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【実は簡単!?】シリコンバレーで創業する方法とメリット・デメリット<グローバルProductを目指すストーリー>


サンフランシスコのオフィス

NutmegLabsでCEOをしている中口です。前回はグローバルで通用するProductを作るために「Day1からグローバルを目指した決断」をお伝えしました。詳しくは以下をご覧ください。

グローバルNo1になるためには、グローバルで通用するためにDay1から世界で戦うためのProduct作りを考えてきました。強いProductを作るためにはシリコンバレーのスーパーエンジニアが必要で、私は運命的な出会いを得てサンフランシスコで起業することを決意します。

では実際にシリコンバレーでUSA法人を創業するということはどういうことなのか?情報として出ているようで実はないと感じたので、私の体験談を元にどのように創業できるのかといった方法論から、実際に創業して分かったメリット・デメリットをNutmegのストーリーと一緒に詳しく紹介したいと思います。

シリコンバレーはスタートアップの環境が整いすぎていて、最初はかなり快適に会社を作ることができることに正直驚かれるはずです。もちろん、スタートアップしてサービスを作るのは別物ですが、創業の出発地として多くの日本人起業家がチャレンジできるような情報をお伝えできれば嬉しいです!

グローバル起業に興味のある方、シリコンバレー行きたいけど躊躇している方、Nutmegに興味を持って頂いた方などに少しでも参考にしてください。


シリコンバレーでの創業背景・流れ

CTOのAndrewと創業した当時

世界で戦うためのチームを作る

なぜシリコンバレーで創業したかというと、決して「俺イケてるぜ!」みたいなキラキラしたものではなく、本気で世界に通用するためのProductを作るために辿り着いた結論だからです。

自分の目でトップレベルのITサービスの開発の現場を目の当たりにし、実際に最先端のProductを作っているエンジニアにインタビューし、レベルの高さには本当に驚かされました。詳しくは前の記事にあるこちらをご覧ください。

トップレベルのProductを作るためにはスーパーエンジニアがいることに越したことはないし、夢を実現するために世界で戦うためのチームを作ろうと思ったのが一番のキッカケです。

HQはどこに置くべきか?

ここで選択肢として考えたのが、シリコンバレー創業だとしてHQをどこに置くかという点です。優秀な人材集めという点でも大きな問題なので決して無視はできません!

法人という意味ではいくつか選択肢(ケイマン・BVI)などを検討しましたが、最終的にはDelawareの登記が一番良いという結論になりました。(比較内容が気になる方はTwitterなどでDMいただければお答えします)

その上でHQをどこに置くかが重要でしたが、当時2018年はシリコンバレーの郊外(Palo Alto・Menlo Park・Mountain View)よりも都市部に先端的な企業が集まっていました。例えばAirbnb・UBER・Twitterなどです。

こういった大手の企業から人材を取っていくためには、勤務地の不便さで遅れを取るわけには行きません。そこでサンフランシスコの街中でも中心地(2nd street)にHQを構えることにしたのです。

どういう流れで創業するか・実際にやって分かったこと

創業を決めた後に具体的な法人設立の手続きに入っていきますが、この手の情報があまりオープンになっておらず当初は苦戦しました。最初から資金が潤沢にあって弁護士や強いリーガルチームがあれば別ですが、多くの起業家は当初はなるべく節約したいはずです。

そこで、どういった流れで創業を行ったのか、実際に創業してみて分かったことを、Nutmegのストーリーとともに以下の順でお伝えしたいと思います。

  • シリコンバレーで創業する方法

  • 創業して分かったメリット

  • 創業して分かったデメリット

英語でのコンテンツは今ではこういった情報が色々と出ていますが、日本語のコンテンツという意味ではまだまだ情報が少ないと思います。シリコンバレー事情が気になる方は是非参考になれば嬉しいです。


シリコンバレーで創業する方法

We workには創業した会社のステッカーがぎっしり

最初の第一歩は会社を設立して口座を開設し、オフィスを構えて資金調達をしながらProductを作るところからです。

資金調達を誰からいくらするという話は置いておいて、手続き的な部分は「超がつくほど簡単」で当時は驚きました。その流れを1つずつ解説します。

会社設立・口座開設は驚くほど簡単だった

USAで法人を作るとなると、通常は弁護士などを入れて多くの費用と時間をかけての設立手続きになるのが一般です。そんな時に発見したのが「Stripe Atlas」という決済サービスStripeが提供している会社設立サービスでした。

