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#2 分子栄養学とは? 分子栄養学の基本をわかりやすく解説!

分子栄養学基礎③ なんとなく体調が悪い、原因となる病気が見つからない不定愁訴は、栄養欠損が原因で招来する

では、もし栄養素の摂取量が不足し、細胞で利用出来る栄養素が足りなくなってしまったらどうなってしまうのでしょうか?

細胞は常に栄養素である分子を利用して活動を行っているため、栄養状態が悪くなったり不足したりしてしまうと、本来細胞が行うべき活動がうまく行えなくなります。

この細胞の働きが低下すると、代謝や修復力の低下に繋がり、強いては心身の異常や不調を引き起こす原因となってしまうのです。

例えば、女性に多い不調として「身体が冷える」「眠れない」「疲れやすい」「やる気が出ない」「生理不順」などの不調があります。これら不調の原因の1つとしては、鉄欠乏性貧血を始めとした潜在性のミネラル不足が関係していることが挙げられます。

鉄欠乏性貧血とは、その名の通り鉄の摂取量が少ない場合や不足している場合に起こる貧血のことです。この鉄欠乏性貧血は、特に月経のある20代〜40代日本人女性のおよそ7割が鉄欠乏性貧血もしくは隠れ鉄欠乏性貧血といわれています。

この理由としては、女性は毎月の月経によって定期的に出血してしまうことに加え、食べないダイエットや菜食主義、加工食品の摂取量増加など食生活の変化によって、鉄の摂取量が不足してしまっている事があげられます。そして、この貧血の中でも特に気をつけたいのが、後者の「隠れ鉄欠乏性貧血」です。

隠れ鉄欠乏性貧血は、またの名を「潜在性鉄欠乏性貧血」「隠れ鉄不足」「隠れ貧血」などとも呼ばれ、貯蔵鉄である「フェリチン値」のみが低値を示している状態のことです。

通常、貧血を診断する検査では、「ヘモグロビン」や「ヘマトクリット」「赤血球数」などの数値のみで貧血の診断を行っています。これらの数値が基準値を上回っている場合では、基本的に「問題なし」とされてしまうことが一般的です。

しかし、隠れ貧血の状態では、「ヘモグロビン」や「ヘマトクリット」「赤血球数」などの数値は正常範囲になっていても、体内の鉄の貯蔵量である「フェリチン」だけが少なくなっています。

フェリチンは、出血してもすぐさま貧血とならないよう、ヘモグロビンや赤血球を作るための鉄を貯める役割を担っています。このフェリチンの量が少なくなってしまうと、いざ出血してしまったときにヘモグロビンなどに使う鉄が十分にありません。

すると、通常時は貧血と診断されていなくても、月経などで出血した場合には、すぐにヘモグロビン値が低下してしまい、貧血に陥ってしまうのです。

このように、貯蔵鉄であるフェリチン値が低く、出血するとすぐに貧血となってしまう状態が隠れ貧血です。このフェリチン値の検査は、通常の貧血検査では殆ど行われていません。病院の貧血検査では問題なしとされていても、潜在的に貧血の状態になっていることから、隠れ貧血といわれています。

この隠れ貧血の問題点は、貧血と診断されていなくても貧血と同じ不調が引き起こされる事が挙げられます。鉄欠乏性貧血は、めまいや息切れ、疲れやすい、やる気が出ない、身体が冷えるなど、様々な不調が引き起こされる原因です。

加えて、隠れ貧血による不調は徐々に進行していくことから、これら不調がある事に身体が慣れてしまって、頭痛やめまい、倦怠感や疲れやすいなどの症状を抱えている事に気がつかない場合もあります。

では、なぜ貧血によってこのような不調が引き起こされるのでしょうか?

貧血によって様々な不調が引き起こされるメカニズムとしては、①鉄不足によって全身に運ぶ酸素の量が低下してしまうこと、②鉄と酸素は細胞内にあるミトコンドリアがエネルギーを作り出すために必要で、鉄不足だと作り出せるエネルギー量が低下してしまうこと、③鉄は脳の神経伝達物質の合成に関わっていて、鉄不足だと脳の神経伝達物質の合成に影響が出てしまうことが挙げられます。

具体的には、細胞内にある「ミトコンドリア」と呼ばれる部分が、5大栄養素を元にATPと呼ばれるエネルギーの元を作り出していることが関係しています。このATP(アデノシン三リン酸)は、筋肉を動かしたり、体温を維持したり、嗅覚や味覚の機能、先ほど解説した細胞の同化と異化に至るまで、あらゆる事に使われているエネルギー源です。

このミトコンドリアがエネルギーの元となるATPを作り出すためには、材料となる5大栄養素に加えて、酸素が必要です。鉄はミトコンドリアがATPを作り出す際の補酵素として必要なほか、ヘモグロビンの構成成分として全身の細胞に酸素を運ぶ働きをしています。

