見出し画像

#5 分子栄養学とは? 分子栄養学の基本をわかりやすく解説!

分子栄養学基礎⑤-2 摂取する栄養素は必ず天然由来で、かつ前駆体であること

栄養素の活性型と前駆体の違い。分子栄養学では、必ず「前駆体」を用いましょう。

次に、栄養素の活性型と前駆体の違いについてです。栄養素には、同じように見えても「活性型」と「前駆体」があります。食品などに含まれる栄養素は、体内に入ってもそのままの形では働くことが出来ません。いったん身体の中で働ける形(活性型)に変えられてから、やっと働けるようになります。

前駆体は、この活性型になる前の状態を言い、食品やサプリメントに含まれる栄養素のことです。体内では、酵素の働きによって必要に応じて前駆体から活性型に変換されて利用されています。対して活性型の栄養素とは、骨粗しょう症の治療に用いられているビタミンD製剤や、ニキビの治療薬として使われている「ビタミンA製剤」などです。お薬で使われる栄養素は、既に活性型として配合されているため、速効性があり、誰に対しても同じように効果が期待出来ます。

例えば、ビタミンAには「レチノール」「レチナール」「レチノイン酸」という3つの種類があります。また、ビタミンAの一種と言われているβカロテンも必要に応じてレチナールに変換されています。このうち、「βカロテン」「レチノール」が前駆体で、「レチナール」と「レチノイン酸」が活性型です。(※正確にはレチノール、レチナール、レチノイン酸共に活性型ですが、ここでは分かりやすくするためにレチノールを前駆体としています)

レチノールとレチナールは主にレバーや魚の脂肪部分、肝臓部分に含まれていて、普段私達が食品から得られるビタミンAです。また、βカロテンは主に緑黄色野菜に含まれています。これらは体内で必要な量を必要なだけ、必要に応じて「レチナール」や「レチノイン酸」に変換(活性化)されて利用されています。

対して、皮ふ科などの治療で用いられているのが、既に活性型のビタミンAである「レチノイン酸」です。レチノイン酸には細胞の分化・増殖を促進し、皮膚の細胞分化やターンオーバー(新陳代謝)を調節する働きがあります。このことから、主にニキビの治療薬として使われています。

このように聞くと、栄養素は前駆体で摂らずに活性型で摂った方が効果が高いのでは?と思いますよね。しかし、活性型で摂った場合は身体が本来持っている調節機能を無視して栄養素が働いてしまいます。そのため、場合によっては栄養素の働きをコントロールできなくなり、副作用が出たり逆に生体内の分子や代謝が乱れたりしてしまう原因になるのです。

このため、活性型の栄養素と前駆体の栄養素では、同じ栄養素に見えても全く働きが異なります。薬として使われる活性型の栄養素は、体内での栄養素の働きを強制的にコントロールするのに対し、前駆体である栄養素は、どのように利用するかを生体内のコントロールに任せることが出来ます。

分子栄養学では、生体内でコントロールできない活性型の栄養素を摂取するのでは無く、前駆体を摂取して栄養素の働きは身体に任せることが重要だと考えています。


分子栄養学と薬物療法の違い

薬物療法

  • 既に活性化したもの(薬物)を投与する

  • 栄養素や体内での働きを強制的にコントロールする

  • 速効性がある、誰にでも同じように効果が期待出来る

→副作用がある


分子栄養学

  • 天然物を投与する

  • 栄養素の利用は生体内のコントロールに任せる

  • 速効性は無いが、人それぞれにあった効果が期待出来る。

→副作用が少ない


もちろん、活性型の栄養素である薬がすべて悪いと言っているわけではありません。人によっては酵素の働きが弱く、栄養素を摂取しても体内で十分に栄養素を活性化できない人もいます。このような個体差や状況によっては、活性型である薬を用いることも必要です。

しかし、私達の身体は本来、栄養素を必要に応じて、必要な分だけ活性化して使う機能が備わっています。この機能が乱れていることこそが「分子の乱れ」であり、体内の分子が本来あるべき正常な状態ではなくなる事です。

