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#1 分子栄養学とは? 分子栄養学の基本をわかりやすく解説!

近年、健康意識の高まりによって様々な健康情報が飛び交っています。その中でも、分子栄養学や分子整合栄養学、オーソモレキュラー療法といった言葉も多く目にするようになってきました。

また、クリニックでも栄養療法や高濃度ビタミンC点滴など分子栄養学を取り入れる所が増えてきています。この分子栄養学とは一体どのようなものなのでしょうか? 分子栄養学とオーソモレキュラー療法とでは、何が違いがあるのでしょうか?

今回は、分子栄養学がどのようなものなのかについてと、分子栄養学の基礎についてわかりやすく解説します。

分子栄養学とは?

分子栄養学(ぶんしえいようがく)とは、食物から摂取した栄養素や食品成分が、体内でどのように働くかを分子レベルで解明する学問のことです。

分子栄養学は、人によって分子整合栄養医学(ぶんしせいごうえいよういがく)やオーソモレキュラー療法、オーソモレキュラーニュートリション、栄養療法などと呼ばれることもありますが、基本的にどれも同じものを指しています。

これら言葉の利用傾向としては、基礎理論である座学に対して分子栄養学や分子整合栄養医学などと呼ぶことが多く、対してクリニック等で提供している分子栄養学を元にしたサービスに対しては、オーソモレキュラー療法や栄養療法と呼ばれる傾向にある印象です。

当方の記事でも、わかりやすく解説するために分子栄養学の基礎理論を解説する場面においては「分子栄養学」とし、クリニックで提供されている分子栄養学を元にしたサービスを解説する場面においては「オーソモレキュラー療法」という表現を用いています。

オーソモレキュラー”Orthomolecular”という言葉の意味は、ギリシャ語の「正しい」という意味に由来するortho(正常な)と molecule(分子)を組み合わせた造語です。この言葉は、ノーベル賞受賞者でもあり、分子栄養学の第一人者であるライナス・ポーリング博士が提唱しました。

分子整合栄養の理念多くの疾患は、体内の分子が本来あるべき正常な状態ではなくなる事と考え、分子を正常化するために不足している栄養素を至適量補給することによって自然治癒力を高め、病態改善が得られる。

ノーベル化学賞受賞 ライナス・ポーリング博士

ポーリング博士は、自身が研究する鎌状赤血球症という病気の背景に、ヘモグロビン分子の異常が潜んでいることを発見し、「分子病」という病気の概念を新たに確立したことで知られています。

鎌状赤血球症とは、本来丸いお餅の真ん中をへこませたようなへん平な形をしている赤血球が、草を刈る鎌のような三日月に変形してしまう病気です。赤血球は全身に酸素を運ぶ役割を担っていて、本来のへん平な形をしていれば、細い毛細血管内でも柔軟に形を変えて通り抜けることが出来ます。

しかし、赤血球が三日月型に変形してしまうと、毛細血管など細い血管が通れなくなって詰まってしまい、壊れやすくなってしまいます。その結果、慢性溶血性貧血、慢性疲労、疼痛、臓器障害など、さまざまな症状につながってしまうのです。

ポーリング博士は、この鎌状赤血球症という病気の背景に、赤血球の中のヘモグロビン分子の異常が潜んでいることを発見しました。ヘモグロビンは、アミノ酸など様々な分子が組み合わさって出来ています。このヘモグロビンに含まれるたった1つのアミノ酸分子の違いが、鎌状赤血球症の原因となるのです。この発見こそが、分子の乱れが人間の病気の原因になることを世界で初めて示した瞬間でした。

それ以降、ポーリング博士は自身の研究を通じて「生体内の分子の乱れが病気の発症に関与しているのではないか」と考えるようになります。そして、前述した「多くの疾患は、体内の分子が本来あるべき正常な状態ではなくなる事と考え、分子を正常化するために不足している栄養素を至適量補給することによって自然治癒力を高め、病態改善が得られる」事を提唱しました。

これは、私たちの身体の中に正常にあるべき分子(molecule)を至適濃度に保つ(ortho)充分量の栄養素(nutrition)を摂取し、それを適切に消化・吸収・代謝することによって生体機能が向上し、病態改善が得られるという理論です。

私達の身体は、私達が日々食べた食べ物を利用して作られています。分子栄養学は、私たちの身体がもつ本来の力を最大限に引き出し、オプティマムヘルス(単に病気を予防するだけに限らず、心身ともに最高・最善の健康状態)の実現を目指す事が最大の目的です。

ちなみに、分子栄養学といわれるものに「メガビタミン健康法」がありますが、メガビタミン健康法はこちらで解説している分子栄養学・オーソモレキュラー療法ではありません。

また、分子栄養学自体は通常医療を補完する補完代替医療であり、通常医療に置き換わるものではありません。

分子栄養学基礎① 私達の身体は、私達が食べた物で出来ている!

私達の身体は200種類以上、およそ数十兆個の細胞が集まって出来ています。これら細胞が集まることで心臓や脳、肺や血管、皮膚や筋肉などの組織が作られ、組織が集まることによって私達の身体が作られています

では、この細胞自体を作ったり、動かしたりするエネルギー源や材料は一体何なのでしょうか?