詳しくはサイトを見ていただきたいのですが、必要な情報を入力するだけで以下の必要な手続きを代わりに全部をやってくれるのです。

  • 法人の設立及び登記(Delaware)

  • 創業者への株式発行(資本金の払込は別なので要注意)

  • 必要な書類(By laws, Certificate of Incorporationなど)の発行

  • 納税番号(EIN)の取得

  • 銀行口座の開設(Sillicon Valley Bank開設、オンラインバンキング付き)

  • 必要な会計事務所との接続(優待や特別金額あり)

  • Stripe決済アカウントの発行

今では会社設立系のSaaSが増えましたが、2018年当時にこんな画期的なものがあるとは思っていませんでした。

USA側の人(Resident)が1人でもいれば、オンラインの書類かつ簡単な手続きだけでスタートアップ設立という複雑な作業が全てができてしまうのです。Delawareで設立を検討している人は是非使ってみてください。

オフィスは安くて使いやすい「We work」

各種手続きが想像以上に簡単に終わったため、次はオフィス探しです。エンジニアを探しに行った時に同時にオフィスも視察し、世界的に展開しているRegusやデスク貸しのオフィスをいくつか回りました。

そんな時に出会ったのが、今では日本でも有名な「We work」です。2018年の当時でもサンフランシスコ市内に多くの拠点を構えており、好きなところから選べる状況でした。

しかも、料金が1人約500$で固定デスクまでついているという格安っぷり(初期Depositもほとんどなかった)。東京でシェアオフィス借りた方が高いんじゃないかという価格設定です。そしてWe work内には無料のコーヒーサーバー、ビリヤード代、ビールサーバーが置いてあり使い放題です。

自分達がイケてる!と勘違いするには十分な環境が揃っているので注意が必要ですが、安くかつ使いやすいオフィスというという意味では今でもベストチョイスだと思います。東京より安い快適なオフィス見つけてみませんか?

資金調達はSAFEがおすすめ

働く環境が整い始めたところで、いよいよ資金調達を開始します。当初の資金調達ストーリーは別途記事にできればと思いますが、私自身は本当に良いエンジェル投資家に会うことができました。

今でも尊敬している方々に支えられた上で実際に資金調達の手法の話になったときに、ここで行き詰まりました。最初からEquityで発行すべきなのか、転換社債などを使うかどうかという点です。そしてどちらにしても多くの事務手続きが必要という部分に頭を抱えていました。

この時に素晴らしく役に立ったのが「SAFE(Simple agreement for future equity)」で、USAの超大手VCである「Y Combinator」が発行しているものです。しかもこのSAFEは手続きも簡単で、当事者間の契約だけで終わるため当局の届出や登記も不要になっているのが特徴。

今の日本ではCoral Capitalさんが出している「J-KISS」というものがありますが、その前身となっている素晴らしい投資契約書です。

<SAFEのテンプレートは以下より>

内容は端的にいうと、転換社債でもなく調達時点のEquityでもなく、次回以降調達する際にコンバートを選べるという感じです。詳しくはCoralさんのJ-KISSの説明を読む方が分かりやすいので、そちらを参考にしてください。ちなみにSAFEは連続して調達することも可能で、特定のラウンドでコンバートするまではずっとSAFEで資金調達するというのもUSAでは一般的のようです。

USAのスタートアップが初期の資金調達をするなら、SAFE一択と言われるぐらいの素晴らしい投資手法ですので、初期の資金調達を検討されている方は是非利用をおすすめします!


創業して分かったメリット

創業するための手続きなどはお伝えできたと思いますが、実際にシリコンバレーで創業するメリットはどうなるか気になりませんか?

