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育休中だからって凝った料理作っちゃってない?

第一子の育休のとき、私の胸は夢と希望に満ち溢れていた。

「生まれて初めての専業主婦期間だ! よーし、この時間を使って、家事スキルを上げちゃうぞ☆ これまで作ったことのないレシピに挑戦して、料理上手なお母さんになっちゃうんだもんね!」

そうして私はいろいろ作った。
デミグラスソースを使った煮込みハンバーグや、ビーフストロガノフ。なすとひき肉のはさみ焼き。UFOズッキーニなんて、みたこともない平べったいズッキーニを購入したのは、後にも先にもこの時だけだ。
クリスマスには、大好きな『きのう何食べた?』に出てくるクリスマスメニューを完全再現。ミートソースやホワイトソースまで手作りするラザニアを作り上げ、「これは我が家の定番メニューにしよう」とウキウキした。

失敗した、ということに気づいたのは、子どもを保育園に入れて仕事に復帰してからのことである。

育休中の私は、あろうことか昼間から包丁を取り出し、肉をこね、フライパンを振るっていた。息子が比較的手間のかからない赤子だったのをいいことに、けっこうな時間を料理に使っていたのだ。

しかし復帰後、料理にかけられる時間は激減した。
朝は6時に起き、自分の身支度と7時半に登園する息子の身支度をする。息子と夫を送りだしたら、出社の日(すでにコロナ禍だったのでリモートワークが始まっていた)はそのまま会社へ、リモートの日は始業準備をする。
終業は午後5時。息子を迎えに行き、帰ってきて午後6時。出社の日はさらに遅くて、お迎えが6時半、帰宅が7時。当たり前だが、夕飯の準備はそこから開始することになる。

帰ってすぐ動ける日はラッキーだ。たいていは息子がごねて、足元にまとわりつき、5分に1回「だっこ」コールがかかる。
だっこする。置く。まただっこする。置く。

肉を煮込んでいる暇は一体どこに?

上がったはずだった私の家事スキルは、右肩下がりに下がりまくっていった。
なんかもうめちゃくちゃ苦痛なのだ。
保育園で息子と再会を喜び合う、その次の瞬間にはもう、「今日、ご飯、どうしよ……」と憂鬱な気持ちになっている。
冷蔵庫の前で何を作るかしばし考える、材料を取り出す、切る、焼いたり煮たりする、盛り付ける……それら一つひとつの工程に、めっちゃくちゃ時間がかかって、イライラする。

時間がかかることを楽しめる、そんな時期は期間限定のものなのだということを、私はすっかり失念していた。

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同じ轍は二度と踏むか!!

と、第二子の育休に入る際、私はルールを作ることにした。

・買い物に行くのは週末のみ(仕事が始まったら、子ども二人つれてスーパーに行くのは至難の業)
・夕飯づくりを始めるのは、上の子を保育園に迎えに行って、帰ってきてから(昼間にがんばらない)
・週末に、次の週の献立をぜんぶ立てる(行き当たりばったりで材料を買っても、それを見ながらメニューを思いつく志麻さん(伝説の家政婦)のような能力など皆無)
・週末に、料理の下ごしらえをすませる

早い話がシミュレーションだ。
「仕事に復帰してる体」で時間を使うのである。

作る料理のレシピも、「育休中にしか作れないような凝った料理」などには手を出さず、「秒で作れる時短レシピ」もしくは「事前に下ごしらえをしておけるレシピ」に限るように工夫した。

いろいろ試しているうちに、自分が「これならできる!」と思えるスタンダードができあがってくる。

これはあくまで私の場合だが、たとえば野菜だったら、週末ににんじんを千切りしておいて、月曜は生のまま半分サラダに入れ、火曜日は残り半分をレンチン、ナムルにする……というような「一つの下ごしらえからいくつかの展開が効くもの」が重宝する。火は通さずに、ピーマンを細切りにするだけ、レタスを洗っておくだけ……という生の状態でとどめておくのがポイントだ。

肉や魚は、週末にパックを開けて小分けにして味をつけておき、冷蔵庫もしくは冷凍庫にイン。食べる直前に解凍、加熱する、いわゆる「下味冷蔵・冷凍」が使い勝手が良かった。

人によっては、すべてを調理済みの総菜にしておき、平日は温めるだけ……という作り置きが向いている人もいると思う。
私は再加熱する際の火の通りの調整が難しかった(ぐちゃっとしてしまったり、固くなってしまったりする)のと、貴重な休日に何時間も料理をしてられん!!というストレスにより、早々に諦めた。

また、我が家は一応、毎日一汁三菜を目指しているのだが、これは敬虔な主婦だからでもなんでもなく、単純におかずが少ない食卓に耐えられない(飽きる)からである。
「おかず一品でも量さえあれば全然問題なし」というタイプの人だったら、一汁一菜の献立レパートリーを増やすのも手だと思う。

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先ほどから「作る」前提の話をしているのだが、もちろん「作らない」という選択肢も全然アリだ。

その場合も、「せめて休み中くらいはごはんを作ろう」などと思ってはならない。

優先するべきは、仕事復帰後に備えた「おいしい惣菜店の開拓」「家族の好みに合った作り置きサービスの検索」「相性のいい家政婦さん探し」などだ。

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予定通りに行けば、私の育休は、あと半年足らずで終了する。

その半年で、どれだけ復帰後に上手に家事を回すためのシステムを作り込めるか。

今回の育休中の、最大の課題である。

サポートをご検討いただきありがとうございます! 主に息子のミルク代になります……笑。