これこそが、「タンパク質」「脂質」「糖質」「ビタミン」「ミネラル」などの栄養素(分子)であり、生命活動を営むために欠かせない成分のことです。

細胞の一つ一つをもっと深く見ていくと、やがてこれ以上小さく見ることが出来ない「分子」という状態になります。分子はビタミンやミネラル、アミノ酸などの分子(栄養素)のことで、これら分子(栄養素)が集まって構成された物が細胞です。

そして細胞は、糖質や脂質などの分子(栄養素)をエネルギーとして利用することで体温を作り出したり、身体を動かしたりしています。

私達の筋肉や臓器、骨なども、タンパク質やミネラル等で作られている事はご存じですよね。これらタンパク質やミネラル、糖質や脂質などは、胃や腸などの消化管を通じて消化(繋がった分子をバラバラに)した後、血管を通って細胞に必要な分子が送り届けられています。

つまり、私達は食事を通じて細胞に必要な分子(栄養素)を得て、組織の機能を維持し、生命活動を行っています。このように、私達の身体は、私達が食べた「食べ物」や「栄養素」で作られているのです。

分子栄養学基礎② 身体の細胞は常に新しく作り替えられ、入れ替わっている

そして、私達の身体の中では、常に古い細胞や傷ついた細胞が壊され、新しい細胞へと作り替えられています。

この古い細胞を分解することを「異化」、新しく細胞を合成することを「同化」と呼び、これら一連の流れを含めて新陳代謝(ターンオーバー)と言います。

細胞を合成する量(同化)よりも分解する量(異化)が進むと老化となり、対して細胞を分解する量(異化)よりも細胞を合成する量(同化)が多いと成長同化と異化のバランスがとれていると健康維持となります。

この同化を行うために必要となるのが、細胞の材料となる栄養素です。もし栄養素が足りない場合は、細胞の機能が低下したり、同化が出来ずに異化が亢進したりして老化が進んでしまいます。

この細胞の新陳代謝を正常に行うために必要なのが、「タンパク質」や「脂質」「糖質」などの三大栄養素と呼ばれる栄養素です。

三大栄養素には主に2つの役割があり、1つは細胞が活動するために必要なエネルギー源となること、もう一つが細胞の材料となる事です。

例えば、タンパク質と糖質は1gあたり4kcal、脂質は1gあたり9kcalのエネルギー源として利用出来ます。他にも、タンパク質はあらゆる細胞を構成する材料として使われるほか、脂質も細胞膜やホルモンを構成する材料として使われています。

細胞が新しい細胞を作るときには、タンパク質や脂質などの材料に加えて、細胞を合成するためのエネルギー源も必要です。

三大栄養素は、新陳代謝を促すための最も基礎的な材料となるほか、細胞にエネルギーを供給する役割も担っています。

ただ、この3大栄養素だけを摂っても、身体は3大栄養素を上手く利用することが出来ません。3大栄養素を上手く代謝するためには、酵素の働きが必要です。この酵素の働きをサポートしているのが、ビタミンやミネラル等の「補酵素」と呼ばれる栄養素です。

例えば、私達は肉や魚などからタンパク質を摂取しますよね。しかし、肉や魚などタンパク質の状態では分子が大きいため、そのまま吸収したり利用したりすることが出来ません。これらタンパク質を体内で利用するためには、タンパク質を細かく分解することが必要です。

このタンパク質をバラバラに分解する役割を担っているのが、胃酸に含まれている「ペプシン」と呼ばれる消化酵素です。胃腸は、私達が食べたタンパク質を胃酸と共に消化酵素で分解し、「ペプチド」「アミノ酸」と呼ばれる状態までバラバラにしてくれる働きがあります。

この他、唾液に含まれる「アミラーゼ」という消化酵素も酵素の一種です。アミラーゼは、お米やパンなどのデンプン(炭水化物)をバラバラに消化し、ブドウ糖にまで分子を細かくして吸収しやすくする役割があります。このような消化酵素の一部にも、補酵素であるビタミンBが必要になります。

また、腸から吸収したアミノ酸やブドウ糖、脂肪酸などは、利用するときに代謝酵素の助けが必要です。主な物としては、グルコース(ブドウ糖)を貯蔵型の糖であるグリコーゲンに変換する「グリコーゲンシンターゼ」や、血液検査で肝臓の状態を見る際によく用いられるGOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)やGPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)も代謝酵素の1つです。

このGOTやGPTは、主に肝臓でグルタミン酸を「アスパラギン酸」や「アラニン」と呼ばれるアミノ酸に相互に変換するために必要な酵素です。これらアミノ酸は細胞の材料となるタンパク質合成に関与しているほか、免疫細胞のエネルギー源や糖原性アミノ酸(ブドウ糖に変わるアミノ酸)として血糖値の調節としても利用されています。

