそれが「狭義の投資」の外れたところにあるイメージです。

これは「投機」と言って、簡単にいうと「賭け事」ですね。
宝くじを買ったりとか、競馬に行ったりとか、そういうことと「投資」というのを混同している人が結構多いと思います。
ここを長原さんと話しながら、「いやいや、そうじゃないんだよね」ということを伝えていきたい、というのが、今日の授業の1番の目的です。

ということで今日は、「広義の投資」とは一体どういうことなのか?
それがみなさんの生活にどのように関わっていくのか?
そしてその土台にある、「価値」というものについて考えてみたいと思います。


価値って何?

「価値」というとちょっと難しいかもしれないですけど、「価値は価格とは違う」ということをお話ししていきたいと思います。

それから、「広義の投資」の文脈の中で、高校1年生である皆さんが学校生活を送っていく過程で、どのように「優先順位」を付けていけばいいのか?将来どうやったら賢い投資ができるようになるのか?そんな話もしていきたいと思っています。

ここでちょっとクイズです。

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さて、この中でどれが1番「価値」が高いと思いますか?
左上のあるのはフェラーリですよね。左下にあるのが、結構高そうな家。
この中で、どれが1番価値が高いというふうに考えますか?

え、右上の人たち?人?それはどういう意図で選んだの?

「人が協力することが単純なモノより価値が高いから。」

すごい!なるほど! そんな風に考えるのはなかなかすごいですね。
僕なんか単純だから、フェラーリかなあと。多分これ新車で買ったら3,000万円ぐらいですかね。
家、買ったら多分3億円ぐらいですかね。そうすると、当然価値が高いのは3億円の家だろうと単純に考えてしまいます。
多分そのような答えが皆さんから出てくるかなあと思ったんですけど、予想に反して全然出てこなかったのでタネ明かしをします。

3,000万円とか3億円とかっていうのは、「価値」ではなくて「価格」なんです。
「価格」というのは、「それを払えば、これが手に入る」といういわゆる「モノ」に付随している概念。
それに対して「価値」というのは、自分で決めるしかない。

例えば、右下に「お母さんが作ってくれたお弁当」があります。
お母さんが君のために毎日早起きしてくれて作ってくれて、しかも栄養とかもちゃんと考えてくれていて、それは君にとってはものすごい価値があるものかもしれないけど、そのお弁当そのものは他の人にとってはそれほど価値があるものではないですね。

違う例でいうと、例えば自分が家で飼っている猫ちゃん。それは自分にとっては、すごく癒しの、本当にもう友達、家族の一員だけれども、隣の家の人からすると、単なる猫なんです。

分かりますよね?これが「価値」は人によって違うということなんです。
価格は、実はみんな一緒だったりする。フェラーリが3,000万円だったら3,000万円なわけですよ。

「価格」っていうのは君が払うもので、他の誰かが決めるものですけど、「価値」というのは、その個人個人によって全然違っていて、受け取り方によっても違うし、しかも努力次第ではそれを大きくすることも小さくすることもできる。

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ここを間違えてしまうと、例えば「価格」だけを見て安いものをたくさん買ってしまう。
ことわざで、「安物買いの銭失い」っていう言葉がありますよね。どういう意味か知ってますか?
要は安いものばっかり沢山買っている人って、結局自分の欲しいものが本当は手に入れられていない。

例えば僕の奥さんはイトーヨーカドーに行って、割引のものばっかり沢山買ってしまうんですね。
しょうゆを買おうと思ってスーパーに行くのだけど、小さいサイズのしょうゆだとあんまり割引になってない。でも大きいサイズ、1リットルとかのサイズのしょうゆだと、2割引きになっていたのでその1リットルのしょうゆを買うのだけど、結局この1リットルのしょうゆを最後まで使い切ることができない・・・。
これが「安物買いの銭失い」です。

多分君たちの家でも普通に起こっている話で、お父さんとお母さんが結構そういうことで喧嘩してるんじゃないかな?そういう経験ないですか?安物買いの銭失い。例えば、君たちがお小遣いで何か買おうと思ったときに、「これは高いな、もうちょっと安かったら買うのに」ということあります?
でも「それって本当にほしいのかな?安くなきゃ買わないっていうものは、本当に自分が欲しいものなのかな?」と考えたことないですか?
実はこの部分、すごく大事なポイントなんですよ。

迷う理由が、「もうちょっと安かったら買うのに」という、単純にその「価格」だけの問題で迷ってるんだったら、基本的にやめておいたほうがいいですね。
「価格に関係なく買いたい」と思えるものだけを買えば、それは1番自分の価値に合うもので、それはつまり「自分の価値で買い物をしている」わけです。

この「価値」に合うものが、つまり「価格が高かろうが安かろうが関係ないと思えるもの」を買うのが、正しい買い方だと思う、ということをうちの奥さんに言っても、いつもあんまりピンとこなくて、いつも大体バーゲン品ばっかり買ってくる。

このことわざって英語にもあるんですけど、知ってる人いますか?
“Penny wise pound foolish”っていうんです。
“penny”というのは向こうのお金でいう、大体1円とかに相当するものですね。
“pound”というのは、こっちでいう100円に相当するものです。
要は、「細かいところでは結構賢い使い方をしていると思い込んでるけど、実は大きくお金を失っている」っていうことなんです。

いずれにしても、その「安物買いの銭失い」というのが典型的であるように、「自分の価値観」というのをしっかり持ってないと、必ず失敗します。だから、これから皆さんは、「本当にそれは心からほしいものなのかどうか、その価値というのは一体どれぐらいなのか」というのを、常に考えて行動することをお勧めします。

投資とは何か?