まだまだ創業から歴は浅い(4年半)ものの、初期の立ち上げで実際に感じたメリットをお伝えしたいと思います。

スタートアップコミュニティーが大きいので活用しやすい

何よりも驚いたのは、シリコンバレーにあるスタートアップコミュニティの大きさです。様々なVCのイベントやアクセラプログラム、会計事務所が開くセミナーや各種Meet upまで多種多様なコミュニティーが毎週・毎晩のように開かれています

何か情報を得たりネットワーキングをしたい場合は、イベントを取捨選択(ここ重要)した上で行くと有意義な時間を過ごせるのがポイント。日本でも多くのスタートアップコミュニティが立ち上がっているとは思いますが、規模からすると桁違いに大きいと感じました。

例えば開発1つとっても、非公式なカジュアルな場として超大手のIT企業で勤めている方々にアドバイスをいただけたりします。普通にGoogleのDirectorクラスに会って話を聞けたり、別のスタートアップのCXOとカジュアルに話せたりと、この地域皆んなで良いサービスを作ろうという精神を感じます

私は時間の制約上あまり参加はできませんでしたが、創業間もない経営チームにとってはとても役立つベネフィットです。連続創業者ならまだしも、初期の起業家であればこれを活用しない手はないと思います。

人材が流動的でハイクラス採用のチャンスがある

次にシリコンバレーっぽさを感じたのは、優秀な人材の流動性が非常に高いという部分です。こういった優秀な方々が起業家としての精神も持っていくことが多く、大手だけでは決して満足しないためスタートアップでも採用のチャンスがあるのです。

そして皆さんご存知の通り、USAでは大規模なlay offがよく起きるため、一時的に人材の流動性が高まることもしばしば起きます。この点でもスタートアップでは日本に比べても人材獲得のチャンスが大きいと感じました。

またUSAではストックオプションの付与が「4年Vestingが一般的」なため、基本的には4年で入れ替わるという前提があるのが強いと思います。エンジニアを探す時にも、Linkedinなどで3年勤務を過ぎた人たちにアプローチする方法なども確立されているようです。

シリコンバレーならではのエコシステムとして、優秀な人材獲得のチャンスは大きなメリットです。資金に余裕があるスタートアップは一度は試してみる価値はあると思います。(とはいえコストは高いので要注意)

エンジニアインターンのレベルが本当に高い

上記で紹介したようなハイクラスの優秀な人材を最初から何人も雇えるかというと実際はNOで、そこでスタートアップが目をつけるべきなのがインターンです!

シリコンバレーには非常に優秀な大学(スタンフォード大学・バークレー大学など)があり、彼らのインターンは3ヶ月ごとにサイクルが回るためスタートアップにも採用のチャンスがあります。

このインターンのレベルがとても高いのが特徴です。元々が優秀な学生であることに加えて、だいたい1社目は大手IT企業でインターンをしていることが多いため、2社目でインターンを取れると難しいTechスタックをスラスラと理解してコーディングできるエンジニアもザラにいます。※個人的なバイアスのかかった意見ですが、日本における一般エンジニアぐらいのコーディング技術力はこの時点であると思いました。そして新しい事を覚えるのがものすごい早い!

一方で気をつけるべきは、インターンを管理するマネジメント側のCapabilityです。彼らのパフォーマンスを最大化して良いProductに繋げるには、マネジメント側がインターンを適切に導けるリーダーシップとマネジメント力が必要不可欠だと感じました。

この点でNutmegは彼らのポテンシャルは十分に活かしきれず、大きな反省点として残っています。コロナ禍で苦しかったため2回目のインターン採用はまだできていませんが、是非次は彼らのパフォーマンスを最大化してリベンジしたいと思います。


創業して分かったデメリット

世界に通用するProductを作る上でのメリットはお伝えしましたが、一方で創業者(Founder)側はどんなデメリットがあるのでしょうか?