もし貧血になってしまうと、ミトコンドリアが利用出来る酸素や鉄が少なくなってしまいます。この結果、エネルギーの元となるATPの産生量が減少して身体がエネルギー不足となり、疲れやすくなったりめまいがしたり、やる気が起きなかったりと様々な不定愁訴に繋がってしまうというわけです。

また、鉄はミトコンドリアでエネルギー産生として使われる以外にも、脳の神経伝達物質の合成にも使われています。

例えば、神経伝達物質を合成するためには、材料として「アミノ酸」が必要です。このアミノ酸は、肉や魚などのタンパク質を胃で分解し、小腸で吸収することで補給しています。このアミノ酸にはおよそ20種類ありますが、そのうち脳の神経伝達物質として利用しているのは「L-グルタミン」と「L-フェニルアラニン」「L-トリプトファン」です。

この3つのアミノ酸がそれぞれ「鉄」や「葉酸」「ナイアシン」などを利用して「L-グルタミン酸」や「L-チロシン」「5-HTP(ヒドロキシトリプトファン)」などに合成され、最終的に「GABA」や「ドーパミン」「セロトニン」や「メラトニン」などに合成されて利用されています。

よく、「セロトニンは幸せホルモン」だということをどこかで聞いたことがありませんか?セロトニンはノルアドレナリンやドーパミンなどを調節する以外にも、分泌されることで多幸感を得られるホルモンでもあります。このセロトニンから合成される「メラトニン」は、体内時計を司っていたり質の良い睡眠を司っており、副交感神経を優位にしてリラックスするために必要なホルモンです。

これらセロトニンやメラトニンなど、脳の神経伝達物質を合成する際には、必ず鉄が必要です。例えば、「L-フェニルアラニン」から「L-チロシン」に合成する際には鉄が必要ですし、「L-トリプトファン」から「5-HTP(ヒドロキシトリプトファン)」に合成する時にも鉄が必要です。この時に体内で鉄分が不足していると、脳の神経伝達物質を合成するための材料が足りなくなってしまいます。すると、自律神経の乱れやうつ症状を引き起こし、感情が抑えられない、イライラする、頭痛やめまいがするなど様々な体調不良へと繋がってしまうのです。

このように、特定の栄養素(分子)が不足することによって、心身共に大きな不調が引き起こされる原因となります。つまり、不調とはこの栄養素である分子が乱れた状態のことです。

逆に生体内にあるべき分子を十分な濃度で保つことが出来れば、生体機能と自然治癒力が向上し、病気を防ぐことが可能になります。分子栄養学は、この不足した栄養素を十分に補うことで、身体が本来持っている機能を取り戻す療法です。

ただし、鉄が足りないからと言って単に鉄を補給すればよいわけではありません。貧血は単に鉄の摂取量が足りないだけでは無く、その根本には消化吸収能の低下や自律神経の乱れ、腸内環境の悪化など、貧血の原因には必ず理由があります。

この根本原因からアプローチし、生体内の分子の乱れを整えていくことが、本当の分子栄養学的アプローチです。

鉄欠乏性貧血と聞くと単に「鉄分の摂取量が足りないだけ」と思われるかもしれませんが、貧血は鉄分が足りない以外にも、様々な原因や栄養欠損が関係しています。

例えば、ピロリ菌に感染している場合や、婦人科疾患による過多月経、スポーツにおける溶血、自律神経の乱れによる消化吸収能の低下、消化管からの出血、タンパク質やビタミンB群、亜鉛などの栄養欠損など、様々な原因が複雑に絡み合って発生しています。

特に重度の貧血を引き起こしている場合には、消化管の出血や婦人科疾患など出血を伴う何らかの疾病が隠れている可能性があります。貧血を改善する際には、これら出血原因となっている疾病から先に対処する必要があるため、まずは疑わしい原因を特定するための検査を受けることが重要です。

また、造血を行うためには鉄分以外にもタンパク質やビタミンB群、亜鉛、セレン、マンガンなど様々な栄養素が必要です。鉄分を十分に補給しても、これら栄養素が足りない場合や、十分に消化吸収出来ない場合でも貧血となる場合があります。

この消化吸収に問題が起こる原因としては、先に挙げたピロリ菌の感染やIBS(過敏性腸症候群)、ストレスや自律神経の乱れ、甲状腺機能の乱れなど、様々な原因があります。このような問題を抱えていた場合は、問題となっている疾病や症状の対処も同時に行う必要があります。このため、分子栄養学では貧血の方に鉄分のみを単体で摂取させることはありません。また、フェリチン値の単体項目のみで貧血かどうかを判断することはありません

フェリチン値は肝臓病などの炎症性疾患や、リウマチなど自己免疫性疾患などの炎症でも上昇します。フェリチン値が上昇していても、鉄が足りているとは限りません。このような理由から、貧血の判断は関連項目や病態、生活習慣を含めた幅広い検査結果を基に解析し、その方それぞれに最適な分子栄養学的アプローチを判断する事が重要です。単にフェリチン値のみを見て貧血かどうかを判断し、アプローチを行う事は、分子栄養学ではありませんのでご注意ください。



※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓


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