マガジンのカバー画像

お気に入りの記事まとめ

433
好きだな、とか、また読みたいな、と思った記事たちをブックマーク代わりにまとめています。どの記事もとっても素敵なので、良かったら見てください。
運営しているクリエイター

2020年5月の記事一覧

あの人に見えなくて、あなたには見える

 「うるさいわブス」だったか。「お前ほんまブスやな」だったか。  言われたセリフが何だったかはもう忘れた。とにかく、面と向かってクラスの男子にブス呼ばわりされた。あれは、中学の何年のことだっただろう。技術の授業中だったのを覚えている。私は、はんだごてを握っていた。  小学生までは大人しかったのに、中学に入って急激に「我の強さ」を発達させていた当時の私。もし誰かに「ブス」と言われることがあったら、相手が誰でどんな顔であっても、言い返すと心に決めていたセリフがあった。 「は?

「現在地を取り戻す」ということ。

買った本とか読み直したい本がたくさんあるのに、読まずにいた。仕事の原稿は読んでいるけど、「落ち着いて読書する」モードが訪れない。 大きな不可抗力に身を置かれると、焦りと不安で浮ついて、浅い思考が上滑りする。だから意識的に「何もしない」をして、流されない時間をこじ開ける。どうせすっからかんで何も考えられないのだから、神妙なフリして余計に疲れるより、寝起きのおぼっちゃまくんみたいな呆けた顔で過ごせばいい。自分の時間の流れがゆっくり立ち上がり始めたころ、ようやく思考する余裕が生ま

月岡恋鐘の道徳とは/ストーリー・ストーリーの振り返り

シャニばんわ~。今日はストーリー・ストーリーの感想の記事になります。 予告の時点から「またアイドルを曇らせるような重いコミュなのか…」と思っていましたし実際そうだったんですけど、それでもアンティーカを掘り下げてくれるすごくいいコミュでした。 また、三峰のコミュだと思っていましたが実際は「アンティーカが考えるセンターとは」というようなコミュにも仕上がっていました。 また内容上ストーリー・ストーリー、並びにその他のアンティーカコミュのネタバレを含みますので気をつけてください

【小説】 子は鎹

 「子は鎹(かすがい)」とはよく言ったものだ。  物心がついた頃から、僕は鎹だった。  鎹。それは、二つの材木をつなぐ、コの字型のくぎ。父と母をつなぐ釘。それが僕。両親には、「鎹としての役割を全うしなさい」そう、何度言われたことかわからない。  僕は鎹なので、伝書鳩になった。  「ねえ、明日って遅くなるんだっけ」聞こえているはずの母の言葉に、父は反応しない。だから、僕がもう一度尋ねる。「父さん、明日は遅くなるの」すると父さんは答えるのだ。「なるよ」と。それをまた僕は、父の

『スキやいいねを押すたびに自分が失われていく症候群』(短編小説)

    どこへ消えてしまったんだろう、あの私は。     誰かの記事を読んで、足跡のような感覚で「スキ」や「いいね」を気軽にぽんと押す。特に基準はない。記事の内容や質よりも、書き手に少しの好感を持ってさえいれば、よほどのことがない限りはワンクリックで無色のマークに色をのせる。躊躇なく惜しげもなく誰かの記事に自分をマーキングする。それが私のSNSにおけるスタンスのようなものだった。     でも、それができなくなった。     目の前に並んでいる記事に対して何も反応できな

ショートショート27 『電話をしてるふり』

『電話をしてるふり』 まただ。 もう。 しつこいってば。 「ああ、もしもしごめんパパ。もうすぐ帰るよ。うんうん。そうだねうん。迎え?あ、どうしようかな。来てもらおうかな。ええと、今はね…」 私はよくナンパされる。 特に男受けを狙った格好はしてないつもり。 でもそりゃあ、かわいい服は着たいし、メイクも好きだし、見た目には気をつかっているつもり。 夜一人で歩いていると、繁華街、駅前、最寄り駅から家までの徒歩15分の薄暗い道、ところ構わず声はよくかけられる。 見た目に隙があ