「価値」ということが分かると、次は「投資」という話になります。

「今、これを買う」という行為を考えた場合、これは「価格」を支払って、「価値」を手に入れるという行為ですね。ところが、「投資」という行為は、この「時間」を「ずらす」ことなのです。要は、今は我慢して出すものを出して、あとで「価値」を手に入れる。これが投資という行為です。

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例えばアルバイト。あれ、皆さんまだアルバイトとかはしちゃ駄目なんですかね?なるほど、いまはまだ駄目なんですね。
でもこの先高校を卒業して、大学に入ったら多分アルバイトをするじゃないですか。アルバイトを普通にすると、自分の「時間」をバイト先に差し出して、そのかわりに「アルバイト代」を手に入れるっていうのも実は投資の行為です。
例えば皆さんが1時間マクドナルドでアルバイトをしたら1,000円もらえますよね。大体ファーストフードでアルバイトしたらまあ、こんな感じの相場かと思います。

「時給で1,000円もらえます」ということなんですけど、仮に「英検1級を取る」ということに、同じ1時間を費やした場合にどういうことが起こりますか?英検1級を持っていれば、それをもって例えば通訳になれたりとか、いろんな人が雇ってくれたりとか、これからその先ずっと、この人は英語が喋れるんだっていう、ある意味「お墨付き」をもらうことができるわけですね。

そうすると、「1時間をどのように使うか?」ということを考えてみた場合、マクドナルドだったら1,000円しかもらえないんですけど、英検の勉強に費やしたら、将来的に、恐らく時給3,000円とか4,000円とかもらえる可能性が広がる、ということなんです。

何が言いたいかというと、「投資」をするときに、目先の1,000円を取りに行くよりも、今ちょっとこの1,000円を我慢して、自分の能力を増やしていくことで、より高い収入を得る可能性が広がる、というのがこの話の趣旨です。
だからこれも「広義の投資」なんですね。

先ほど言ったみたいに、僕がいまやっている3,000億円を投資して10%を儲けてます、という狭い意味の、お金だけの投資じゃなくて、もっと広い意味での投資という考え方がありますよ、ということを言いたいです。とりわけ皆さんの場合、いまはお金は持ってませんよね。お父さん、お母さんからお小遣いをもらっているだけですから。
じゃあ、お金を持っていない皆さんの最大のアセット(資産)は何でしょうか?

そう、皆さんの現状における最大の資産は実は「時間」なんです。

「時間を有効に使いましょう」とよく言われませんか?
時間を有効に使うことで、それを能力に変えることができるということなのです。今皆さんがやっている「勉強」という行為も、そのうちの1つだと思います。これから例えば勉強して資格を取りに行くということも、「時間」を「能力」に変える行為ですね。

今は君たちの生活のなかで、「お金」というものは切り離されています。
「お金」って、今は何の心配をせずともお父さんお母さんがくれるからいいのですが、大学に入って、その後社会人になったら、「お金」も含めて自分で考える必要がありますよね。

そのときに、「能力」を持ってないと「お金」が手に入らないわけです。
「お金」がないと当然のことながら生活もできないわけですね。
実はこの「時間」と「能力」と「お金」っていうのは、常に交換することができます。

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「お金」で「時間」を買うこともできますし、実は「お金」で「時間」を買うこともできるんです。

例えば、自分が本来やるべき急を要する仕事があるんだけど時間がないといった場合、お金で人を雇うことで、自分は他にやらなければいけない仕事や他にやりたいことをすることができます。
そういう意味で、「お金」で「時間」を買うこともできるし、「お金」で「能力」を買うこともできるし、当然ながら「能力」を使って「お金」を稼ぐこともできます。

この3つの資産、「時間」、「お金」、「能力」というものが、皆さんの周りをくるくる回っていくわけですけど、皆さんは現時点で持っているものはここの2つ「時間」と「能力」しかないので、ここの2つをいかにうまく使っていくかが、今皆さんができる最大の「投資」なんですね。

すると、いろんな行為は全部この「投資」という概念で説明できます。これが「広義の投資」です。

例えば「就職する」という行為は、「持っている時間」と「能力」を会社に差し出して、収入を得る行為。要は「時間」と「能力」を「お金」に換える行為ですね。

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多分、このクラスの中で1人か2人くらいの人は大学卒業したら、会社を興そう、起業しようと考える人も出てくるかもしれません。それも結局その人が持っている「能力」や「時間」や「お金」全てを差し出すことで、大きな収入を得ようとする行為なわけです。

例えば、Amazonをつくったジェフ・ベゾス。知ってますか?すごいですよね。いまAmazonという会社は約100兆円で評価されています。ジェフ・ベゾス個人の資産も莫大になってますよね。
彼が30歳くらいのときに、それまでの投資銀行でのキャリアを捨てて、自分の能力と時間とその時持っていたお金の全てをAmazonという会社に「投資」した結果です。
このような成功の在り方もあるわけです。

いずれにしても、この「自分が差し出すもの」をいかに「価値」に変えていくかが重要なんですが、その時に皆さんが「自分自身の価値観」を持ってなければスタート時点にも立てない。
先ほど話が出た、「安物買いの銭失い」があるので、もしそのようなことがあれば改めた方がいいですね。

(後編に続く)