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娘は「足」フェチ

 子どもが「ママの耳を触らないと眠れない」とか「パジャマひじの部分を延々触ってくる」みたいな、謎のフェチぶりを発揮してくるのは、子育て界隈でそう珍しい話ではない。
 我が娘3歳も例外ではなく、自由に転がれるようになった赤子時代から現在まで、私と夫のとある部位に異様な執着を見せる。

 どこかというと、足である。
 具体的に言うと、足の裏を中心として、つま先の方まで。

 彼女は手持ち無沙汰になると、すすすと両親どちらかの足下へやってきて、おもむろに足を愛で始める。きちんとカウントしたことはないが、母の足は寝ながら、父の足は座って触る方が多い気がする。

 両手でつま先を掴んでみたり、足の裏をこしょこしょとしてみたり。自分の掌で撫でてみたり、はたまた自分の足裏と合わせてみたり。
 絵面が汚くて恐縮だが、足裏を頬に押し当てたり、口に押し当てたり、匂いを嗅いだりすることもある。一応毎日洗って清潔にはしているつもりだが、マスクみたいに使われるほどキレイかと言われると、そんな自信はないのである。やめていただきたい。

 娘が1歳くらいのとき。
 その日娘は何かの感染症にかかり、39.0℃超えの熱を出していた。
 いつもは元気な娘がぐったりしていて、心配で心配で、すべき処置はした後、さらに何かできることはないかと顔を覗き込んだとき、鋭い声がとんだ。

「あし!!」

 足。私は言われるがままに足を差し出した。娘はその足を抱えるように持ち、やがてうとうとしだしたのである。
 発熱した娘にできた唯一のことは、自らの足を人身御供に差し出すこと……。
 母の無力さを噛み締めた思い出である。

 これを書いている今も、彼女は足を一心不乱に嗅いでいる。昼寝しすぎて眠れないらしい彼女に「ねぇ、ママの足、くさくない……?」と聞いてみた。
 娘は満面の笑みを浮かべ、言った。

「くさい!!」

 くさいんかい!!!
 
 そんな匂い(?)などもろともせず、娘と足の蜜月は続くのである。

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