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#4 分子栄養学とは? 分子栄養学の基本をわかりやすく解説!

分子栄養学基礎⑤ 摂取する栄養素は必ず天然由来で、かつ前駆体であること

分子栄養学、オーソモレキュラー療法ではサプリメントを用いて栄養補給を行います。このサプリメントは、何でも良いというわけではありません。分子栄養学を実践する際の栄養素は、必ず天然由来で、かつ前駆体である事が必要です。

栄養素には大きく分けて、「合成型」と「天然型」、「活性型」と「前駆体」があります。合成型とは、栄養素の分子構造を変化させて作られた人工的なもの、天然型は野菜や果物、魚介や酵母など自然界に存在するものから抽出したものが天然型です。

そして、活性型の栄養素とは骨粗しょう症の治療に用いられているビタミンD製剤などです。お薬で使われる栄養素は、既に活性型として配合されています。前駆体とは、この活性型になる前の状態を言い、食品やサプリメントに含まれる栄養素の状態になります。

この前駆体と活性型の違いは、その働きの違いです。食品などに含まれる栄養素は、体内に入ってもそのままの形では働くことが出来ません。いったん身体の中で働ける形(活性型)に変えられてから、やっと働けるようになります。

このような天然である事、活性型になる前の前駆体である事を、クルードなプレカーサーと言います。クルード(Crude)というのは「天然の、ありのままの、加工していない」という意味で、プレカーサー(precursor)は「前駆体=活性化される前の形」という意味です。

なぜなら、栄養素は体内で酵素と結びついて初めて利用出来る状態になります。また、栄養素は身体を作る材料としても使われています。そのためには、限りなく天然に近い形である事が必要です。これは、人工的に合成された栄養素や、もともと天然物を使っていても保存性を良くするために誘導体をつけたり加工したりしたものでは、体内で酵素と結びつけずに、異物として排泄されたり効果が弱まったりしてしまう可能性が高くなるためです。

例えば、ビタミンEと一言で言っても、大きく分けて「合成のビタミンE」と「天然のビタミンE」があります。合成のビタミンEと天然のビタミンEの大きな違いは、期待出来る抗酸化力の違いです。

ビタミンEは脂溶性の抗酸化物質で、主に細胞膜に組み込まれて細胞膜を酸化から守る働きをしています。

食品由来の天然成分から抽出した物は「d-α-トコフェロール」と言って、もっとも抗酸化力が期待出来るビタミンEです。分子栄養学実践専用サプリメントでは、この「天然由来」のビタミンEが配合されています。

対して、海外サプリメントや市販されているサプリメント、薬として処方されるビタミンEでは「酢酸 d-α-トコフェロール」や「酢酸dl-α-トコフェロール」が配合されている物が殆どで、いわゆる「天然型」や「合成型」と呼ばれています。こちらはビタミンEを酸化・劣化から守るために「エステル化」という加工がされています。

エステル化とは、いわゆる「コーティング」のようなもので、抗酸化力を発揮する水酸基の部分をアルコールや酢酸などの物質と結合させて安定化する加工のことです。この水酸基をエステル化させることによって、空気や光などからビタミンEが酸化されないよう防いでいます。

しかし、このエステル化を行ってしまうと、デメリットも大きくなってしまいます。それが、先ほどの「抗酸化力の低下」です。エステル化を行うと、水酸基から「H」の水素が外れにくくなってしまうため、十分な抗酸化力は望めません。このことから、合成ビタミンEが体内に入っても、本来の栄養素としての働きが十分に行えない可能性があるのです。

また、合成ビタミンにはもう一つの問題もあります。それが、d体とl体のビタミンEが両方含まれている可能性があることです。

ビタミンEには、d体とl体があって、先ほどご紹介した「d-α-トコフェロール」「d体」になります。対してl体は、このd体の光学異性体、つまり鏡映しにした形のものです。

d体のビタミンEは植物や生物に含まれている主要な形であり、ほぼすべての生物がd体のビタミンEを利用しています。逆に、l体のビタミンEは植物や生物には殆ど含まれておらず、生物内、生体内においての合成や利用も難しいことから、ほぼ利用されていません。

合成ビタミンEは、化学的な合成過程からl体のビタミンEも発生することから、このd体とl体が両方混ざっている場合があります。もし、仮にl体が半分入っていたとしても、体が利用できるのはd体のみです。その場合、半分は「異物」として捨てられてしまうことになります。

このように、一言で「ビタミンE」と書かれていても、天然のビタミンEと合成のビタミンEではその栄養素の構造や働きが全く異なります。分子栄養学でサプリメントを用いる際は、必ず天然由来の成分である事が重要です。

ただし、天然のものであっても、製造方法や製造管理、保管方法などによっては、体内に入るまでに酸化、劣化してしまう場合があります。このような酸化、劣化した栄養素を摂取すると、逆に体内で悪影響となるので注意が必要です。

例えば、先ほどのビタミンEで言えば、酸化されたビタミンEが体内に入ると酸化ストレスを増加させてしまう可能性があります。酸化ストレスとは、体内の酸化反応が過剰になり、細胞や分子がダメージを受けてしまう状態のことです。

酸化されたビタミンEは、元々の抗酸化能力を失っているため、体内の酸化反応を調節する能力が低下しています。すると、逆に他の物質から水素(H)を奪い取ろうとするので、今度は他の分子や細胞が酸化され、ダメージを与えてしまうのです。

このような酸化した栄養素を摂取する事による酸化は、細胞内で活性酸素種と呼ばれる反応性な分子が生成される原因となり、これが細胞やDNA、たんぱく質などの構成要素を攻撃してダメージを与える可能性があります。

サプリメントは通常の食事と違って濃縮された特定の栄養素を大量に摂取するので、もしサプリメントに含まれる栄養素が酸化していた場合、その影響は計り知れません。

このように、「天然型」「保存料不使用」「添加物不使用」などと書かれていたとしても、そのサプリメントに含まれる栄養素が酸化・劣化しておらず、体内で安全に利用出来る形になっているとは限らないわけです。

昨今では、健康ブームによって「保存料」や「添加物」などを過剰に避ける方が多くなってきました。しかし、本当の天然由来の栄養素は腐りやすく、何も対策しなければすぐに酸化・劣化してしまいます。保存料や添加物が入っていないもの=良い物という認識は大きな間違いです。

本当に良いサプリメントは、天然由来の成分を使って栄養素を守る工夫や、医薬品と同じようなコストがかかる製造方法・管理方法で栄養素の品質を守る工夫がされています。分子栄養学で用いる栄養素は、天然由来の成分である事に加え、その栄養素がきちんと体内で安全に働くことが出来る状態になっているかを考慮することも重要です。




※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓




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