当然Founderにはタフなメンタルは必要という前提にはなりますが、ここでは特に日本人の起業家が苦労する・考慮すべきデメリットを中心に紹介したいと思います。

逆にこの部分がクリアできれば、それ以外はこれといったデメリットは感じませんでした。もちろんコストが相対的に高い部分はありますが、アウトプットで考えれば十分な価値はあると考えています。

英文契約・法律文書との戦い

日本人の起業家が最初に直面するのは、膨大な英文契約と法律文書との戦いです。上記で紹介したStripe Atlasを使って設立し、SAFEを使って調達したとしてもこの部分は避けられません。

単純に書面にサインするだけなら簡単なのですが、当たり前ですが内容をしっかりと理解しておく必要があります。日本人は英文の時点でハードルがあるのに、さらに法律的な用語の言い回しで止まってしまう方が多いはずです。

幸い私はキャリアを通じて英文契約を確認した経験が多かったので、そこまで多くのは苦労はしませんでしたが、それでも非常にタフな仕事でした。もししっかりと内容理解するために弁護士などを入れようものなら、当初から多くの支出が発生してしまいます。

ビジネス職・技術職のバックグラウンド問わずつまづきやすい分野であることは間違いありません。USA創業するのであれば、避けて通れない大きなハードルだと考えるべきです。

ビザ取得は事前に綿密に確認しておくべき

私個人が一番苦戦したのが、USAで働くためのビザの取得でした。これには様々な理由があるので詳細は割愛しますが、スタートアップという小さな会社が複数のビザをホスティングするのは「想像以上に大変」だという事実です。

例えば事前に別のUSA会社で専門性のビザ(E-1ビザなど)を持っていたとしても、スタートアップ側が同じ条件を満たしているか(Qualifiedしているか)はしっかりと証明する必要があります。これは今までのキャリアに関わらず、USAの居住者(Resident)以外は避けて通れない道です。

また、スタートアップでグリーンカード(永住権)をホスティングする場合も同様の注意が必要です。単純に手続きが複雑なだけでなく、非常に多くのコストがかかります。Nutmegは同時に複数人でグリーンカードとビザの取得を行おうとしたため、1つは諦めざる負えない状況でした。ビザで就業を考えている日本人起業家の方は、事前に綿密な調査をした上でどのように取得するか具体的な計画を立てて進めるのをおすすめします。

日本との時差は結構辛い

最後はより実務的なデメリットです。サンフランシスと東京の時差は、約17時間(日本時間に+7時間足すのが分かりやすい)

もし何かしらチームを日本国内にも同時に持つ場合(例えばセールス・CSなど)は、この時差が想像以上に運営に重くのしかかってくることに注意してください。

例えば東京の12時に打ち合わせしようとすると、サンフランシスコはすでに19時です。一方でサンフランシスコの12時に打ち合わせしようとすると、東京は朝の5時になります。オンラインで定例などを組む場合は、どちらかがある程度妥協しないといけません。

Nutmegはサンフランシスコ側を夜型にすることで乗り切ってきましたが、それでも多くの問題や一定の限界はありました。サンフランシスコと日本に同時にチームを持つのであれば、この点はどうしても避けられないデメリットです。どうやって組織運営するか考えた上で、事前に全員でAgreeしておくことをおすすめします。


まとめ

シリコバレーで創業する方法から、創業して実際に感じたメリット・デメリットを紹介してきました。デメリットが気になる方も多いとは思いますが、それを上回るメリットがあったというのが私の結論です。

ただコロナ禍からはオンラインを活用したワークスタイルが主流になっており、必ずしもシリコンバレー自体に拠点を置かなくても良い時代になってきました。周りに情報を聞くと、元々はサンフラシスコに住んでいたエンジニアが郊外(ハワイなど)や国外に拠点を移しているという話が出てきています。

そういう意味では、これからはグローバルなProductを作る体制が変化するパラダイムシフトが起きてくるかもしれません。Nutmegもコロナ禍はフルリモートワークで取り組んでおり、働く場所は関係ないと感じる場面が多く出てきています。この辺りはまた別の記事(開発体制・コミュニケーション)でご紹介予定です。

では創業した後は実際にどうだったのか?待ち構えていたのは、思いもしなかった危機的な状況とHARD THINGSでした。一体どのようにして乗り越えたかを以下の記事でご紹介していますので、よければご覧ください。

当社NutmegLabsでは、シリコンバレー式の最新の開発メソッドを取り入れたProduct作りを行なっています。興味のある方は是非一度お話しできればと思いますで、下記よりお問い合わせください。

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