例えば、私達の脳細胞は、ブドウ糖を唯一のエネルギー源としているため、ブドウ糖が足りなくなると脳機能が低下して死に至ってしまいます。これを防ぐためにも、身体はブドウ糖を貯蔵できる形のグリコーゲンに変換し、筋肉や肝臓に貯えておいて、必要なときにブドウ糖に分解して利用しています。

このブドウ糖をグリコーゲンに合成したり、グリコーゲンからブドウ糖に分解する際にも、補酵素としてビタミンB群の助けが必要です。

また、激しい運動などで肝臓や筋肉に貯めておいたグリコーゲンが枯渇してしまった場合は、低血糖に陥らないように、GOTやGPTの働きによって得られた「アラニン」というアミノ酸を使ってブドウ糖に変換し、低血糖に陥ることを防いでいます。このGOTやGPTがしっかり働くためにも、ビタミンB群が必要になります。

このように、酵素がしっかり働くためには、補酵素としてビタミンとミネラルの助けが必要です。ビタミンとミネラルは、補酵素として酵素の働きをサポートしています。この酵素がしっかり働くことで3大栄養素が上手く代謝され、細胞の正常な働きや新陳代謝を適切に保つことが出来るのです。

このため、正常な代謝を行うためには、先ほど解説した3大栄養素に加えて、ビタミンとミネラルもしっかり補給していくことが大切です。3大栄養素にビタミンとミネラルを加えたものを5大栄養素と呼びます。

この酵素を作り出す量や効き目には個人差があり、加齢と共に徐々に低下していきます。細胞の機能を正常に保つためには、年齢を重ねる毎により多くのビタミンやミネラル・酵素の補給が必要です。


栄養素の働きは家の建築に例えると分かりやすい!

分子栄養学で栄養素の働きを分かりやすく伝えるときによく使われる例えが、家の建築です。家を建てるときには、材料となる木材や板、家を建てるために必要な道具や、家を建ててくれる大工さんが必要ですよね。

分子栄養学では、この家を建てるのに必要な木材をタンパク質、板を脂質、大工道具をビタミン・ミネラル、大工さんを炭水化物としてそれぞれ例えています。

炭水化物は大工さん
タンパク質は木材
脂質は板や壁材
ビタミン・ミネラルは大工道具


細胞の合成を家づくりに例えてみると、まず家を立てるためには柱となる木材=タンパク質が必要です。そして、壁や床、天井などを作るための板=脂質も欠かせません。脂質は細胞膜を構成する成分として必要です。

ただ、これら材料となる木材=タンパク質や板=脂質があっても、大工道具や大工さんが足りなければ家を建てることが出来ませんよね。この木材や板を組み立てるために必要な道具が、ビタミンとミネラルです。

そして、この材料となる木材や板、道具が揃ったとしても、家を建てるためにはこれらを用いて実際に家を建ててくれる人が必要になります。これら材料や道具を用いて、実際に家を建ててくれる大工さんが炭水化物です。

細胞の合成では、炭水化物や脂質をエネルギーとして使いながら古くなった細胞を壊し、新しい材料のタンパク質や脂質、道具となるビタミンやミネラルを利用して、また新たな細胞を合成しています。大工さんは、古くなった家を取り壊し、また新しい家に建て替えるために日夜頑張っているのです。

このように、5大栄養素がそれぞれバランスよく体内に存在することが、正常な代謝を行うためには必要です。このバランスが崩れてしまうことが細胞機能の低下を招き、体調不良や生活習慣病などの病気に繋がってしまう原因になります。

正常な細胞を作れなかったり、細胞機能が乱れてしまうと、体調不良に繋がってしまう

よく、脂質や炭水化物の摂りすぎがよくないと言われているのは、大工さんばっかり雇って、やる事が無い大工さんが身体の中に溢れてしまう状態になってしまうからです。このやる事が無い大工さんが体内に溢れてしまう状態が続くと、肥満の原因になります。

ちなみに、体内では木材=タンパク質と板=脂質は、大工さん(カロリー)としても利用する事が出来ます。これは、タンパク質も脂質も、炭水化物のようにエネルギーとして使えるためです。この大工さんとしての利用は、木材であるタンパク質を利用する場合ではエネルギー効率が悪く、板である脂質を利用する方が効率が良いという特徴があります。(1gあたりのカロリーはタンパク質は4kcal、脂質は9kcal、炭水化物は4kcalです)

ただ、一度木材(タンパク質)や板(脂質)を大工さんに変えてしまうと、もう二度と材料となる木材や板には戻すことが出来ません。これは、タンパク質がエネルギー源として使えるブドウ糖や中性脂肪に、脂質(必須脂肪酸)が中性脂肪に変換出来るのに対し、その逆となるブドウ糖や中性脂肪からは、タンパク質や必須脂肪酸(体内では合成出来ず、食事で摂取する必要がある油)が合成出来ないためです。

分子栄養学では、家づくりである細胞の合成や代謝で問題となっている箇所を特定し、代謝や生体内の活動がスムーズに行われるよう、至適量の材料と道具、大工さんを整えてあげる事を目的としています。



※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓


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