このような1つの栄養素が体内で活性化されるプロセスには、タンパク質や様々なビタミン・ミネラル等様々な栄養素が関係しています。どれか1つでも欠けると正常なプロセスが行えなくなることから、このような栄養欠損が「分子の乱れ」に繋がります分子栄養学では、不足している栄養素を至適量補給することによって「分子の乱れ」を改善し、身体本来の機能を取り戻す療法です。

単にこの栄養が足りないからといって、安易に活性型の栄養素である薬を用いることは、むしろ体内の分子を乱してしまうことに繋がります。活性型の栄養素(薬)は、本来の身体が持っている調節機能を無視して栄養素が働いてしまうことから、日常的な栄養補給の用途として使うべきではありません。活性型の栄養素(薬)と前駆体の栄養素では、全く役割が異なるのです。

このように、同じ栄養素に見えても、その分子構造や製造方法、天然や合成か、加工がされているか、活性型か前駆体かでも働きが大きく異なります。

栄養素は体内で酵素と結びついて初めて利用出来る状態になります。そして、それらが身体の中で自由にコントロール出来なければなりません。そのためには、限りなく天然に近い形である事が必要です。人工的に合成された栄養素や、もともと天然物を使っていても保存性を良くするために誘導体をつけたり加工したりしたものでは、体内で酵素と結びつけずに、異物として排泄されたり効果が弱まったりしてしまう可能性があります。

そのため、分子栄養学を実践するときは、必ず天然由来で、かつ前駆体の栄養素を摂取することが重要です。この違いを理解することは、分子栄養学を理解する上で非常に重要となりますので、是非覚えておいてください。

ちなみに、ビタミンAといえばよく過剰症について言われることがあります。ビタミンAをサプリメントなどで摂り過ぎると、死に至るなど危険が伴うというものです。

この点については、前駆体である「βカロテン」や「レチノール」ではそのような危険性はありません。なぜなら、副作用の報告のすべては活性型である「合成のレチノイン酸」を大量投与した結果であって、決して「レチノール」や「βカロテン」でテストされたものではないからです。

ビタミンA過剰症についての注意喚起では、その情報の多くが活性型のレチノイン酸と前駆体である「レチノール」「βカロテン」などを混同しています。基本的にレチノールなど前駆体のビタミンAでは、活性を持たないことから安全性が高いビタミンAです。

加えて、「レチノール」と「レチナール」は体内で必要に応じて相互に変換することができ、体内でビタミンAを運ぶ際や貯蔵する際にも「レチニルエステル」というエステル化(コーティングのようなもの)が行われます。例えビタミンAを摂りすぎたとしても、体内では「レチナール」を活性の低い「レチノール」にしたり、レチニルエステルという非常に安定性が高い状態にして肝臓に貯えることが出来ます。

そのため、前駆体である「レチノール」や「βカロテン」をサプリメントで摂ったとしても、基本的に過剰摂取の心配はありません。

また、体内では必要に応じて「レチノイン酸」に活性化して利用されますが、この体内で作られる「レチノイン酸」と薬で用いられる「レチノイン酸」の作用は異なります。

例えば、体内でレチノイン酸が生成される場合、その生成量やタイミングは生体の調節機構によって厳密に制御されています。一方、薬など外部から投与される場合は、一度に大量のレチノイン酸が体内に供給されるため、自然な生体調節とは異なる影響を及ぼす可能性が高くなるのです。

つまり、体内で作られるレチノイン酸は、作られる量や作られた後の分解量、分解するタイミングなどを身体がコントロールできるのに対し、外部から投与したレチノイン酸は、身体がコントロールする事が出来ません。このため、外部から投与するレチノイン酸の作用と、身体の中で作られるレチノイン酸の作用は、同一視してはならないのです。

このように、ビタミンAには様々な種類があり、過剰症のリスクがあるのは活性型である合成の「レチノイン酸」になります。このレチノイン酸も、生体内で作られるレチノイン酸と、薬で使われているレチノイン酸とでは作用が異なることから、同一視しないようにしましょう。




※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓

この記事が参加している募集

私の作品紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?